神楽の君様ご惑乱
第88話
さてさてここ
主上様はお母君様であられる皇太后様の、お兄君様に当たられる摂政様のご嫡男であられる、関白様の参内を朝から受けられている。
ついこの間迄は病弱気味の少年で、何かしらの理由を見つけては、幼い頃からの妻との夫婦の絆を深め様とされずに、ひたすら逃げる事ばかりをされておいでであったのに、どうした事だろう?
あの幼過ぎる頃からのご夫婦の為、ずっと滞っていた初夜の儀をこなされてからというもの、逞しく艶やかな男の色香を漂わせる青年となられた。
そして今朝も、単衣に
宮中の数多の女房女官達が、恋い焦がれるは理解ができる程だが、散々儀式迄はごね続けておいでであったにも関わらず、皇后様と真のご夫婦となられてからというもの、主上様は陰陽寮からのご夫婦にとっての吉日と示される日以外でも、
直ぐに待望の親王様がご誕生となられるだろう。
「昨夜も皇后様を、お召しになられましたとか?」
「おじ君様……夫婦は仲睦まじゅうせねばなりますまい?さようにございましょう?」
主上様は昨夜の名残りを体内から匂い立たせ、それは気怠げに言われた。
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