野木沢宇宙の初日
野木沢
一緒に呑んでいるのは、彼のパーティ仲間だ。冒険者として登録したところで声をかけられ、彼らも駆け出しのパーティだと言うので、試しに参加したのだ。
彼らは幼馴染らしく、今日揃って冒険者として登録を済ませたらしい。
「コスモって、異世界から来たのか!?」
自分の素性を素直に明かしたコスモに、パーティのリーダーであるウィルコックが信じられないという顔で叫んだ。
「そう。神様らしき存在に、同じ世界から人物との生存競争に勝ち残って見せろってさ」
「てことは、他にも異世界から来た人が紛れ込んでるわけね」
「作り話としては、突飛すぎるな。仲間になったわけだし、とりあえず信じてやるさ」
パーティの紅一点であるレゼと、回復魔術を得意とするトルキスクが、それぞれ声を上げる。
「なあ、お前の住んでた異世界ってどんな場所なんだ?」
「そうだな・・・。魔法もなければ魔物もいなくて、帝国よりも技術の進んだ世界かな」
「ということは、割と平和なのかしら?」
「世界の大半はね。一部では、人間同士が争ってるよ」
「技術が進んだって、どんな風に?」
「星の裏側まで難なく届く程の射程を誇る誘導兵器があったり、三百メートルを超える高さの建物が建設されたり・・・」
「・・・なんというか、スケールの大きさが段違いだな」
「貴方にとってここがそうであるように、私にとってはそれだけでも異世界だわ。その説明だけでも、既にお腹一杯って気分だわ」
ウィルコックとレゼが呆れた声を上げた。
「大抵のことが科学で解明されてしまって、日常レベルでの不思議が淘汰されたロマンのない世界だ。確かにこちらより安全だし、便利ではある。とはいえ未知に挑む興奮は、一部の学者以外には得られないかもしれない。それに、社会機構が発達しすぎていて、俺には息苦しいな」
「豊かな生活と安全は、未知の興奮や自由とトレードオフなわけか。どっちが幸せなのかは人次第だろうな」
トルキスクが、頷きながらそう彼なりの結論を出した。
「ねえ、もっと貴方の世界の話を聞かせてよ」
レゼがコスモにせがむ。
「お前さっき、もうお腹一杯って言ってなかったか?」
ウィルコックが茶々を入れ、
「うるさいわね。細かいことを気にする男は、嫌われるよ!」
「まあまあ。俺も聞きたいしさ」
トルキスクが宥めつつも、ちゃっかりコスモを急かす。
幼馴染だけあって、息のあった三人の会話に苦笑しながらも、コスモは三人に喜ばれそうな話題を脳内で検索し始めた。
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