第95話 七人と中年


「ッカズトッ!!」

 抱きついてくる……美羽。


「あぁ、おはよう」

 美羽、ボブ、モッチー……お父さんにお母さんも、


「やっと起きたか、倒れたって聞いたが、元気そうだな?」

 笑顔のお父さん、心配かけたな。


「みんな、すまない。俺の体調管理が」

「ーー無理しすぎだ!」

 ……モッチー、


「無理しすぎだって言ってんだよ! 一人で先に進み過ぎだ! ……追い付く。すぐに追い付くから! だから、ちょっとくらい、待っててくれよ」


「カズト、……カズトは、すぐ頑張るから……いくら強いからって……貴方は一人なの。代わりはいないのよ?」

 ……美羽。


「あぁ、最近忙しかったからな。これが終わったらゆっくりするよ。……みんな、ごめんな」


「よし! 帰るか! モッチーとボブはこのまま残るからな! 美羽、俺達は家で」

「ーー残る!」

 ……あぁ、お父さんが、


「貴方、帰るわよ? カズトさん、美羽をお願いね」


「はい、ありがとうございます」


 異次元ハウスに戻る、お父さんお母さんを見送り。


「……みんな、よろしくな」


「「「「「『うい!」」」」」』

 美羽、賢人、モッチー、ボブ、ノセ、ナキ。


 みんな揃っちゃったな。


「リズムとアジャティは?」

 

「二人は部屋に戻ってる、眠っただけだしね」

 なら明日謝るか。


 ん? ベッドが二つ?

「ここは?」


「リズムが二人部屋借りた、俺らは元の四人部屋に泊まるよ」

 と賢人が笑いながら言う。


「ふぅ、お礼もか。明日からダンジョンだから、よろしくな」

 

「あ、兄ちゃん、アジャティの叔父って、指名手配されてたらしいよ。……で、警察は捜査に積極的じゃないね」

 

「ふぅ、明日は俺も一緒に見に行くよ」

 

「おけ、ならまた明日」


「おう、ありがとな」

 アジャティの件は待つしかない。後は警察と、ダンジョン 。


 ……ファントムは少し頭の中から外そう。

 




 七人揃って、ホテルの前。

 今日もまだ冷たく強い風が吹く。


「昨日は悪かった。迷惑かけてごめんな」

 

「なんで謝るの? 謝るのは私の方よ。……迷惑かけてごめんなさい。カズトにばかり頼ってしまって」


「いいのよ! カズトが勝手に無理したんだから! それに私達が来たしね?」

 ……美羽さん?


「そうそう! 本当ダメダメだよ、カズトさんは!」

 モッチー?


「っすね! 俺らがついてないと!」

 あとで、ボブは……ブッ潰ーーす!


「あはは、やっぱり、いいチームね! よろしくね」


「「「「「『うい!」」」」」』


「……うい」

 ……二人は決まりだな。



 一度、異次元ハウスにアジャティを預けに行き。


『ま、待て! 俺は荷物置く所でいいから! な! そっちに乗せてくれ!』

 フハハハハハハ! 


「ジャンケンで負けたお前が悪い! モッチー、ボブ、連れて行け!」


「お、おう、……あっちの車はなんかあるの?」

 ヤバイ、


「勝者の言うことは?」

 ナイス賢人!


「「……絶対」」


『いーやーだー!』

 ドナドナされて行くナキ。……南無三。


 全員は乗らない為、車を一台借りた。

 こっちは俺が運転する。


 そして、


「イィィヤッホオォォォォォ!! やっぱり人を乗せないと、運転しがいがないよねぇー!」


 煙を上げながら、砂漠を爆走!


「「『嗚呼あああぁぁぁぁぁぁあぁ!!」」』


 ……アイツら、生きてっかな?




 ダンジョン前に到着した俺らは、


 キラキラを浴びて、泣いている落内。


 キラキラをまだ出しているボブ。


 干からびたモッチー。


 倒れたナキ。



「まぁ、こうなるわな」


「だね。落内さん、帰っていいよ? また連絡するから」

 と賢人が言うと、


「え? 車は?」

 あぁ、

「一人残るから大丈夫」


「あ、なら帰ります! ……これ、落ちるかな?」

 呟きながら爆走して帰った。


「え? 誰か残るの?」

 あぁ、リズムは知らないか。


「スキルにはアイテムボックスってのがある」

 車を収納すると、


「……なんでもありなのね」

 ……だな。


 中国ダンジョン十一層。


「おぉ、暴れとるのぉ」

 十一層から砂漠になった。

 日差しがキツいな。


 キラキラ三人組は、ストレス発散で暴走状態。


「……凄いわね」


 そりゃ、ハイオーク(ポリューション)が宙を舞ってるからね。


「まぁ、魔石拾いながら歩いて行こう」

 

 十二層、


「……どんだけ発散するんだ?」


 ……まだ続いている。


「兄ちゃん、落内さん、帰って良かったね」


「だな」


 サンドリザードも宙を舞う。


 十三層、


「やっと落ち着いたな」

 息が荒い三人は、


「あいつは狂ってる」

「車が飛んだっすよ」

『俺は走る』

 

 ナキは走って帰るつもりか?


「モッチーが運転すればいいじゃん」

 賢人が言うと、


 はっっ!! っじゃねーよ!


「まぁ、それは帰りだ。来たぞ」


ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・

サンドアリゲーター(ポリューション)

ランクC レベル93

 サンドアリゲーター変異進化体。

 目が退化しているが、砂の動きで獲物を感知する。

ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・


「砂ワニ、ランクCのレベ93! 砂で居場所がバレるから注意!」


「「「「「「『うい!」」」」」」』


 モッチーと美羽が魔法で砂を動かし、出て来たワニを残り四人が各個撃破。


 リズムも俺がフォローしてトドメを刺す。


「凄いのね、みんな喋ってないのに」

 念話だよ。


 十四層、


「メーンードークーさーいー」

 魔法を撃ちながらモッチーが愚痴をこぼす。


 この階層はデザートフィッシュ、ヒレの大きなピラニアのようだ。

 

 砂を泳ぎ、飛び掛かってくるので、狙い撃つだけだが、数が多過ぎる。


『ぬらあぁぁぁぁぁ!』

 と、ナキはホームランを連発してるが、


『ぬらっ!?』


「ごめーん! ウザくて当たっちゃった!」


 賢人のストーンニードルがナキのケツに刺さってる。


 こいつら、昨日から容赦ないな。


『ぬらあぁぁぁぁぁ!』

「おらぁぁぁあぁぁ!」


「……賢人とナキは何かあったの?」

 モッチーが聞いてくるが、


「知らん。まぁ片付けて行ってるからついて行こう」

 

 ……戯れあってるだけだな。

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