第9話
あゆみは目の前の獲物に気づき、レオンに飛びかかろうとする。
次の瞬間、大きな雷が西園寺家の真上に落ちた。
巨大な音と光が同時に2人の居た屋根裏部屋にも届く。
そのため、あゆみの行動に対するレオンの反応が遅れた。
しかし、レオンが『箱庭のモナ・リザ』に慌てて意識を戻すも、特に異常はない。
ふと、腰に違和感を覚え、彼は下を向いた。
するとそこには、涙目をしてがたがたと震えたあゆみの姿があった。
彼女は必死になって、レオンの腰にしがみついているのだ。
「ふぇ……」
今にも泣き出しそうな怪盗キティ。
そこに、再び雷が轟く。
すると、彼女はより一層震え上がり、更にきつくレオンにしがみついてくる。
その様子に、レオンは堪らず笑ってしまう。
「あはは、大怪盗である子猫ちゃんはどうやら雷が苦手らしい。くくっ」
髪をくしゃりと握って笑う彼の姿はどこか魅惑的だった。
あゆみは一瞬その姿に見惚れるも、首をぶんぶんと横に振る。
その勢いで、あゆみの身体についていた泥がそこら中に飛び散った。
それを見たレオンは、この暗闇の中、どこに潜んでいるかも分からない榎本を呼んだ。
「榎本、彼女を綺麗にしてあげてくれ」
「かしこまりました」
あゆみは恐怖に震えながらも、自分が敵に情けをかけられていることに気づく。
そのことに誇りを傷つけられたあゆみは、出来うる限りの抵抗を試みた。
雷のないときを見計らい、あゆみはレオンから離れ、そのまま屋根裏部屋を飛び出す。
彼女は雷の鳴る度に、何かしらにぶつかりながらも、長い長い西園寺家の廊下を駆け抜けていった。
「あ、こら! 待ちなさい!」
レオンと榎本があゆみを追いかける。
こうして、3人の鬼ごっこは随分と夜遅くまで続いたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます