第11話

 不登校になって数か月経った秋頃、学校から呼び出しがあった。


 詳しい理由はもう忘れてしまったが、進路に纏わる書類に本人が記入しなければならないからどうしても登校してもらわなければ困る、というようなことであったと思う。


 引きこもっている人間が進路のことなど考えられると思っているのだろうか。今を生きることで精いっぱいな人間に対して、学校側の無神経さと将来への不安を煽って来る残酷さに怒りが湧いた。


 だが、身内以外の人間に怯え、自分の人生を呪いはしていても、いつかは何かしら行動を起こして部屋から脱出しなければならないと考えていた私は、これをきっかけにまた学校に行ってみようかと考えた。クラスメイト達の反応は怖かったが、不登校になっている間に良い方向にクラス内が変わっているかもしれないという淡い期待がほんの少しだけあったのだ。


 そんな風に思えるのは、前よりも酷い状況になる事などないという悲しい自信が自分の中にあったからだった。

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