第11話
魔法には憧れがあったが、使えないのなら仕方がない。
諦めた。
だが、【無効化】という異能力が使えるというのには本当に驚いたのだ。
今まで使った事がないし、どうやったら使えるのか分からない。
ルーがいうには、自分の中にある異能力を感じ取り、纏うイメージや放出するイメージで使えるというのだが……
出来ない事が解らないらしいルーは、最初から全ての異能力を使えたという。
天才と凡人の差かな……
手から放出するイメージだと、視線で対象に照準を合わせて無手で使うよりはやり易いというのだが……
体調が良くなってから、ルーが異能力の特訓に付き合ってくれている。
アデラとアギロは特訓中は部屋の外に出てもらっているから、申し訳ない気持ちがあるが、あまり見られていると集中出来ない。
ルーの掌に炎が揺らめいている。
それを私の異能力で消すのが現在の目標だ。
私なら、皇帝陛下や魔導師総長閣下の魔法でも無効化出来る才能はある、とはルーの言葉だが、全然使える気がしない。
元々、この力は私が持っていたモノらしい。
初代の皇帝陛下が幻獣の長に聴いたらしく、皇族の中では当たり前らしいが、魔力や異能力も魂に刻み込まれた力。
それぞれに特徴があって、何度生まれ変わっても特徴は変わらないという。
前世でも私はこの力を持っていたのだろうが、使う機会がなかったのだろうとルーに言われた。
力を感じ取るイメージは毎日行っている。
勿論、礼儀作法やダンス、身体を鍛える事、妃教育、歴史や言語に算数等の私に課されたモノの勉強は疎かにしていない。
空いた時間が少しでもあれば、精神を集中させて、力を感じ取ろうと練習している。
ルーが良く練習に付き合ってくれるが、自分のカリキュラムは大丈夫なのだろうか。
訊いてみても問題はないの一点張りだ。
何だか前世の従兄弟を思い出す。
彼を置いてきぼりにしたのは、とても後悔している。
私が付いていないと危うい印象だったから、ずっと一緒にいようと思っていたのだが……
それに彼には返しきれない程の恩があるのだ。
とはいえ、彼もいつか彼女を作っただろうし、いつかは結婚もしただろう。
それまで見守るつもりだったから、早く手を放し過ぎたかと心配はしている。
中々手がかかるが、それでも家族だから、一生関わっていくつもりだった。
大恩人だしね。
けれど、今の私にはどうしようもないし……
そんな事を考えていたら、何やらルーの表情が険しいような?
取りあえず聞いてみましょう。
「どうかした?」
「いや、考えたのだが、この炎がそなたの大切な者を襲うと考てみてはどうか。例えば、アデラやアギロやそなたの父を傷つけるモノだと」
成程と思い、精神を集中させる。
すると、イメージしやすくて、何となく感触が変わった気がした。
例えるなら、フワフワして掴み処のなかったモノが形になったような。
身体の中から何か暖かいものが溢れてくる印象を受けた。
それを掌から放出する。
すると、ルーの掌の炎が掻き消えた。
「やった!」
飛び上がって喜んだ。
顔がにやけて止まらない。
ルーも満足そうだ。
すると、ルーが何かを取り出した。
「帝宮の庭に咲いている、結晶花を加工した物だ。帝宮の結晶花は特別で輝きが一番美しい。異能力が使えた記念だ」
そう言って、差し出した小さな箱の中には二つの飾りがついたペンダント。
一つは青い薔薇、もう一つは白い牡丹。
大人の親指位の青く淡い光と白い光を放っているペンダントを差し出した。
ミスリルという、帝国でしか産出も加工も出来ない金属で首飾りの部分は出来ているそうだ。
本当に綺麗で、もらって良いのか不安になったが、ルーはとても真剣な顔をしていると思う。
無表情だけれど。
「ありがとう! とっても綺麗だね」
月並みな事しか言えないけれど、本当に嬉しいのだ。
満面の笑みを浮かべていたと思う。
受け取ってから
「私も何か贈りたいけれど、何か欲しい物ある?」
あまりプレゼントとかした事はないし、何が良いかわからない。
男の子の欲しい物って何だろう?
従兄弟は私が作った食べ物とかで満足していたからなぁ。
家族もそうだったし。
「そなたがいつも身に付けているブローチが良い」
「これ?」
淡く金色に輝く、私の瞳の色の宝玉のはまったブローチに触れて問う。
これはちょっと特別なブローチなのだ。
アギロとアデラが特別に、私の魂を彩る色と雰囲気を形にして創ってくれたいう物である。
だが……
「ルーになら、プレゼントするわ。アギロとアデラには後で謝っておくから」
「すまぬ、ありがとう。大切にする」
掌に乗せたら、いつも綺麗な瞳が益々輝いていてとても嬉しそうだ。
こちらも嬉しくなる。
「私もこのペンダント大切にするね。いつも身に着けるようにする」
贈り物を眺めながら微笑んでそう宣言した。
異能力の特訓のため、精神を集中させながら考える。
帝都に来てから気が付いたが、この国には、お米がある。
その上、味噌と醤油、味醂に米の酒まである。
ついでに、箸までだ。
勿論、スプーン、ナイフ、フォークもあるし、 取り分ける時はトングかな? っていうのを使たり。
ワインとかワインビネガー、バルサミコ酢に、シードルやりんご酢みたいのも有るみたいだ。
学校の演習で野宿する時は料理も作る可能性があるからと、料理を色々教わった。
蜂蜜についても色々聴いたのだ。
場合によっては学校の演習の野宿中に野生の蜂から蜜を採ることもあるという。
帝国のミツバチは蜂蜜も多く採れて、他国の物より栄養も高いし、美味しいらしい。
魔力が弱いと帝国のミツバチは三キロぐらい追いかけて攻撃してくるとか。
魔力が強ければ、煙で大人しくなるとの事。
後、薬草から蜂を大人しくさせる成分の物を作れて、それを噴霧すれば容易く手に入るという。
野宿に備えて色々調味料とか薬草類を教えてもらった結果、この国は、香辛料とかも沢山の種類がある事がわかった。
西洋風なのに、何故、ホカホカご飯が食卓に上ったりするのかと疑問だ。
おかずも付いて、主食の様相なのだが……
ルーに訊いたら、帝都では米が主な主食で、パンも麺も主食の位置づけだという。
もう少し年齢がいったら、懐石料理みたいなものも出るという。
私の一族の領地でパンが主食だったのは、お母様の為にその祖国に合わせていたからだろうと教えてもらったのだ。
元日本人に暮らしやすい国で良かった……!!
こっそり歓喜してしていたら、
「何してるの?」
エドに聞かれた。
あれ? アンドもフェルも興味深そうに見てる。
「異能力の特訓」
思わず答えてから、ハッと現在の状況を思い出し、ワタワタ慌てる。
まだ異能力の事は皆には秘密だった。
ある程度使えるようになるまでは黙っていようと決めたのだった。
いつでも使えるように、別の事を考えながらでも精神の集中が出来るように練習していたのだ。
「今の聞かなかった事にして」
そう言って三人を見ると、首を傾げている。
「何だ、てっきり……」
私の胸に光るペンダントを見て、皆、何やら含み笑いだ。
何だろう?
「それ、最上級の結晶花を圧縮して加工した物凄いものだって解ってる? 帝宮の中でも特別な場所に咲いてて、皇帝陛下に許可もらわないと作れないんだよ」
エドに言われて思わず、ペンダントを凝視した。
そんなに凄い物なの? 私もらって大丈夫? あのブローチと交換みたいになったけれど、釣り合うのかな……
「エルザ、気にするな。私が贈りたかったから贈ったにすぎん」
そうは言っても私、根は庶民なのですよ……
モノの価値とかしっかり学ばなくてはと新たに決意した。
後、家の物とか自分の持ち物の扱いをもっと丁寧にしたい。
もっとも、物を粗雑に扱う様な事、前世も含めてないけれど、意識するとしないとじゃ違うよね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます