43話目、ブラドその2
アークの放ったホーリージャッジメントに飲まれたブラドは、光に包まれ消えていく。
勝った……のか?
いきなりブラドに襲われたときはどうなるかと思ったが、なんとかなったようだ。そう思い安心していたその時、ブラドの声が聞こえてくる。
「驚きましたよ、まさか私が一度滅されるとは」
いつの間にか、ブラドがいた場所に黒い霧のようなものが集まってきていた。それは、どんどん集まり濃い黒になっていく。そして完全な漆黒になった時、その黒い霧からブラドが姿を現す。
ばかな! 復活だと!? ブラドにそのような能力はなかったはずだ。
「この力を魔王様からいただいたとき、ずいぶん慎重なお方だと思いましたが、それが役に立つことになるとは。魔王様の慧眼に感謝しなければなりません。さて、それでは第二ラウンドと行きましょうか」
ブラドが再び襲ってくる。
どうやら復活しただけで、強さは変わっていないようだ。強さが変わらないなら何度戦っても結果は同じだ。俺たちは再びブラドを倒す。
しかし、またもやブラドが復活する。
「驚いたことに、どうやら私よりあなたたちの方が強いようだ。しかし、いつまで戦い続けられますか? あなた方の体力や回復アイテムはいつまで持つでしょうね?」
まずいな、ブラドはいったい何度復活するんだ? この手の何度も復活するようなタイプのボスは、ゲームだと何らかの倒し方が用意されているはずだが、そもそもFQに何度も復活するボスなんて居なかった。俺は倒し方を知らない……。
どうすれば倒せるんだ? どこかに致命的な弱点があるのか? それとも特定の属性の技でとどめを刺せばいいのか? 俺がブラドを観察し、倒し方を探っているとブラドが話しかけてくる。
「ほう、どうやらまだあきらめていないようですね? 私になにか弱点があるのではと思っていらしゃるようだ。しかし残念ながら、そんなものはありません。魔王様がいらっしゃる限り、私は死にません。もうあきらめることです」
そんなばかな。いきなりこんな理不尽な敵が出てくるわけがない。なにかあるはずだ、なにか……。
その後さまざまな倒し方を試したが、何度倒してもブラドはすぐに復活した。
まずい、回復アイテムもどんどん減ってきているし、なにより疲れがピークに達してきている。もう限界が近い。いつ凡ミスして殺されてしまってもおかしくない。
どうすればいい、どうすれば……。
長時間の戦いに疲れ果て、心が折れかけたその時だ。突如ブラドが真っ二つに切り裂かれる。
「ふん、こんな敵にも苦戦するとは、存外勇者というものは大したことが無いのだな」
ギルガメッシュがブラドを背後から切り裂き、俺たちの前に現れた。
「ぎ、ギルガメッシュさん!? なぜここに?」
「我とは別の勇者がいると小耳に挟んだものでな、その姿を一目見てやろうと王都戻ってきたのだ。そうしたら妙な奴が暴れているではないか」
俺たちが話ている間に、ブラドが再び復活する。
「ほう、我に切り裂かれても元に戻るか。なかなか面妖な能力を持っているようだ。面白い」
「おや、新手ですか。しかし誰が来ようと同じ事。魔王様がいる限り私は無敵だ」
「さて、それはどうかのお」
今度は後ろから声がした。見るとそこには、王都で店を開いている魔法使いのエロじじいがいる。さらにその後ろには才蔵さんと、マントを羽織りフードで顔を隠す占い師のような姿の女性が居た。
「魔法使いのエロじじい、それから才蔵さん。なぜここに?」
「この占い師に声をかけられたのじゃ、このままでは世界が滅ぶ、助けてくれとな」
占い師はゲーム中、行き詰まったらアドバイスをくれる人だ。初めてFQをプレイした時は何度かお世話になったことがある。しかし俺は何度も周回し、アドバイスをもらうことは無くなっていた。そのため占い師の存在なんてすっかり忘れていた。
占い師が言う。
「このままあなた方が戦っていてもブラドは倒せません。ここは私たちに任せて、あなた方は魔王を倒してください。魔王を倒せばブラドも倒せます」
「しかし、ブラドを倒さなければ魔王の城には……」
「それは大丈夫です。さあ、早く魔王を」
「ふん、ここは我に任せてお前らは早く行け。それとも自信がないか? なら我がブラドを完全に滅し、さらに魔王も倒してやろう」
「……わかりました。ここは任せます。皆、行こう」
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