第1話 デミヒューマン
涼子は
「和也さん、デビューしたんですよ、わたし」
「
勇也は一歳年上の、和也にとって兄貴分。涼子の彼氏でもある。
「聞き及んでいますよ。大へんな高評価だったとか……」
「
「
「いつ終わったの」
「任務ですか? つい先ごろですよ」
「今夜は観に来てくれるの?」
「いえ……あいにく仕事が入りそうなんです」
「いつ、任務や仕事がなくなるの?」
「さぁ、
和也は生真面目に、かつ慎重に応じていた。
彼女に間違った情報を与えてはならない、というように……。
「わたしは、和也さん。あなたに観て欲しかったのよ」
「ええ。念をおされずとも、いずれは。涼子サマ」
「
和也は口の
およそ感情の動かされた様子もない。
「それはたしかに極端だ。で、どうしてです」
「それを言わせる気」
「だって妙なあんばいです」
「貴方、マシーンみたい」
和也は
それでもハキハキ言ってしまうその口。
「そういうお姫サマはアンドロイドでしょう」
「そんなこと言うと……わたしの感情が傷つきます」
「
「おこりますよ!」
「それは感情論だね。ボク、そういうのは苦手なんですよね」
「あなたが
「ハイ」
ためらいもせず和也は正直に応えた。
彼女に正確な情報を与えないのは、不誠実である、とでも言いたげに。
「なぜそんなふうに言うの?」
「生まれつきですかね……」
「答えになってないよ」
「
「だから?」
「ですから……感情が傷ついたというのでほめました。ほめたのにどうしておこられなきゃいけないんだろう。見当もつかない。右脳と左脳をつなぐ神経系の束である、
「貴方ってゆうずうきかないっていわれるでしょう」
彼は、苦く笑った。
「笑ってないで、言い返したらどうなの? 人造とはいえ、人間なんでしょう」
「いえ……」
「あなたがそんなふうになるまでには、いろいろな目にあったと思うのよ」
「それでも、慣れてきましたから」
「ゆうやはそうじゃない!」
「いきなり兄さんを引き合いに出さないでください。勇也さんは
初めて感情らしいものを見せたと思ったら、口喧嘩――。
涼子はおよそアンドロイドらしからぬ――従来のものという意味で――複雑な表情を見せた。
「わたしは感情があるからわかるのよ。貴方がプレイボーイの勇也を慕っているのは、戦闘の苦痛を忘れさせてくれるからだって」
「涼子サマにはかないませんね」
憮然とした言いざまだったが、涼子には和也が心を閉ざしたように見えて、悲しそうな眼をする以外になかった。
「和也さん、わたし、スターシップに乗るの」
「それは……?」
「止めても無駄よ」
「いえ……その船は……」
涼子は今度はだまって首を振った。拒絶の意味を表していた。
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