斎藤宗次の初日
斎藤宗次は、明るく活発な性格をしており、クラスの中心的人物だった。
そんな彼が、異世界での遊戯に参加することを決めたのは、自分の経験の為だった。
ソウジはライトノベルを読むことを趣味としており、将来はライトノベルを書く側になりたいと思っていた。その夢に向けて、今回の遊戯の誘いは大きな追い風になると考えたのだ。なにせ、空想か仮想でしか存在しえないと思っていた異世界を体感する、奇跡のような機会なのだ。
彼が降り立ったのは、魔法連合国だったのだ。あまり深く考えての決定ではない。自身のスキルに魔術の才があったこと、そして魔術という現実にはない力を体感し、将来のライトノベルを書く材料とする為。それだけの理由だった。
彼は、プレイヤーが集まりそうな魔術学園への入園を避けた。
書物を頼りに自己流で研鑽しようかと思っていた彼に、不意に声がかけられた。
「そこの若者よ、少し待たれよ」
声をかけられたのが自分だと思わず、そのまま歩き続けようとすると、肩を後ろから掴まれた。
「待てというに」
「っ!?」
一瞬、プレイヤーの可能性を疑ったが、指輪に反応はない。
振り向くと、そこには細剣を携えた細身の男がいた。
「お前、魔術のいい才能を持っているな。体もそこそこ動くと見た」
用向きを尋ねようとしたが、先に向こうが口を開いた。
「はぁ、どうも」
目的がわからず、曖昧な返事を返す。
「兄ちゃん、あんた磨けば光る物を持っているのに、原石のままにしておくのはもったいねえ」
「は、はあ」
男は、額に手を当てるというオーバーリアクションをしながら、訳の分からない言葉を並べ立てる。ソウジとしては返事のしようがない。
「そこで、だ。あんちゃん、俺のところで修行しねえか?俺さんが、立派な魔法剣士として大成させてやるぜ?」
「!」
願ってもない提案だった。とはいえ、相手の素性がさっぱりわからない。もしかしたら、詐欺の類かもしれないと警戒するソウジ。それに気付いたのか、たまたまなのか、男は高らかに名乗りを上げた。
「オレは、稀代の魔法剣士にして、連合の大魔導師の一人、フォルゲン様だ!」
「・・・」
わざわざ腰の剣を抜き、空へと掲げたそれに炎を纏わせる。使い手はともかく、炎を纏ったその剣には、細さを感じさせないほどの力強さと迫力があった。そして、美しさも。
その光景を見て、ソウジは即断する。
「うす!よろしくお願いします、師匠!!」
こうして、ソウジはフォルゲンと師弟の関係になった。
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