第一章 Δάφνη

第2話 0歳

 私が目を覚ますと、私は宙づりにされていた。天地が逆さまだ。だが、眩しくて目を開けてられない。


「Εσθηρ Μη εκλαιεν αυτος, Μη εκλαιεν?」


「Θαρσει.  Θαρσει.  Αλλα καθευδει」


 ん? 言葉のようなものが聞こえるけど、どう聴いても日本語じゃない。


 パシ! パシッ! パシ! パシッ! パシ! パシッ!

 

 痛い! 痛い! めっちゃ、お尻を叩かれてる! 痛い! 逆さ吊りにされて、お尻を叩かれている!!


「おぎゃ! おぎゃ! おんぎゃあ!」


 あれ? 『助けて!』って叫んだつもりだけど、うまく舌が回らない。なんだろう。まるで赤ちゃんの産声みたいだ……。やばい……。


おぎゃ助けて! おぎゃ助けて! おんぎゃ誰か助けて!」


「Εσθηρ εκλαιεν! Εσθηρ εκλαιεν!」


「Κεχαριτωυενη!!」


 私が泣いて、みんな歓声をあげている。どうやら私を複数人で囲んでいるようだ。そして、みんな、私が泣いているのを喜んでいるし! 


 って、今度はお湯の中に入れられた! 逆さ吊りのあとは、水攻め! どんだけなの! こんな事が許されていいの? 


おぎゃ助けて! おぎゃ助けて! おんぎゃ誰か助けて!」


 って、やっと目が光りになれてきた。って、めっちゃ巨人! 私を抱き上げているのは、めっちゃ巨人! 巨人のおっぱいが、私の頭の大きさを越えている! Hカップとかを遙かに超えている! 少なくとも四サイズ負けた! って、この女巨人は私を抱き上げてどうするつもりなんだ! もしかして、食べるのか!


おぎゃ助けて! おぎゃ助けて! おんぎゃ誰か助けて!」


「Εσθηρ! Εσθηρ!」


 女巨人が柔やかに笑いかけている! なんか、女巨人が言っている言葉、『デリシャス、デリシャス』って言っている気がする! 『おいしそう。おいしそう』って意味だっけ? 


おぎゃ助けて! おぎゃ助けて! おんぎゃ誰か助けて!」


 つっ! 叫んでいたら口を塞がれた! 逆さ吊りの後は、水攻め! からの猿ぐつわか! 私に助けを呼ばせないつもりだ!


 って、牛乳の味がする……。なんだか懐かしい味な気がする……。 あれ? 美味しい……。

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