黒と白の大鷲 2
通常色とアルビノ。そんな2人を産み落とした母親は「気持ちが悪い」と白い玲也を拒み、蒼馬を愛した。
玲也は居心地の悪さから家には暗くなるまで帰ることはしなかった。
一方の蒼馬は、幼い頃からいくつもの習い事に通わされた。母親が玲也との待遇の差をつけようとしたのだ。
そんな2人だったが、仲はとてもよかった。母親がいない間は玲也も家に帰ってきて、蒼馬とゲームをして遊んだ。また、日常生活がかけ離れていた2人は、最近あった事を語り合ったりもした。
しかし2人が中学3年生になった頃、母親に変化が起こる。アルビノの美しさに気がついたのだ。
成長するにつれて、通常色とは別種の美しさを輝かせた玲也。それを見た母親は、2人への態度を今までと正反対にし始める。
それに嫌気が差した玲也と蒼馬は、逃げ出してきたのだった。
●●●●
「へぇ……、そいつはまた壮絶な……。まぁとりあえず食べな」
「うス、頂きまス」
どうやら今、目の前でソーメンをすすっている白い方は、
よほど腹が減っていたようで、ざるに盛られたソーメンはみるみる減ってゆく。
その食べっぷりは作った俺としても気持ちがいい。俺でもソーメン作れた。
食べ終えたタイミングを見計らって柊里が声をかける。
「玲也、君?、はこの先どうするの?」
「父の方が単身赴任だったんで、そっちで匿って貰おうかと考えてまス」
「ん?父親の方は大丈夫なのか?」
心咲は首を傾げるが、
「父さんが帰って来たときは、皆仲良しみたいに振る舞わされていたんで、多分知らないんじゃないかと」
「そっかぁ、お父さんは知らなかったんだ。そりゃお母さんも……」
「えぇ、好き放題してました」
玲也は苦笑いして肩を竦めた。
お茶を飲んで一息つく。
「玲也だっけ。2人はどうやってここまで来たんだ?」
まったく心咲は。わかっているのにそうゆうことを聞く。
「ソウが飛べないんで俺に乗っけて……、あっ」
玲也は慌てて口を抑えるが、笑っている俺と心咲を見て、やられた、と顔に手をやった。
「……?」
柊里は一人追いついていないようだが。これは違法であろうとこっそり飛んでいる者に通じる話しだ。
「竜さんと心咲さんもッスか。あー、やられました」
「空飛ぶの気持ちいいもんな。わかるよ」
「あ、そうゆうこと」
ようやく気づいたらしい。柊里には近いうちにこっち側へ来てもらうつもりである。
「えーっと、どこまで話したっけ。…飛んで……あれ、俺飛んでからどうやってここに…」
「落ちてきたぞ」
「え」
「落ちてきたのを俺が持って帰ったんだ。急に影が差したからびっくりしたぞ」
「あー、まじッスか。…ありがとうございまス」
「空飛んでて寝落ちってのもすごいけどね。つーか真っ昼間に飛んでたんだ」
玲也は顔を青くした。
「やばい…、通報されたかな…」
それには心咲が軽く答える。
「大丈夫だろう。飛んでいるところを見ても積極的に通報しようなんて誰も思わないだろうから。それに今の時代に空を見上げてる奴なんてそうそういないさ」
「なら、よかったッス。あ、ごちそうさまでした」
「はーい。あ、蒼馬君の分も後で用意するから大皿は残しといて、お椀だけちょーだい」
「え、俺皿洗いますよ!」
「いいよこれくらい。ゆっくり休んでてー」
柊里についていった玲也だったが、結局断られたようで帰ってきた。
「ちょっと思ったんだけど、玲也はこの後お父さんのところにいくんだよね」
「そうッスね」
「また抱えたまま飛んでくの?」
「まぁ……そうなりますね……」
さっき落ちてきたところを拾われたので、胸を張って答えづらかったのだろう。玲也は目をそらした。
「ふぅん……」
「うス……」
静かになったリビングに、台所の食器と水の音が聞こえてくる。
「……送ってやろうか?」
心咲が口を開いた。
「…え?」
「お前まだ疲れてるだろ。俺達が送っていこう」
「えぇぇえ!?いや悪いッスよ!さすがにそこまでお世話になる訳には行かないッス!」
「ちょうどいいんじゃない?今日あたりに柊里の飛ぶ練習させようと思ってたし。暗くなってからになっちゃうけど送るよ」
「あ、飛んでくんスね……」
あたぼうよ。
「俺は体がでかいから、2、3人余裕で乗せれるよ。まっかせときな!」
玲也は迷っていたが、やがて観念したようで頭を下げた。
「よろしくお願いしまス!」
「おうよ!」
「夕方まで休んでおくといい。時間になったら起こすから」
「ウス。…あ」
玲也が先程まで眠っていた布団に目を見れば、今度は蒼馬が目を擦っている。
「ソウ、起きれるか?」
玲也は蒼馬の前にしゃがむと、起き上がるのを支えようとする。そんな玲也を蒼馬は手を出して止め、俺達へ目を向けた。
「大丈夫だよ。それよりレイ。ここと、あの人達は?」
玲也はぱっと体の向きを変えると俺達を手でさした。
「この人達は、竜さん、心咲さん、柊里ちゃん。俺達を助けてくれたんだ!」
「よう」
「やぁ」
「ヤホー」
蒼馬は俺達を順に見ていくと、体をしっかり起こして礼を言った。
「どう、立てる?なんか食べといたほうがいいよ。今ソーメン茹でるからさ」
「安心しろ、毒は入ってなかった。いい人達だぞ」
「レイ、それは失礼だよ。でも、お言葉に甘えて頂きます」
玲也が毒と言ってしまった手前、遠慮する訳にもいかなくなってしまったようで、蒼馬は食べる事にしたようだった。
●●●●
「わりぃ……ちょっと焦げた……」
「いえいえ、お気になさらず。いただきます」
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