疾く駆けよ!

れなれな(水木レナ)

プロローグ

 スポットライトがまっピンク!


 バックダンサーの勇也ゆうやが、高々たかだかと足を上げている。


 舞台の上をすべるように現れた涼子りょうこは、原色のふりそでを一枚、また一枚と脱いでゆき、くたりとシナをつくって首をかしげ、視線を客席に投げかける。



 好事家こうずかの視線とため息が満ちる中、バックダンサーの勇也が躍り出る。


 割れた腹筋から胸板をさらし、ピンクのライトに照らされた素肌にしなやかな指を這わせ、じらすように下肢を見せて開脚を披露した。見事だった。


 片や涼子は、赤い襦袢じゅばんからはらりと肩をあらわにした。



 吹きあがる風にまかせて、スポットライトがかき消え、均整きんせいのとれた全身のシルエット二つが赤いスクリーンで扇情的せんじょうてきに舞い踊っていた。


 いかにももったいつけた演出だったけれど、今日の客は女性が多い。新入りのお披露目おひろめに華をえるだけの勇也ではない。


 女をよろこばせる手管てくだはお手のものだ。



 公演はいつも通りわいた。


 こうして涼子の初舞台は、勇也のおかげで大げさとも言えるくらいの高評価を受けたのだった。







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