34話目、家を建てる
空飛ぶ島の上に、家を建てようと思う。
ゲームではそんな事はしていなかったが、ゲームと現実は違う。ここに家があった方が圧倒的に便利なはずだ。空飛ぶ島の上でいつでも寝泊まりできるんだからな。ゲームの時の宿泊って、単なる回復の為だけに行うものだからそれほど宿泊施設は必要なかったが、現実は違う。休まずに活動し続けることなどできない。
ただ、家を建てるうえでいくつか気になることがある。風とか気圧だ。高速で移動すれば家に強風が吹き付け、家が飛んでしまうかもしれないし、上空だと気圧が低くて住むのが大変な可能性もある。気圧が低い上空では、高山病になる可能性があるからな。
だから俺は試してみることにした。上空を移動する空飛ぶ島の上に出てみたのだ。結論から言えば、なんともなかった。
強風を感じることもなければ、気圧が低いことによる息苦しさも全く感じない。なにか結界のようなものがこの島を守っているのだろうか? そもそもこんなでかい島が、ジェットエンジンもプロペラもバルーンもなく飛んでいるんだ、物理法則など気にするだけ無駄なのかもしれない。
とにかくどうやら空飛ぶ島に家を建てても問題なさそうなので、さっそく建てようと思う。家を建てるために大工の棟梁と弟子を何人か雇い、建築資材を買い込んだ。
間取りは5LDKの平屋の家を建てようと思う。5つの部屋(パーティメンバー4人分と客間)とLDK(リビング・ダイニング・キッチン)の皆でくつろいだり食事をしたりする大きめの部屋がある家だ。
家を建てるのを、大工の方々に任せっきりにするということはしない。俺たちも家を建てるのを手伝う。建築資材をマールの魔法袋で空飛ぶ島まで運び、武技や魔法を地面に打って地ならしも俺たちがやった。
俺たちはそこそこレベルがあり、身体能力が高い。建築資材を軽々と運べる、歩く重機みたいなもんだ。棟梁の指示で資材を運び、次々と組み上げていく。すると、僅か数日であっという間に俺たちの家が完成した。
完成した家に俺たちは早速入る。
「素敵なお家ね」
「ああ、そうだね。ただ、私たちが住むには少し豪邸すぎないか?」
「そうか? これから仲間も増えるだろうし、このくらいは必要だと思うが」
仲間でふと思ったが、そろそろ4人目の仲間をパーティに入れたほうがいいだろうな。これからますます戦いは厳しくなる。アイテムでの回復にも限界があるし、やはり回復役を入れたいところだ。マールの体質の問題もあるが、いつまでも先延ばしにはできない。そこで俺は、マールとサキさんに聞くことにした。
「そろそろ仲間を増やそうと思うんだが、マールとサキさんはどんな人がいいか希望があるか?」
「仲間? ううーん、私の事を受け入れてくれる人かな?」
ああ、そうか。サキさんは魔物の血が入ってるから、受け入れられない人もいるかもしれないのか。多分FQで仲間になるキャラは皆受け入れてくれると思うが、組んでみないと実際はどうかわからない、か。
「マールはなにかあるか?」
すると、マールは俺とサキさんをしばらく見つめ、ぽつりと小声で言った。
「……男がいい」
「どうしてだ?」
「それは……」
「んふふふ。それはね、マールちゃんはライバルを増やしたくないからだよ」
マールが何か言いかけたところで、サキさんが話に割り込んできた。
「ライバル?」
「そう、恋のライバル」
「はあ!? ち、違う!!」
「じゃあどうして男がいいの?」
「それは……そう! 恥ずかしい格好にも慣れてきたし、次の仲間は男でもいいかなと」
「それは『でも』でしょ? さっき『が』いいって言ったじゃない」
「それは言葉の綾だ! いいかムラト、絶対に違うからな!!」
マールが顔を真っ赤にして叫ぶ。
俺は突然の話に全くついていけない。え、これどっち? 俺、マールに好かれるような要素あった? 全然分からん。
それとも本当に違うのか?
駄目だ、ゲームばっかりしてて恋愛経験が全然ないからさっぱり分からない。こんなことなら恋愛ゲームもやっておけばよかった。これどっちだ? 俺はマールに好かれているのか? 誰か教えてくれー!
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