第7話

そんなカオス極まるこの部屋に、真鍋の声が落とされる。


「あの、すみません。猫がいないって聞こえてきたんですけど……」

「あぁ、ごめんね。本当は猫を拾ったわけじゃないんだ」


「おい、どういうことだ?」

「さっきから猫猫って何の話よ?」


レオンがあゆみを見て、続ける。


「本当に拾ったのは、彼女のことなんだ。名前はあゆみ。だけど、それ以外の事は何も覚えていないんだって」


彼の説明に小田と真鍋が息を呑む。

あゆみはレオンに視線を投げかけるも、口は開かない。


小田と真鍋の顔が次第に赤く染まってゆく。

“拾う”という単語に一体何を想像したのやら。


レオンはどぎまぎしている2人を生暖かい目で見守り、あゆみは新しい煙草を取り出して、いつの間にか煙草を吸っていた。


「とにかく、そういうことだからさ。今日は帰ってもらってもいいかな?」


レオンの言葉にあゆみも便乗する。


「そうそう、早く帰りなよ」


執事の榎本は扉の横で控えている。


「あ、あぁ。末永くお幸せにな」

「こ、今夜も警戒だけは怠らないようにしてください! お、お、お幸せに」


榎本と小田、真鍋が客間から出てゆく。


洋館自体からも出て行った刑事2人が帰ってゆく。

帰り際、小田が先ほどの部屋を見上げ、独り言ちた。


「まさか、な……」

「何か言いましたか?」

「いや、なんでもねーよ」


去っていく2人の後ろ姿をバルコニーからレオンもまた見ていた。

彼バルコニーから客間へ戻ると、あゆみがベッドに寝そべり、煙草をふかしている。

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