過ぎた道には花が咲き

凍てつく道を歩いていた頃、

となりにいつも置いていた音楽。

衰えぬその旋律は、いつでもあの大地に連れていってくれる。


過ぎゆけば荒れ果てたはずの大地に花が咲き。

今は躓くこともなく歩ける。

いつもそう。歩いていた頃はいつもいつだって挫けていたのに。


灰色だった空も色を取り戻し、

泣きたいくらい綺麗な色になっているんだ。

思い出は美化される。

どんなに辛いものでも。


だけどね、それでも、

どうやったって美化されないものもところどころあるんだ。

思い出したくもないものが。

こびりついて擦っても落ちない。


たとえば曲がった腰でゆっくりと散歩道を歩く時、

そんなしつこい油汚れも愛しく思えてくるんですか。

しわしわの手をまだ離さずに貴方が握っていてくれたら、

命尽きるまで歩いていけるんですか。


今の私にはまだわからない。

全てを許せるなんて思えない。

全てを愛せるなんて思えない。


危なっかしく片翼で飛ぶ自分。

風がつかめないままカッコ悪く。

羅針盤はとっくに壊れている。

いつも、行き当たりばったり。

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