33話目、空飛ぶ島
俺たちは新たな乗り物、空飛ぶ島を手に入れる為、大陸の西の端に来た。ここから海の向こうに小さな島が見える。一見ただの無人島に見えるが、あれが空飛ぶ島のはずだ。
「ムラト、あれが前に言っていた空飛ぶ島ってやつなのか? 普通の島にしか見えないが」
「ああ、間違いない。空飛ぶ島は魔王討伐に絶対に必要なものだ。ここで手に入れられるなら手に入れておきたい」
空飛ぶ島がないと、魔王に会うことすらできないからな。いずれは手に入れなければならない。いつか手に入れなければならないなら、早めに手に入れておきたいところだ。あれば移動できる範囲が一気に広がるし。
「で、どうやって向こうの島まで渡るつもりだ?」
「とりあえずこのロープの端を持っていてくれないか?」
「ん? なんだこれ?」
「命綱だ。もし失敗して流されてしまったら危ないからな。じゃ、行ってくる」
「あっ、おい!」
俺は自身にロープを結び、端をマールに持たせて海に勢いよく飛び込む。それと同時に海を凍らせる。そして氷の上に着地し、すぐに走り出す。俺はこの自由に氷を生み出せる能力で空飛ぶ島まで渡りきるつもりだ。
どんどん氷が流れてしまうので、常に氷の道を作りながら風上に走る。そのため少しペースは遅いが、意外と渡れそうだ。どんどん進む。
命綱は長さが足りなくてすぐに外してしまった。見える場所に島があるから近いかと思ったが、そんなことはなかった。結構長めのロープを用意したんだけどな……。命綱を外してしまったので、海に落ちないように気をつけなければ。落ちたらどこに流されるかわからないし。
途中で何度かMP回復アイテムを使い、なんとか空飛ぶ島まで渡り切った。つ、疲れた。見えてる場所にあったのに、いくら走っても全然近づかなかった。思ったより遠かったようだ。
空飛ぶ島には、大きな大木とその根元付近に石碑のようなものがあった。石碑は一部欠けており、なにやら文字のようなものが書かれているが、全く読めない。
俺はこの欠けた石碑に、前に拾った無重力の石をはめる。空中に浮く不思議な石だ。実はこれは、この石碑の一部が欠けた物らしい。はめ込むと、石碑が光り完全な一つの石碑となる。
すると、地面が大きく揺れだす。そして、石碑の周りの地面が沈み始めた。地面と一緒に俺はどんどん地下へ沈んでいく。そして地面が沈み切ると、壁が光る近未来的な地下空間にたどり着いた。前方に扉があるが、俺が前に立つと自動的に開く。扉の先に進むと、大きなモニターや謎のスイッチがたくさんある部屋にたどり着く。
この空飛ぶ島のコントロールルームだ。そこで、なにやら電子的な声が聞こえた。
「初めまして、マスター。まずは私に名前を付けてください」
おお! 音声案内があるのか。ゲームの時は、空飛ぶ島を手に入れた時にいきなり島の名前を決めてくださいとメッセージがでて、急に名前を付けることになっていたがこういうシステムだったのか。
さて、名前か。いつもならアアアアとか、適当な名前にするんだがそれだとちょっとかわいそうだよな。なんて名前にしようか。苦手なんだよな、名前つけるのは。
ううーん、空飛ぶ島の名前ねえ。某天空の城から名前を少しもらって、ラピというのはどうだろう?
「君の名前はラピだ」
「本当にそれでよろしいですか?」
「はい」
「ラピ、起動します」
すると地面が揺れはじめ、いままで真っ黒だったモニターに外の景色が映し出される。そして、外の海がどんどん下がって見えるようになっていく。空飛ぶ島が浮遊している!
よし、とりあえずマールとサキさんを迎えに行こう。きっと驚いてるだろうな。
あれ? この空飛ぶ島ってどうやって操作するんだ? ゲームならコントローラーの十字キーで簡単に操作できるが……。
俺が操作方法に悩んでいると、目の前にある操作パネルのようなものが開き、なにやら出てきた。
ゲームのコントローラーだ!
え、この空飛ぶ島ってコントローラーで操作するのか? いや、操作は楽だけどさあ。なんかちょっとがっかりというか。とりあえず動かしてみると、操作方法はゲームの時と全くおんなじだった。
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