12:15 【Dual】前篇


「デュアル、どこまで逃げるつもりだ?」


 Noel Aを投与され、苦しみに悶えながらも逃げ続けていたデュアル。ルナとリートが彼女を追っていれば、二人は学校の校舎前にあるグラウンドまで辿り着く。


「わたしの、わたしの邪魔を、お前たちはそうやっていつもぉっ…!!」 

「…いつもって?」

「人間たちは、常日頃から他者へと責任を押し付けてばかりだからだ。ああいう世迷言の一つや二つ、気にすることはない」


 ルナにリートはそう伝えると、視線の先で片膝を地面へ付いていたデュアルに、遠方から聖書のあたまを向けた。


「女、これがお前に対する罰だ」

「だま…れぇぇっ!!」


 黒色の霧が彼女を包み込み、辺りの空気が徐々に凍り付いていく。ルナはそれを感じ取り、創造武器の黒の大鎌を片手に構える。


「まだ、デュアルは力が有り余ってそうだね」

「どうやらそうらしい。あくまでもあの薬がもたらした効果は、デュアルの能力を一つ封じただけに過ぎんというわけか」

「リートは下がってて。私がデュアルを倒してみせる」

 

 彼女はゆっくりとリートの前に歩み出た。恐怖を一切感じていない表情。デュアルと向かい合うために、ルナが心の奥底で抱いていたものは、仲間たちへの想いとこのエデンの園で生き残るという強い意志のみだった。リートはそんな彼女を横目で眺めながらも、静かに後ろへと引き下がる。


「あぁ、ほんっとうに…! 邪魔で、邪魔で、邪魔でっ…! あなたたちは、どうしてわたしの思い通りにさせてくれないのっ…!?」

「あなたの思い通りにいかないのは当たり前だよ。それが、この世界を生きていくことなんだから」

「あははっ…なにそれ綺麗ごと?」


 デュアルの黒い霧が無数の蛇のように蠢けば、足元の地面に何本かを突き刺した。


「お前たちがわたしの邪魔をしなければ、すべて思い通りに動いたっ…! お前たちが死ねば、消えれば、くたばれば…っ! この世界は、わたしの世界になったんだぁっ…!!」

「誰かの大切なものを奪い取って、誰かの立場を蹴落として…。あなたはどうして自分の事だけしか考えられないの!?」

「わたしが、わたしのことだけを考えて何が悪い!? のうのうとアホ面を晒して生きているお前に、わたしの何が分かる…!?!」


 黒色の霧が触手へと形を変え、一本一本が生きているように身体をうねらせながら、地面から這い出てくる。それらはルナを取り囲み、捕縛しようと次々に襲い始めた。


妖術ウィッチクラフト!」


 第四キャパシティ妖術ウィッチクラフトで、自身の姿を空狐へと変化させ、神通力と妖力の二種類の力を全身に通わせる。そして襲い来る触手を一本ずつ、妖術による紫色の鬼火で燃やし尽くした。


「あの女、半分人間を捨てられるのか」

 

 頭部に付いた二つの耳に、腰から生えた黒の九尾。人間としての自分を半分捨てている彼女を、リートは静かに見つめていた。


「この女狐…!」


 デュアルは黒色の霧を細かく分散させ、小さな塊としてルナへとぶつけようと試みるのだが、鬼火によって容易くかき消されてしまう。


 Noel Aを投与されたことで大幅に低下しているデュアルの力。それとは真逆に半人半狐の影響で身体能力・妖術の威力を通常の二倍まで向上させているルナの力。どちらが有利かなど、言わずもがな知れたことだった。


「私にはあなたのことなんて何も分からないよ。だって、あなたは何も話さなかったから」


 ルナは黒の大鎌を両手に握りしめて、周囲に無数の鬼火を漂わせる。


「"何も知らないくせに"…なんて我儘に過ぎない。本当に苦しかったのなら、本当に助けて欲しかったのなら――」


 正面から突撃していくルナ。デュアルは黒色の霧を様々な凶器へと変貌させて、迎え撃とうとするが、それらはすべて鬼火と衝突してしまう。どうやっても、彼女の走りを止めることはできない。


「声に出さなきゃ、言葉にしなきゃ誰にも伝わらないよ…!!」


 振り抜かれる大鎌。それがデュアルの目前まで迫りくる。


「――黙ってよ」


 しかし彼女が口から凍えた言葉を吐き出せば、ルナの大鎌はピタリとそこで静止してしまう。ルナは止める気などさらさらなかったため、勝手に動かなくなった自身の鎌へ視線を向けた。


「そんなにわたしを怒らせたいんだ」


 創造力とは違う力。それがデュアルの体内から込み上げてくるようで、ルナは大鎌を何とかその先へと動かそうと押し込むのだが、


(なにこれっ…!? 全然動かせない…!!)


 ルナの馬鹿力でも動かなった。そこには障害となるものが何一つ置かれていない。二人の間にはただ空間があるだけ。それなのに振り抜いた大鎌が宙で固定をされ、デュアルの身体へ鎌が届かないのだ。


「アハハッ! いいよ、わたしを怒らせたらどうなるのか――」

「下がれ、女」


 良からぬ力が全身に渦巻いているのを察知したリートが、ルナの尾を左手で掴んで後方へと下がらせる。


「――その身体に刻み付けてあげる!」


 その瞬間、リートが地面を転がりながらルナの足元まで吹き飛んできた。彼の左の脇腹は強引に千切られた跡が残っており、そこから絶え間なく白色の血液が流れ落ちてくる。彼女はデュアルが仕掛けてきたことだと理解はしていたが、リートに何をしていたのかまでは捉え切れていなかった。


「リート…!」

「…あの女、そんな"力"も持っているのか」


 ルナは彼のことを心配して声を掛けるが、大して苦しむ様子も見せずに、平然とその場に立ち上がる。


「出血してるけど、大丈夫なの…?」

「ああそうか。今は人の姿をしているんだったな」


 リートは脇腹から溢れ出る白色の血液を見て、やっと自身が怪我を負っていると気が付いた。人間ではなく神だから、血液の色が赤ではなく白。ルナは何となくそれを理解していたため、その点に関しては深く追及はしない。


「お前たちが愛用している再生とやらは使えないが、身体の"修復"はできる」


 脇腹に負わされた怪我の部分に光の塵が収縮すれば、あっという間に治療が施される。リートからすれば"怪我を治療する"という感覚よりも、"損傷した部分を修復する"という感覚に近いものなのだろう。ルナは彼の怪我が治っていく光景を目にして、少しだけ安心する。


「それよりもだ。随分と厄介なことになった」

「厄介なことって…」

「お前も感じ取れているだろう。デュアルに渦巻くあの"力"を」 


 創造力でも、妖力でも、魔力でも、神通力でもない。今まで一度も感じたことのない"力"。彼女はリートの言葉に小さく頷いて、肯定をした。


「あれは何? 私ですら分からないんだけど…」

「――"破壊力"だ」

「…破壊力?」  

「お前たちの知っている"創造力"とは真反対のもの…。秩序、物質、あらゆるものを壊せる禁忌の力だ」 

 

 "創造力"とは対称となる"破壊力"。ルナはそれを聞いて、リートの話の続きに耳を傾ける。


「人間たちが集団で文明を築き上げ、長く生きていくために私たち神が与えた力。それが創造力だ。破壊力は、私たち神のみが所持しなければならない"力"」

「どうしてあなたたちだけがその力を持ってなきゃいけないの?」

「馬鹿だねルナは…。その神共は、わたしたちの世界を"破壊力"で消しているからだよ!」


 彼女の疑問にデュアルがそう答えた。それは本当なのか、とルナはリートへと視線を送ってみれば、


「稀に、"失敗作"が生まれることもある。その局面に遭遇した場合のみ、破壊力を利用してその世界を跡形もなく消す。実際、何千年も前に世界が一つ消えている」

「…!」

「アハハッ、あなたもこれで分かったでしょ!?  そこに立っている腐った神は、わたしたち人間のことなんて何一つ考えていないの! 都合が悪くなれば、自分たちの勝手な理由でその世界を跡形も残らず消してしまう…。わたしよりも真っ黒で、自己中心的で、品性の欠片も無い――」


 デュアルが黒色の霧を操り、槍へと形を変えさせるとリートに向けてそれを飛ばす。 


「――存在する価値すらも無い"屑"なんだよ!」  


 槍が風を切り、リートの元まで飛んでいく。彼は重々しい溜息を吐きながら、それを回避しようとしたのだが、


「それは、私たちも一緒だよ」


 ルナはその槍が自身の横を通り過ぎる瞬間、素手で地面に叩き落とした。リートはその行動に驚いているようで、しばしその場で呆然としている。

 

「私たちだって何も変わらない。自分たちで創ったものを、自分たちで破壊してるよ? 目に見える"創造物"だって、目には見えない"信頼関係"だって…。私たちは今まで破壊し続けてきた」

「…女」

「私も最初はリートみたいな神様たちのことを、自分勝手で自己中心的で…。どうしようもない存在だと思ってたよ」

 

 彼女は一瞬だけ俯き、すぐに顔を上げ、左手に握る大鎌を構えた。


「けど、私たちがそれを咎められるような立場じゃない。私たち人間も神様と同じように、"創造"と"破壊"を繰り返さなければ――何も"学べないんだから"」


 それを聞いたデュアルの顔が無表情へと変わる。とてもつまらなさそうに、とても呆れたかのように、その顔には何の感情も込められていなかった。


「…ふーん、ルナはソイツの肩を持つんだ?」

「あなたは"破壊"だけしか考えていないでしょ。だからさっきの意見には何の説得力も無いよ」

「アハッ! そういうこと言うんだねー」


 デュアルは左手を掲げると、黒色の霧を自分の元へと集合させる。すると、彼女の体内に流れる"破壊力"が、周囲へと少しずつ放出され、霧に吸収され始めた。

 

「"ルナ"、よく聞け。"破壊力"に対抗できる力は、神が持つ"神通力"だけだ。運良くお前にはその力が流れている。妖力をすべて神通力へと変換しろ」   

「破壊力の注意点は?」

「神通力を常に全身へ張り巡らせることだ。神通力の通っていない個所に"破壊力"が触れれば、その身体の組織は残らず"破壊"される」


 ルナは言われた通り、体内の妖力をすべて神通力へと変換する。神だけが扱える"破壊力"を持つデュアルと、"神通力"を持つルナ。この二つの力は同じ立ち位置に健在するのだ。


「戦う前に、私へ祈っておくか?」

「ううん、祈らなくていいよ」


 デュアルが破壊力を通わせた黒色の霧を触手に変貌させると、ルナの身体目掛けて何本も伸ばす。 


「私はリートのこと――"信頼"してるから」

「……!」


 彼女に向かってくる触手たち。それらに唯一対抗できる力、神通力。ルナはその力を大鎌に流し込み、触手を一本ずつ斬り落としながらデュアルの元まで駆け出した。

 

「…不思議な女だ」


 ルナは創造武器の大鎌から小さな鎌を分裂させる。そして向かう先に生えている触手たちを、遠隔で飛ばせる小さな鎌たちで次々と処分していく。


(さっきはどうやって鎌を受け止めて…)


 デュアルに接近するまでは然程苦戦しないのだが、ここからが問題だった。それはルナの大鎌がデュアルに届かないという点。しかも二人の間には、何の障壁も障害もないというのに、ある一定の位置から先へと大鎌が進まないのだ。


「――ッ!!」 

「アハハッ、どうしたの?」

(やっぱりまただ…!)


 同じように、大鎌がデュアルの目の前で静止してしまう。ルナはその詳細が掴めず、表情を険しくさせていた。


「……」


 静かにその攻防を眺めているリートは、目だけを動かして事細かに二人を観察する。顔の表情、視線、動作、呼吸の乱れ、周囲の状況、あらゆる個所に視線を移して、ただ観察をしていた。ある程度観察し終えると、顔を下に向けて思考する。


(あれだけ攻め続けているのに、あの女は一度もデュアルの身体に触れられていない。いや、触れられないような"何か"がそこにあるのか)


 ルナは周囲に蔓延る触手たちを薙ぎ倒しながらも、デュアルの至る方向から攻撃を幾度も仕掛けている。しかしそれらはすべて、ある一定の位置から先へと届いていなかった。デュアルの死角から飛ばした小さな鎌さえも、そこで消滅してしまう。


(デュアルの周囲に、何かしらの障壁があると考えた方が妥当だな)


 リートはルナにその情報を伝えるべく、顔を上げる。


(…何故こっちを見ている?)


 が、交戦していたルナは何故かリートの方向へと視線を向けていた。彼はほんの数秒だけその理由を考え、


「リート、後ろにっ――」


 自身の胸元を突き破るように触手が姿を見せたことで、やっと理解が及んだ。


「あーあ、わたしを見ていなかったからこうなったんだよ?」

「…どうやって回り込んだ?」


 リートはやや身体を後ろに向け、デュアルに手を伸ばして左肩を掴む。


「死人に教えても意味がないでしょ?」


 彼女はその手を振り払い、リートに突き刺した触手をうねらせて、その身体を明後日の方向に放り投げた。彼の白色の血液が、辺りに飛び散る。


「リート!!」

(私も、かなりの知恵遅れになったな)


 グラウンドの隅に転がったリートは、突き破られた胸元を押さえながらも、ルナへとこう叫んだ。


「女…! デュアルは自分の周りに、物理的な干渉を防ぐための障壁を張っている…! その障壁を超えた先まで近づき、ゼロ距離から攻撃を仕掛けろ…!」

「アハハ、バレちゃった?」


 デュアルの第三キャパシティダーク。物理的、空間的な攻撃をすべて無効化する能力。リートが先ほど彼女の肩に触れられたのは、ある程度の距離まで近づけたから。


「もう一つだ。デュアルのもう一つの能力は――」

「そろそろ黙ってよ」

「リート…!」


 いつの間にか自分の側に移動していたデュアル。それを目にしたリートは、口に出そうとした発言に対して強い確信を得られたのだが、喉元にナイフを突き刺されてしまう。彼は喉を潰され、声が出せなくなった。


「神の座から下されたあなたは、もう神通力を持っていない。だからね、この"破壊力"が含まれたナイフで刺せば、あなたの身体は存在ごと消されちゃう」

「待ってて! 今助け――」

「ダメだよ。ルナはわたしの相手をしてくれるんだもん」

  

 背後に現れたデュアルが、彼女を羽交い絞めにする。振り返る隙すらない。気配や音を察知する前に、そこへ立っていたという感覚。ルナは馬鹿力でそれを振りほどこうとした。


(どこからこんな力が…!?) 

 

 デュアルと肉体での力比べをしたことがなかったルナは、その強靭な力に焦り始める。接近戦で殴り合うことが苦手だから、彼女は黒色の霧を遠隔で操っていたわけではない。相手にそう思わせるために、デュアルは接近戦を控えていたのだ。


 ルナは黒色の触手たちによって、両腕と両脚を頑丈に拘束されてしまう。


「ぐぅっ、こんなのすぐにぃっ…!!」


 力技で抜け出そうとしても、僅かに伸縮するだけで千切れる様子などない。デュアルはそんな抵抗する彼女の姿を見て、ほくそ笑んでいた。


「アハハッ! 蜘蛛の巣に引っ掛かった虫みたいだね?」

(ダメ…。無理に抜け出そうとしても、無駄に体力が奪われるだけ…)


 抜け出すためには、何かしらの策が必要。ルナはそれを考えるために、暴れ回るのを止める。


「わたしね、ルナが憎いんだ」

「…憎い?」

「ヒロインぶった顔をして、ノア君の近くにいることがイラつくよ。気安くノア君とお話して、気安くノア君に触れて、気安くノア君と同じ部屋で暮らして…。とってもとっても、憎い」


 デュアルは瞳孔を開き、ルナを睨みつける。


「だから崖からルナを突き落とした時、実は後悔してたんだ」

「…!」


 黒色の霧が巨大なハサミへと姿を変えて、ルナの顔の前まで近づいてきた。


「ノア君の前に二度と顔を出せないぐらい、女の子としてのプライドをズタズタにしてあげれば良かった…って」


 デュアルはルナの麦色の長髪を、その巨大なハサミで次々と乱雑に切り落とす。短髪へと変わっていく髪型に、ルナは自分でも理解できないまま、心にズキズキと痛みを感じていた。


「女の子らしい髪なんて、必要ないよね」


 髪を切るという行為は、怪我ではない。その為、再生では髪を伸ばすことができないのだ。ルナは地面に落下する髪の残骸を目にして、走馬灯のようにエデンの園での記憶が蘇った。


「…何その顔? 自分が可愛いとでも思ってるの?」

「……」

「あー、イライラする…! その耳も、尻尾も邪魔…!」


 次に頭部に生えていた天狐の両耳と九尾を、瞬く間にハサミで切り落とされる。ルナは苦痛に表情を歪ませ、髪の上に落ちる二つの耳と九本の尾を見ていた。


「アハッ、そうだ…!」


 デュアルはニタァと不敵な笑みを浮かべ、ルナの下腹部に指先を突きつける。


「ここは、女の子として大切な"場所"」

「――!」


 指先をなぞらせながら、辿り着いた個所はルナの"純潔"とも言える部位。


「ルナは経験したことないんだよね?」

「待って…! あなたは何をしようと――」


 両脚を拘束していた触手が左右に広がることで、ルナの股が大きく開いた。デュアルが何をしようとしているのか、それを理解してしまい、彼女はかつてないほど焦り始める。


「初体験って、女の子にとって大切なもの。好きな人だけに捧げようと大切にしているもの。それが"ココ"にある」

「やめてっ!!」


 デュアルはルナのスカートで隠された黒の下着を、力づくで破り捨てた。彼女は声を荒げ、拘束された状態で暴れ回る。


「嬲って、嬲って、嬲って…。わたしがその純潔を"きずもの"にしてあげる」

「いやだ、やめて、やめてよ…ッ!!」


 彼女のスカートの中に一本の触手が潜り込んだ。ルナは身体をよじらせて、それを拒もうとする。


「バイバイ、ルナの純潔」


 髪の毛は再生で元に戻せないものの一つだが、他にも同様に治せないものがある。


「いやだぁ"あ"ぁ"あ"ぁ"あ"っ――!!!」


 それは女性としての"純潔"。それは、もう元には戻らない。周囲でブチっという何かが破れる音が聞こえれば、ルナの両脚から血が流れ落ちる。


「アハハ、まだ始まったばかりなのに…」

「痛い、痛いよぉ…」 


 修羅場を潜り抜けてきたことでどんな痛みにも慣れているはずのルナが、初めて痛みによって情けない声を上げた。


「見ず知らずの男の子種を、ルナに沢山注ぎ込んであげるね?」

「どうしてっ、どうしてこんなことぉっ…」


 液体のようなものが体内に入り込んでくる感覚。ルナは今まで守り続けていた純潔を奪われ、子供のように涙を流し続ける。心に決めていた相手がいたのに、まともな恋愛をし始めたばかりなのに。ここですべてを失った。


「まだ泣けるんだ。ならもっと放心して、瞳から光を失うまで…心をバラバラに壊してあげる」


 そして月は――堕ちる。


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