第5話 6歳 最近、家族の様子がおかしいです……

 最近、家族の様子がおかしいです。なんだかみんな、ソワソワしています。


「もうすぐエステルも、7歳だね」というようなことを私に言ってきます。お母さんのお父さんのお父さんのお母さんのお父さんのお母さんなど、今日で二回目です。


 もうすぐ私は7歳。恐らく私の誕生日が近づいてきているのではないかと私は思います。カレンダーとかないから、はっきりとは分からないけれど、家族が私に話しかける感じからすると、私の誕生日が近づいているのだと思う。


 内緒で私の誕生日サプライズ・パーティーを準備しているような雰囲気が漂っています。


 だけど、かなり妙なのだ。


 だって、私、1歳の誕生日も、2歳の誕生日も、3歳の誕生日も、以下略だけど、6歳の誕生日も祝われていない。

 別に恨んだりはしていないよ? ただ、誕生日を祝う習慣がなのだなぁって思っていただけである。

 まぁ、エルフはきっと長寿だし、父と祖父と曾祖父と高祖父とか、ぶっちゃけ、外見もほとんど変わらない二十代って感じだし、千年とか生きる種族なら、毎年毎年の誕生日を祝うというような感覚も希薄になるよね、と勝手に納得していた。


 だけど、『もうすぐ7歳だよね』、なんて突然言われたら、なんだろうと思う。


 それに、みんな私に隠れてなんかしている。それは確実だ。


 私が、入れない部屋が出来た。いつも部屋の前に見張りをしている人——主に、お父さんのお父さんのお母さんのお父さんのお母さんのお父さんのお母さん——が、日本でお婆ちゃんが縁側で猫を膝に乗せて日向ぼっこしながらうたた寝しているような揺り椅子に座っているのだもの。


「この部屋はエステルにはまだ危ないからねぇ」なんて言って、私がその部屋日に入るのを阻止してくる。


 私の誕生日を祝う為の準備をしてくれているなら嬉しいのだけど、どうも、今までの私の経験上、誕生日は祝われない。


 それならば、私が子どもだからって、のけ者にされているということだ。


 親族が集まって、子どもには見せることができない卑猥なことでもしているのではないか? この変態一家め!!!


 なんて愚痴はさておき、私は、実は百分の一スケールのサグラダ・ファミリアを積み木で造るのに忙しいのだ。設計者のガウディーの死後100年に合わせて完成したサグラダ・ファミリア。

 私も卒業旅行で友達と行き、千分の一スケールの模型を購入して家に飾っていた。完成した姿をこの目で見ているし、家に模型があったので、かなり細部まで鮮明に覚えている。そして、その分、かなりディテールに拘っている。構想を初めてから一年と半年、あと一息で完成というところである。屋根の部分の積み木を取り外せば、内部も大雑把ならが再現しているというこだわりようである。

 あと一ヶ月くらいで完成できるだろう。


 私は、サグラダ・ファミリアの完成で忙しいんだ……。家族が私をのけ者にしている感じでも別に寂しくないし……。

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