第16.5話 対人課最強を決める戦い
「そろそろ決着つけようじゃねぇか」
「いいっスよ、紅蓮先輩」
「……ふむ」
「……あァ」
「やりますよ。俺も……」
対人課オフィス。最強を決める戦いの火蓋が切られようとしている。
各位、配置につく。全員が
――コントローラーである。
「負けたらジュースおごりッス!」
「いいぜ」
テレビ画面にでかでかとタイトルが映し出される。
『超乱闘!スマッシュファミリーズspecial』。
様々なゲームのキャラクターが登場し、子供から大人まで楽しめる大人気対戦アクションゲームであった。
対人課は、オフィスにて仕事が来なければ基本待機をしている。
そう、暇なのだ。
スパーリング、能力のメンテナンス、射撃練習。各自、やらなくてはならないことはある。しかし、息抜きは必要だ。暇をつぶすため、テレビが設置されるのは必然で、そこにゲームが繋がれるのも若年である空、紅蓮がいたことでそう時間はかからなかった。
しかし、紅蓮と空の二人で対戦するのにはすぐ飽きが来た。
調を引き込んだ。最初は乗り気ではなかったものの、負けたことが悔しかったのか、高頻度で混ざるようになる。
鑑心は「俺ァ、げーむはわかんねェ」と混ざりたがらなかった。
しかし、彼はガンマン。手先は器用であり、動体視力も老人のものではない。スペックとしては問題なかった。一度参戦し、紅蓮、空、調に負けたことで、彼の闘志に火が付いた。
『黒葬』社員、概ね負けず嫌いである。
燈太はどうか。彼は少し前まで高校生であった。高校性男児とゲームは切って離せない。
――坂巻燈太参戦。
「俺は、こいつで」
燈太が選ぶは、赤い帽子を被った国民的キャラクター。癖なく使えるバランスタイプのキャラクターである。
「俺は、こいつだな」
紅蓮が選ぶは、攻撃に特化した巨体のキャラクター。
「うちはこれッス」
空が選ぶは、速い動きで相手を
「私はこれだ」
調が選ぶは、意外にも愛くるしい姿をしたキャラクター。見た目と裏腹に手数が多く、厄介なキャラである。
「俺ァこいつだ」
鑑心が選ぶは、銃を使う遠距離型のキャラクターである。
このゲームは敵のダメージ値を増加させ、ステージから吹っ飛ばすことで相手を倒すことができる。いかにダメージを与え、いかに攻撃を受けないかが勝敗を決めるカギとなる。
バトルステージはシンプルなものだった。小細工が通用しない、純粋に腕のみで勝敗が決まる。全員の意識がテレビに向かう。集中。
3、2、1。
GO!
対人課、ゲーム王決定戦が幕を開けた。
各キャラが一斉に動きだし、各々コンボを決めていく。
「オラオラオラァ!」
まず優位に立ったのは紅蓮の操作するパワー全振りのキャラであった。大振りな攻撃ではあるが、乱戦である以上かなり当たる。
「そうはさせないッス!」
紅蓮の優位を見て、空は紅蓮をターゲットにし、細かい攻撃で攻め立てる。
「っこの! しつけぇぞ!」
「これも戦法なんスよ!!」
突然、二人のキャラクターが吹き飛んだ。
「「ッ!?」」
にやりと笑う男が一人。
「――戦場で、周り見ねェのはまずいんじゃねェかァ?」
鑑心の操るキャラクターからのミサイル攻撃であった。
「ガン爺……ッ!」
「よろしいのですか? 二人に構っていて」
調は鑑心のキャラに忍び寄り、攻撃を仕掛けた。コンボが繋がり、瞬く間にダメージが増加する。
「調ェ……」
……。
と、拮抗した戦いに見える。
しかし、燈太のキャラ未だダメージほぼ0。
――混ざり損ねた……
不幸中の幸い。
なぜか、燈太は紅蓮の攻撃に巻き込まれなかった。戦いを避けているわけではない。気づけば、ほぼ無傷。
――あれ、これ勝てる?
――待て、もしやこれは接待プレイ?
燈太は考える。実は、燈太に遠慮して、攻撃していないという、対人課全員の気づかいではなかろうか。
そんな勝ち方は望んでいない。
燈太は自ら、先頭の中心にコントローラーを切り――
「あれ、つか、燈太無傷じゃね?」
「……ホントっす!」
「――」
「ほう」
「え」
沈黙。
「殺せー!」
「フルボッコにするッス!」
「任せたまえ」
「おゥ」
計4体のキャラクターが燈太めがけて走る。
「は、話が違ッ――」
燈太、リタイア。
「このまま、全員ぶっ倒す!」
紅蓮の大振りの攻撃が調に炸裂した。
「なっ……」
調、リタイア。
「そんな攻撃当たんないんスよ! ……あっ」
空のキャラクターが勢い余って崖から落ちる。
空、リタイア。
「ガン爺ィ! タイマン張れぇええええ!」
「一人でやっとれィ」
鑑心、無慈悲の遠距離射撃。
「ちょ、まッ!」
「あばよ」
ミサイルは紅蓮のキャラクターにぶち当たり、どこか遠い彼方へ飛ばされる。
紅蓮、リタイア。
「こんなァ、もんよォ」
優勝 伊勢原鑑心。
「くやしいッス!!」
「もう一戦!!」
「紅蓮、借りは返させてもらおう」
「次こそはっ!」
「いや、働きなさいよ」
書類を届けに来た、時雨沢カレンによる無情の一言で、ゲーム王決定戦は幕を閉じた。
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