3話目、アイテム集め

「遊びに行ってもいいけれど、日が落ちる前には帰ってくるのよ」

「うん」

「あんまり遠くにもいっちゃだめよ」


 そう言って、サキさんは仕事へ出かけた。サキさんの仕事は冒険者。早く行かないといい依頼は取られてしまうからと朝早くに出かけた。


 さて、日没までなにをしようか。せっかくだから今のうちに強くなっておきたいが。やはり最初は俊敏のオーブと装備を集めるのがいいだろうか。レベルと違ってすぐに強くなれるからな。


 俺が今いるトルース村は、ほとんどなんにもない村だ。そのため、サキさんを仲間にしないならスルーされがちだ。しかし、多少はアイテムや装備がある。それを回収しよう。




 隠し通路というのは大抵マップの端にある。俺は村の北端にある崖下の前に来ていた。そういやゲームの時はなんの疑問も抱かなかったが、なんでこんなところに隠し通路があるんだろう?


 まあいいか。


 大きな岩があったので、それを思いっきり押すと入り口が現れた。中に入りしばらく進む。すると、大きな宝箱が3つ見えた。


 まずは一つ目の宝箱を開ける。中には短刀が入っていた。短刀って実物はこんなに長いのか、もっと短いのかと思っていた。俺の腕の長さと同じくらい長い。当たり前だが、ゲームと違って見ても攻撃力は分からないな。


 二つ目を開けると、中には指輪が入っていた。命の指輪だ。一度だけ、致命的な攻撃を防いでくれる。使い捨ての為あまり人気のないアクセサリーだったが、今はものすごくありがたい。装備してると安心感がある。念のため、常に装備しておこう。


 三つ目だ。中には青いオーブが入っていた。これが俊敏のオーブか。オーブは使うとステータスが1上昇するレアアイテムだ。ただ、1上昇したところでほとんど効果は感じられない。


 俊敏以外は、だが。


 他のステータスは上限が255なのに対し、俊敏だけ上限が15なのだ。1上昇の影響が他のステータスに比べてきわめて大きい。


 ムラトはたしか俊敏6だったので、あと8個集めれば俊敏のステータスを上限にできる。他のステータスはいくらオーブを集めても上限になんて届かないことを考えれば、俊敏のオーブがどれほどお得か分かるというものだ。


 ところでこのオーブ、どうやって使うんだ? まさか食べるわけじゃないだろうし。ゲームでは使うというコマンドを選ぶだけだったから、どうすればいいのかわからない。使う……使う……うんんん?


 色々試したところ、胸に押し当てたら体に吸い込まれていった。体が軽くなる。


 体の軽さを確かめるように飛び上がると、飛び過ぎて天井に頭をぶつけそうになる。おもわず手で天井を抑える。す、すげえ1個でこれか。この調子で、どんどん装備とアイテムを集めよう。




 あれから俺は毎日村を飛び出して、装備やアイテムを集めていった。


 俺はFQを何度もプレイしたが、その大半はタイムアタックだ。タイムアタックで重要なのは、いかに戦闘を避けて素早く移動するかである。その時の知識とテクニックを駆使してアイテムを集めまくった。


 ただ、さすがに日没までに集められるアイテムには限界がある。ダンジョンも攻略できないし。あと、集めたアイテムや装備をどこに置くのかというのも問題だ。部屋には置いておけない色々と危ないものがあるからな。


 武器とかも危ないが、一番やばいのがとある防具。


 ビキニアーマーだ。


 大事な部分だけをごくわずかな赤い金属で覆っている、下着よりもエロい装備だ。なぜこれで防御力が高いのか謎だ。一応設定集によれば、ごくわずかしか取れない希少なレアメタルから発生する魔力が、体を覆って保護してくれるらしい。ちなみに上からローブとか羽織ると、魔力が阻害されて防御力が発揮できないとか。


 どんだけこのエロい装備を着させたいんだ!

 

 どこかに捨てたいが、これすごく優秀な装備なんだよな。炎と冷気によるダメージを無効にする効果と、物語終盤まで通用する防御力。女性キャラを仲間にするなら絶対に役に立つ装備だ。捨てるわけにはいかない。


 でもこれ、どうやって装備してもらうんだろう? ゲームならコマンド一つで装備してもらえたが、リアルにこれを装備するように頼むのはかなり難しいぞ。水着や下着よりもエロいし……。


 とにかくこんな危ないものをサキさんに見つかるわけにもいかないので、とりあえずは隠し通路にすべて突っ込んである。


 どうするか考えなければ……。

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