第47話

 瑞獣は殆どが美しい。否、神々様のは美しい。

 それ以上のお力をお持ちの大神ともなれば、その美しさは計り知れない。

 だからいにしえより、神は美しいものがお好みと、人間は勘違いをして来ているが、こと大神だけの事をいえば、容姿とか見た目に関しては、全く関心はない様だ。


 生け贄などの場合でも美女を選ぶ事が多いが、大神が龍とか他の神の代わりを務めておいでの折には、突き返される事があると聞く。

 突き返された者は加護を受け、それは羨む程の生涯を送れるらしいが、大神でない場合は神の元に行く事となるから、の見極めは誰にも分からない。

 ただ、突き返されても、大概の望みが叶う場合は大神であり、その恩恵は神よりも永い。


 つまり大神が遣いとしたは、この世の美しさではないという事で、その瑞獣ずいじゅうの御子様ならば、当然その美しさは例え様もないという事だ。

 ゆえに、世俗を隔ててお暮らしなのも合点が行く。


 他国で月の美女が、数多の男の魂を虜とし競い合わせた、という伝説が存在するが、この国でもそういう事になりかねないレベルだが、女御となられた時点で、上皇様以外には余りお姿をお見せになられなかったし、大神からこの国の天子様への贈り物だ、良かなぬ事を考える者が現れる筈はない。

 大神の天罰は神の天罰よりもはるかに強力だ。大神という存在を知らぬ者でも、神の天罰は知っている。

 そしてそれはそのまま御子様であられる、神楽の君様にも当てはまる。

 その美しさは尋常じゃないから、目の眩んだ者達が何を血迷うか……。そして、どの様な目に合うか……。


 ……確かに、それ程までの美しさだった……


 そして、それ程までの神楽の君様と、お会いする事をから許された琴晴は、決して失敗ってはならない事を承知している。


 ……否、決して失敗しくじる事が無い事を、ご存知だから許されたのか……


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