第5話

「本当はきちんと掃除をしたかったのだけれども。何分、この家は広いというのに、住んでいるのは僕と榎本くらいだろう? そして、泰造は僕の幼なじみだ。少しくらい掃除を怠っても許してくれるのでは、と思ってね」


飄々としたレオンの態度に、小田が舌打ちをする。


「そうそう、猫を拾ったのも昨夜遅くなんだ」

「ふん、まぁそういうことにでもしておいてやるさ」

「助かるよ」


何かを隠しているらしいレオンの様子に、小田は折れたのだ。


「えっと、それじゃあ、私たちはどうすれば良いですかね?」

「どうもこうもねぇよ、仕事は終わりだ。帰るぞ、幸子」


小田が立ち上がる。

慌てて真鍋も立ち上がる。


その時、洋館の2階からどん! とものすごく大きな音が響き渡った。

応接室にいる全員が動きを止める。


「おい、今のは」

「おやおや、昨日の猫が悪戯をしているようだ。ちょっと見てくるよ。榎本、2人の見送りをお願いできるかい?」

「もちろんでございます」


小田の静止を聞き流し、レオンは2階へと向かう。

そして迷わず2階の一番奥の部屋へ。


レオンがその客間の扉をノックするも、返事はない。

少し躊躇った後、彼は扉を開けた。


「ものすごい音がしたんだけど、大丈夫かい?」

「……うぅ、痛」


そう言ってベッドの影から起き上がってきたのは、黒髪の美女だった。

彼女は、顔をしかめながら頭をさすっていた。


「おいおい、勘弁してくれよ。まったく、とんだ子猫(キティ)だね、君は。大方、ベッドからでも落ちたんだろう? 下の階まで響いてきたよ」


レオンの物言いに“キティ”と呼ばれた女性はむっとする。

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