第100話 捜索する仲間達


ダンジョン二十九層

 

「邪魔だぁぁあ!」

 ケントは、石の鎧を纏っているような巨大な熊を上下に斬り裂く。

『うおらぁぁぁ!』

 ナキも、左腕を振り下ろす熊を金棒ですくい上げるように打ち上げる。


「やっと追いついたわ。二人ともケガが酷いわね」

 美羽が「はぁ」とため息をついて、二人に回復魔法をかける。

 ボブ、リズム、フウもそれぞれ戦い始めると、モンスターが煙になる速度も上がってくる。


 ナキとケントが一体づつ倒すと、辺りは静かになる。

『っし! 次はボスだ! ケント行くぞ!』

「じゃあ美羽さん! 先にいっってぇ!?」

 美羽はケントの耳を引っ張ると、

「一緒に行くのよ? 回復は任せなさい! 急いでるのはみんな同じなんだから!」

 耳を押さえながらケントは頷き、六人は下の階段を見つけて降りて行く。


ダンジョン三十層


 ナキ、ケントが扉を開けると、闘技場のような場所にでる。

「は?」

『なんだ?!』

 そこには、縦十メートル程ある卵型の巨大な岩が存在を主張している。


「ボス部屋だよな?」

「ケント君? 問題ないなら行くよ」

『待て! これは……』

「美羽さん、ちょい離れてて」

 美羽を後ろに下げると、ナキとケントが岩に近づく。


「とりあえず先制攻撃!」

 影を伸ばし岩に打つける。

“ガインッッ!”

『どりゃあぁぁ!』

 岩は割れると腕が現れ影を弾く。ナキが現れた腕に攻撃を仕掛けるが、

『グッ! かってぇ!』

 金棒を受け止められ、ナキは岩から離れる。


 岩は大きな猿の姿になり、ゆっくりと両腕を振り上げ、

「おいおい……ダメだろ……」

『バカ! 逃げるぞ!』

 振り下ろす!


“ゴオォォォオォォォ”

 地面は抉れ、隆起し、縦に揺れる。


「き、規格外だろ……」

『ビビったのか? なら、下がれ』

「誰がビビったって? 倒すに決まってんだろ!」

『んじゃ、いくぞ!』

 二人は勢いよく走っていくが、岩猿の巨体から繰り出される拳を警戒して、中々近づけない。

「ナキ! 印を付けるから、そこに攻撃を集中させるぞ!」

 ケントは、振り下ろされた岩猿の右腕を駆け上がると、右肩にリンゴの様な赤い玉を投げつける。


「うおぉぉぉおぉぉぉ!」

 岩猿が左手でケントを掴もうとするが、四つん這いになりながら、なんとか背中の方に回り込み影に潜る。


 ナキの近くに現れると、

「あそこを狙うぞ!」

『……ケンG』

「殺すぞ?」

『Gみたいに、カサカサ逃げ回るからだろ』

「さっさと行け!」

 ケントがナキを蹴り飛ばし、その場を離れる。遅れて巨大な拳が地面に大きなクレーターを作る。


『的が小さいんだよ! だぁぁあ!』

 ナキが印を金棒で突く。

『やっぱ硬ぇぇ!』

 ギリギリまで突くと、岩猿の身体を走り回る。

 右肩は金棒で削られ、穴があいている。


「ナキ! もうちょい穴を深くしろ!」

『っせぇ! ちょっと待ってろ!」

“ジュジュッ!!”

 白い光が、岩猿の肩に当たると、穴から赤い血が右腕を伝う。


「ケント君! これでいい?」

「サンキュー、美羽さん!」

 ケントが投げたクナイが、岩猿の肩の穴に吸い込まれるように入っていく。

 肩は爆破され、岩猿の身体に大きな亀裂ができる。


「爆破クナイが効いて良かった。ってか、岩じゃなくて、皮みたいだな。ゴーレムかと思ったけど……」

 ケントは影から出現すると、血が流れている右肩を眺めて呟く。


 右肩が抉れた岩猿は、左腕を振り回すが、明らかにスピードが落ちている。


『さっさとトドメだ!』

「おう!」

 ナキが亀裂を攻撃し、ケントが爆破クナイを投げつける。胸、背中と連続して爆破され、岩猿は煙となり倒れる。


「っし! 下に降りるぞ!」

「「「『うい!」」」』

「はい」


ダンジョン三十一層


「ケント君……なにこれ?」

「……多分、モンスター?」

 ケント達の目の前には砂漠が広がっており、大きな爬虫類の形をした石像が点在している。


“ガコオッ”

 ナキが石像を一つ壊すと、煙になって消えてしまう。

『敵が居ないなら好都合だ』


「あぁ、先を急ごう」

 六人は砂漠を進み、下層へ向かう。


ー・ー・ー・

ダンジョン十一層


 二人は二十五層で一回外に出て、カズトがいないか確認した後、一層から降りている。


「モッチーさん、これって多分……」

「まだ確定じゃないけど、リポップしてないなら、ダンジョンがまずいな」

 砂漠を走るノセとモッチーは、敵を倒しながら進んできたが、モンスターの数が少なすぎる事に戸惑っていた。

 

「やっぱり、お兄さんは下に」

「……それは分からないけど、カズトさんが途中にいるなら時間はあまり無いかも……ノセ、急ぐよ!」

「うい!」



ー・ー・ー・

ダンジョン最下層


『玉龍……モンスターのリポップは停止しました。現在、三十層の大的狒々ヒュージバブーンが倒され、人間がこちらに向かっていますが、どうしますか?』

 

『放っておいていいです。……この人間もそろそろ起きる頃ですし』


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