第96話 焦りと中年


 中国ダンジョン十五層、

 中ボスだな。


「ふぅふぅ……はぁふぅ」

『はぁはぁはぁ……ブフゥ』

 ……どんだけだよ。


「次やったら休憩な? 行くぞー!」


 扉を開けると、

ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・

サンドスコーピオン(ポリューション)

ランクB レベル12

 変異進化体。全身を短い体毛で覆われていて、魔法防御に特化。尾の針から猛毒の液を飛ばす。鋏は魔鋼鉄も切り裂く。

ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・


「……って事だ! ランクB! 遊ぶなよ!」


「「「「「「『うい!」」」」」」』

 さすがに気合いが違うな。


 ナキと賢人が素早く脚に向かうが、


『うらぁ!』

「せいっ!」


 ナキは金棒で潰して、賢人は関節を斬り裂く。


『こんなのも潰せないのか?』

 ……あの馬鹿。


「ナキこそ、潰すしか能がないな!」

 煽るな。


 と、サンドスコーピオンが暴れる、

『ウオッ!』

「オワッ!」


「賢人っ! グァッ!」

 ボブが盾で攻撃をいなそうとするが、勢いよく跳ね飛ばされる。


「ボブっ! 大丈夫か? 兄ちゃん、回復よろ!」

 ボブを連れてきた賢人は、ボブを任せて戦闘に戻る。


「……くそっ!」

 ……ボブ。


 ナキも賢人も、暴れるサンドスコーピオンをギリギリで避けている。


「お前ら遊ぶなって言っただろ! ……帰りは決まったな」

 さっさと倒せ!


『賢人!』

「ナキ!」


『「うおぉぉぉおぉぉぉ!』」

 ……最初からやりゃいいのに。


 賢人が影を使い動きを停めると、ナキが脚を壊して行く、


[フシュアァァ!]


 影を使い、止まってる賢人に尾を刺すが、尾は砂を突く。


「ナキ!」

『おうよっ!』

 と空中に飛んでいたナキが金棒を振り下ろすと尾はひしゃげて、下の胴体までヒビが入る。


『賢人!』

 ナキが飛んで避けると、賢人が、

「爆破クナイ! れ! ん! だぁ!」

 とクナイを連続で撃ち放つ。


 サンドスコーピオンは胴体が弾け飛び、倒れた。


「……帰りは変わらないからな?」

 帰ってきた二人に言うと、


「ナキが言い始めたんだろ!」

『賢人がちんたらやってっからだろ!』


 ……やってなさい。

「休憩しようか?」


「「「「賛成」」」」

 



 ドロップを確認すると、魔石に甲殻。また甲殻はポイだな。


 宝箱はダンジョンと一緒で汚染は除去されたようだ。モンスターのみ汚染されている。


 中身はSPボール(中)が二個と砂蠍サカツの盾。まぁ、リズム行きだな。


 ゆっくり休憩して、下へと向かう。

 十六層は、ポイズンリザード。


 まだ賢人とナキは競い合っている。


「……ナキさんは凄いっすね」

「……どうした? ボブも行ってこいよ」

 ボブは笑うと、

「俺はまだまだっすよ!」

 と、走って行ってしまう。


 ……はぁ、多少は思う所もあるよな。


「どうしたの? 何か問題?」

 美羽が聞いてくるが、これは俺が出てもしょうがないしな。

「……いや、なんでもないよ」

 


 ボブside


 一番、長くいるはずなのに、俺は……


 ……隣で戦うのは俺だと思ってたんだが、役不足だな。


「はぁ……強くなりたいなぁ」

 

 それにしても、賢人もノセも強くなってる。

 俺も師匠と頑張ったけど……なにが違うんだ? ……このままじゃ……



「ボブ! 前に出過ぎだ!」

 師匠から、声がかかるが、

「おおぉぉお!」

 俺は、ポイズンリザードを盾で押し返し、体勢が崩れた所を斬り裂く。


「大丈夫っすよ! 俺でも、これくらいはできるんで」

 賢人は兄さんに一番近いナキさんについていってるんだ。……これくらいじゃ、追い付けない。

「……フォローはする。だが、無茶はするなよ」

「うっす! 任せてください!」

 師匠がフォローしてくれるなら、まだ俺はいける。


 十七層は、アブソードカクタス。


「……って事だ! 注意しろよ!」


 兄さんはなんて言ってた? まぁ、いつものように気を抜くなってことだよな。


「おらぁぁ!」

 ただのサボテンだな。っと賢人はまた先に行ってるな。

「じゃまだぁ! うおぉぉ!」

 問題ない! 俺だって今迄やってきたんだ! 


「だぁぁぁあぁ!」

「ウオッ! って、ノセ! 危ねぇだろ!」

 ノセが横から敵を潰しす。

「ボブ? 兄さんが言ってたの聞いてた?」


「……いつものじゃないのか?」

 なんか言ってたのか?

「アブソード、吸収するって意味。こいつら、デッカイ針があるよね? これが刺さると、ミイラになっちゃうよ?」

 後ろから師匠が来て、

「ボブ? 今のボブは危ないね。このままじゃ、怪我じゃ済まないかもしれないから、後ろに下がってようか」

 


「……すいません」


 ……情け無いな。



 

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