第88話 ポリューションと中年

 ギルドは昨日行ったが、パーティーの申請の為に立ち寄り、そこから車でダンジョンまで送ってもらう。


「スピード落とせ! 落内! てめぇはオカシイのか!」

 運転手は落内。飛行機に続き、俺らの専属らしい。


「に、兄ちゃん! は、吐く!」

「おっと」

「「「だぁあぁぁぁぁぁぁぁ!?」」」


 急ブレーキでスピンしながら停まる車。


「吐くなら外ねー」

 落内以外が全員外でキラキラ。


 落内は助手席に変わり、運転は俺。車が日本車で良かった。


「俺の仕事とるなよー」


「「「うるさい!」」」


「こっちであってるんだろ?」

 砂漠を走っているので、景色はあんまり変わらない。


「んーと、あ、ちょいズレてるね」

 ナビを見ているくせに!


「賢人! ナビ替われ! てめぇはここに捨てていくぞ!」


 賢人が手持ちのナビを奪い取る。

「兄ちゃん、少し左……そのまま真っ直ぐ。あと砂漠が汚れるからやめた方がいいよ」


「えー、酷い男達ですね? お嬢様」

「貴方がね」

 と、雇い主の娘に言われてれば世話ないな。



「お疲れ様、帰りも電話一本で飛んで来ますから! それでは!」

 落内は、また飛ばして帰って行く。事故るなよ。


「てゆうか、酷いな」

 砂漠なんだが、ダンジョンを中心に、広範囲に抉れているのが分かる。


「だね。想像以上だ」

 賢人も口を開けて見ている。


「あそこが入り口よ」

 リズムが指差す方向に、砂山がポッカリ口を開けていて、中は暗くて見えない。


「……さて、どんなもんかな?」



 ダンジョンの中は、いつものように一定の明るさはあり、目が慣れると問題ない。


「……本当に二層まで行ってるのか?」


「だね、数が多いよ」

 マップと探知で、一層を調べるが、数が多い。ゴブリンだとしても、もう少し減らさないとヤバイだろ。


「わ、分かるの? なんで?」


「まぁ、今は俺らのデモンストレーションだ。帰ったら教えるよ」


 さてと、凶暴化したゴブリンはどんな感じかな。


ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・

ゴブリン(ポリューション) ランクD

レベル51

 ゴブリンの変異進化体。体表面が硬化し、防御力が高い。思考能力が低くなり、個で動く。痛覚が麻痺している為、攻撃力が上がっている。

ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・


 どれくらい硬いのか?

「いーよっと!」

[ゲァッ!]

 ミスリルソードは問題なく、ゴブリンを斬り裂く。


「お疲れ兄ちゃん。どんな感じ?」

 賢人とハイタッチして、


「ゴブリンのポリューション、まんま汚染だな。で、ランクDのレベルが50。

 肌が硬化してるようだが、ミスリルで問題なかった。あと注意は痛みを感じないみたいだから、一撃で倒すことだな。

 一層でこの強さなら、先が思いやられるな」


 賢人は頷き、角から現れたゴブリンを斬り裂くと、

「へぇ、硬めだね。まぁ問題ないかな。てか魔石が少し大きいだけ?」


「俺の方もだな。ドロップは変わらないっぽい、少しデカいか? 変わらないな」

 ゴブリンの魔石を出して、見比べるが変わらない。


「ま、待って。……え? レベル? ランク? なんの事?」

 うーん、


「それも帰ってからな。今はダンジョンだ。集中しろ」


「わ、分かった」

 リズムは聞き分けできるな。


「それじゃあ、リズムの力も見せてもらっていいか?」


「あ、あの、……ごめんなさい! 貴方達みたいに倒せないわ! 足手まと」

「ーーそうか、ならトドメを刺してくれるか?」


「へ?」

 

 賢人が攻撃したゴブリンをこっちに蹴飛ばす。


「リズム! 攻撃!」

「は、はい!」

 リズムの剣がゴブリンの首を斬り飛ばす。


「た、た、倒した」


「気を抜くなよ! どんどん行くから、倒していけ!」


 賢人がタイミングよくゴブリンを連れてくる。


「いぃひいぃぃ! だぁぁぁあぁ!」

 汗を流しながらリズムは飛んでくるゴブリンを倒していく。



 

 おぉ、見事な大の字。

「リズム? まだ来るぞ?」


「む……ムリィイ……」

 軽い方だけど、まぁ、しょうがないか。


「了解、休んでな」

 賢人に念話して、片付けてもらう。


 帰ってきた賢人は、

「リズム? 明日は……倍な?」

 とトドメを刺す。


「んで? どうだった?」

 賢人には調べてもらった。


「兄ちゃんの言ってた通り、二層に人がいたよ。苦戦してたけどね」


 マップでも作成して、大人数で突破ってとこかな?

「そうか」



「リズム、立てるか?」


「……もう少し休ませて」


「賢人、外で落内に電話してくるわ。ここ頼むな」


「いってらー!」



「と、話はできるよね? よくそんなんでソロやってきたね?」

 賢人はリズムに話しかける。


「……自分のせいなのは理解してるはずだけど……他人が信用出来なくてね。……本当はもうダメだと思ってたの……」

 腕で顔を隠すリズム。


「そこに貴方達が来た。最初はお父さんに雇われたんだから、手伝いなさい!って思ってた。……けど、真剣に聞いてくれて……ちょっと嬉しかったの」


 賢人は壁に背を預けて、

「ふーん、で、俺らのパーティーはどう?」


「……強いわ。……本当に、繋がってるって見てて分かるもの。……カズトがリーダーでしょ? あの時、カズトがリーダーなら」


「ブッ! クハハハハッ! っご、ごめん。 でもそれはないよ? 兄ちゃんは兄ちゃん。代わりはいない」


「そうね。あの時はあの時、アハハハハ! フフッ。明日もよろしくね」


「はいよ!」


「ん? 楽しそうだな? 落内は飛ばしてくるってよ」

 なんだかな。


「兄ちゃん、リズムが明日は三倍だってさ」


「う、嘘よ! 明日は絶対筋肉痛だから!」

 俺がいない間に仲良くなったもんだ。


「とりま、帰ったら転職だな」


 ビックリする二人、

「え? なんで?」

「レベルは?」


「リズムは昨日の時点で剣士Lv 20超えてたからな」


「うわっ! マジか。ダッセー」


「な、なによ! なんで分かるのよ! ダサイって、何なのよ!!」


 しまった、とってもうるさいな。

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