第6話
「君じゃないわ、あゆみよ。というか、どうして下に居たの? 誰かお客さん?」
「僕のお客さんというよりは、君の」
「あゆみ」
「……あゆみのお客さんって感じだね」
「どういうこと?」
「どうやら昨夜の君の話を聞きたいらしい」
「まさか、言ったわけ?」
「まさか! もうお帰りいただいたよ」
レオンの言葉にあゆみがほっと息をついたのも束の間、突然扉の外から小田の声が聞こえたきた。
「レオン、大丈夫だったか?」
あゆみとレオンが視線を交わす。
「お帰りいただいたんじゃなかったっけ?」
「そのつもりだったんだけど」
レオンが扉に向かうと同時に、あゆみは立ち上がり、バルコニーの鍵を開けた。
部屋の扉が開けられると同時に、小田と真鍋の2人が部屋に入ってくる。
「おいおい、勘弁してくれよ、泰造。2階が僕のプライベートエリアだってことを君は知ってるよね?」
「なんだ、俺たちは大抵の事は許し合える幼なじみなんじゃなかったか?」
「……まったく」
小田は皮肉を返しながら、ずかずかと部屋を進んだ。
真鍋はそんな上司に続くべきか迷っている。
「どうぞ、真鍋さん」
レオンが扉を大きく開けた。
「あ、ありがとうございます」
真鍋が部屋に入ると、小田と何やら言い合う女性の姿があった。
「おい、黒猫なんてどこにもいねぇじゃねぇか!」
小田が煙草の火をつけようとすると、あゆみがそのジッポを奪い、自分の煙草に火をつける。
「は? 何してんだ?」
「何って、火借りただけだけど? てか、さっきから喧しい。こっちは寝起きだっていうのに」
「んなこと知るか。ジッポ返せ」
レオンが2人の手から煙草を取り上げる。
「おい」
「ちょっと」
2人の声が重なり、レオンを威嚇する。
しかし、威嚇された当の本人は笑顔を浮かべ、
「ここは禁煙だよ。何度言ったら分かるのかな?」
小田は舌打ちを一つ。
あゆみは体育座りをして、ジッポの火を付けたり消したりしている。
「そんなに煙草が嫌なら、いっそのことこの屋敷ごと燃やしてしまおうかしら」
2人のいじけた態度にレオンはため息をついた。
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