第5話

〖ロリコン〗


それは大人なのにも関わらず『少女』を異性として愛する人のこと



ロリコンという言葉は本来異世界この世界には存在していなかった

しかしレオンやユナに対して事情を説明していた際に使ってしまい意味を問われたため説明してしまった

意味を知ったミラ達は、少女にキスされた際に引きぎみにロリコンと吐き捨てた

少女は両親の元に駆け足で戻り、自分でした事が恥ずかしかったのか、自分を抱き上げる父親の胸に顔を埋め、こちらを1度も見ずに帰って行った

そう、突然の事で固まる僕と、引いているミラ、リオン、その他の冒険者たちを置き去りにして⋯⋯



置き去りにされたギルド

中にいた冒険者は、ロリコンという意味をミラたちに聞き──


「気持ち悪い」


「うわぁ〜」


「ずりぃ⋯⋯」


「俺⋯⋯ロリコンって部類なのか⋯⋯」


あるものは蔑み、気持ち悪がり、あるものは引きながら──去っていった

1部、おもむろにサインをおくる男達がいたが⋯⋯勘違いされていることに変わりはない


「あの⋯⋯えっと⋯⋯気にしない方がいい

いつか消えるから⋯⋯」


「うん⋯⋯ありがとう、レオン⋯⋯⋯⋯」


僕はレオンの精一杯の慰めの言葉を受けカウンターへと向かった

カウンターに座る女性は僕に気がつくと作り笑顔で2階にある扉を指さす


「ミタさん、すみませんが、あちらの部屋へ行き、中でしばらく待ってもらってもよろしいでしょうか?」


「⋯⋯⋯⋯はい」


肯定する以外の選択肢は無かった



広い部屋に長机がひとつと椅子が6つ

椅子は長机の所に横並びに3つ、長机から数歩離れたところに1つ、扉の前に2つ椅子が置かれている

僕は今、長机から数歩離れたところにある椅子に座っている

扉のところにはレオンとミラ

長机には、左から順に眼鏡をかけた三十代くらいの男性、ドワーフとかいう種族のじいさん、ユナが座っていた


──そう、免除されたはずの面接が先程復活し始まった


眼鏡の男性が、机に両ひじを着き自分の顔の前で両手を握り、話始めた


「君は、なぜ冒険者になりたいんだ?」


「それは、困ってる人を──」


「嘘をつくんじゃない!」


バンと、机を叩き立ち上がった眼鏡はゆっくりと座り直し僕の方を見て続けた


「お前が今回したことは分かっている、ビーストファングに誘拐されそうになった少女を助けたことはな!

だがしかし!お前はその後助けた可愛いくていたいけな少女とキスをするという何とも羨ましい罪を犯したのだ、それが決定的証拠だ」


「は、はぁ」


「本当は君はロリコンとかいうやつなのだろう⋯⋯我慢しなくてもいいんだ、自分の中にある欲望を言葉で表すんだ」


何故だろうさっきから私はロリコンですと、言っているようにしか聞こえない⋯⋯

声を荒らげ、ふしゅーっと機械が蒸気を吐くかのごとく口から息を吐く眼鏡


「いえ、僕はロリコンではありません」


「だったら君はどんな子が好みなのかね」


「あの、この質問って何か意味があるんですか?」


あると叫ぶ眼鏡だが、横にいるドワーフは首を横に振り、ユナも横に首を振りながらクスクスと笑っていた

僕はロリコン眼鏡の質問に答え続けた



静まり返った殺風景な広い部屋

その中心にポツリと置かれた丸い椅子に座る僕

木でできたその椅子は、固くてとても冷たく感じる

ロリコンメガネの暴走から数十分が経った

先程から質問しているのはロリコンメガネのみ

しかも、あの少女くらいの子に好かれるにはどうすればいいのか、あの子のことをどう思っているのかなどばかりだった

僕が答えるにつれ、不機嫌になり口調が変わるメガネ


「それで、お前は結婚する気もないのにキスをしたのか?」


「したのではなくされたんですけ──」


「なんだ?自慢か?」


「いえ⋯⋯全くそんな気はありません」


「もういい、なぁじいさん

手っ取り早く俺とこいつを戦わせて勝ったら合格でいいんじゃねぇか?」


えぇ⋯⋯


「ヒューイ落ち着け

こやつの力は合格を上げても良い程だ、やる意味が無い

それにお前⋯⋯殺る気出だろ?」


「安心しろじいさん、流石の俺もここでそんな真似はしない⋯⋯

やるとしても⋯⋯2、3本だけだ

だから大丈夫だ」


指2、3本⋯⋯痛いだろうなぁ⋯⋯


「⋯⋯残すのがか」


「!?」


悪寒が僕の背中を走る

メガネの奥で光る目は⋯⋯血走っていた

あぁ、ガチだ

僕は助けを求めるべくユナにアイコンタクトを試みた

ユナは口をパクパクさせ、ガンバレと言っただけで止める気すら無いようだ

扉の方をむき、2人を見る⋯⋯

ミラは僕と目が合うとニコッと微笑みかけてきた

何故だろう、まったく心がこもってない笑顔だ

怖い方の笑顔だ⋯⋯

レオンは苦笑いし右手を顔の前にたて、謝るだけだった

白薔薇⋯⋯

仕方なくメガネがいる方向へ振り返ろうとした瞬間──


―――ピキッ―――


僕は何かを感じ、頭を下げた

シュッ

僕の頭の上を淡い光に覆われた短剣が、通りすぎていき──

短剣はそのまま部屋の扉の方へと速度を保ったまま進んでいく


『プロテクション』


ミラは僕が頭を伏せた瞬間咄嗟に、手を前に出し力ずよく唱えた

綺麗な声に呼応し、透明な壁が出現

見るからに頑丈そうな厚い壁⋯⋯

しかし、短剣の勢いは衰えることなく


「い゛!」


「!」


「あら⋯⋯」


その壁をも突き抜けて、部屋の壁に突き刺さった

探検の刃の部分は完全に壁にのみこまれている

ゴクリ

あんなのが頭に当たっていたら⋯⋯

血の気が引くのを感じた⋯⋯

白薔薇の3人は驚き、目を丸くしている

レオンは一歩後ろへ思わず下がり、ユナは両手で口を隠す

魔法をかけた当人は言葉を失っていた

チッ

短剣が飛んできた方向から舌打ちが聞こえる

投げた犯人の隣に座るドワーフは溜息をつき頭を抱えた


「まったく⋯⋯

おい、そこの金髪こやつを追い出せ」


「えっ!?僕⋯⋯ですか⋯⋯?」


「他に誰がおる⋯⋯ほらさっさと連れてゆけ!」


「は、はい」


ドワーフは、ロリコンメガネを外に出すようにしじをした、レオンに連れられ部屋をあとにした

暴れるメガネを抑えながら、笑顔(苦笑い)を崩さないレオンを尊敬する


「さてと、うるさいのも消えたことだし、面接というか、事情聴取をさせてもらうぞ

まず、相手がビーストファングだと知っててやったのか?」


「いえ」


「知らずにやったのか、首の入れ墨は見えなかったのか?」


「みえました牙が数本描かれていたのを⋯⋯」


「ビーストファングがどんな奴らかを知らなかったと、言うことか?」


「はい、今日この国に着いたばかりなので

この国の悪党の名などは⋯⋯」


「うむ⋯⋯なぁお前さんは悪党共に恨みがあったり、正義感が強かったりするのか?」


「僕は⋯⋯

ぼくはそんな良い人ではありません」


良い人──ねっ


「なら、どうしてやった?」


ドワーフのじいさんは髭を撫で僕をみる


視線が痛い⋯⋯


「偶然、男達の隙間から少女の、怯えた顔が恐怖に染った顔が見えました

最初は、レオン達が来てからでいいと思いました

でも──

そう頭の中で考えてるくせに、思っていたくせに気づいたら男達の目の前に立ち挑発していました

そこからの行動⋯⋯組員への暴行は自分の意思です」


僕は拙い言葉で説明した


「無意識で止めに入り、その尻拭いは自分の意思でやったと」


声が消え、冷静になると深く息を吸って答えた


「はい」


「ふん、そうか⋯⋯だがな無意識に体が動いて倒しましただけならまだいいが、無意識に殺しました、突入し喧嘩を売って負けたので助けてくださいはダメだ

この世の中は結果が全て、起きた真実が全てだ

自分のために戦い、その結果少女を助けた

だから、今回はお咎めなしにしたいのだがな⋯⋯」


扉の方を見てドワーフはため息をつく


「まぁ、今回のこれもヒューイのやつに言われてやっただけだが、この件や金髪がお前さんを連れてきたことで注目を浴びているのは確かであり、なにか処分を与えんとヒューイのやつが殺り兼ねんからな」


ゾクリっ

僕はいないはずのメガネの殺気を感じ、身震いする

短剣が突き刺さった壁の方を見る

壁には既に短剣はなかったが深い傷あとが残っていた

するとパンっと手を叩く音が聞こえた


「というわけでだ、その強さを見込んでこの街の見回りを3ヶ月間しろ

最近物騒だしな

見回りは夜だけでいいし、週に2、3回でいい

それと、冒険者になったからにはギルドに貢献してもらわんといかんからな

小・僧・!お前のランクをFランクとし、3ヶ月以内にDまで上げること

それが出来なければ、小僧、お前のギルド入り、冒険者入りはなしだ」


「はい、分かりました

ありがとうございます」


僕は椅子から立ち上がり、頭を下げた

これは、このドワーフの判決内容に、裁量にではなく、その前の言葉に対してお礼を言った

そんな僕はドロイの隣で驚くユナと扉の前で驚くミラの真意を悟ることはなかった

赤く染った夕暮れが窓から差し込むこの部屋で僕は冒険者となった



柊が出ていってしばらく経ち、日が完全に落ちた頃

月明かりの差し込むギルドの一室でドワーフは一人立派な髭を撫でながら、柊のことを思い出す


「ヒューイのやつに呼ばれいやいや来てみたが⋯⋯来て良かったかもしれん⋯⋯」


ミタ・シュウを初めて見た時一瞬⋯⋯あの馬鹿の顔が見えた

もしかしたら⋯⋯

ドワーフは手を止め鼻で笑い、考えるのをやめた

金色の光を放つ月を眺め


「ふっ⋯⋯お前は月と言うよりやはり太陽だな⋯⋯」


今は亡き、旧友を思い出し笑う

太陽のごとく誰彼構わず、手を差し伸べ笑う男のことを⋯⋯


「だがあの小僧も運がない⋯⋯

この時期にこの騒動を起こされてはワシの立場がな⋯⋯

しかし、突然のこととはいえあの条件は不味かったか──」


今後のことを考え、頭を悩ませた

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