第4話
ギルドをあとにした、僕と白薔薇の騎士団3人は近くにあるレストラン、アルシェで早めの昼食をとっていた
アルシェは、ある程度稼げるようになった冒険者達が通う少し高めの店だという
話通り店内は小綺麗で食欲をそそる匂いが充満している
美味しそうな匂い⋯⋯でも、金⋯足りるかな
財布の心配をする僕に気がついたのか、銀髪が私が奢るから大丈夫だと言ってきた
ここは男として、女の子に払わせたくはないのだが、金銭感覚が分からない状況下では、そんなセリフは吐けなかった
個室に招かれ席につく、僕の隣にはレオン、テーブルの向かいには金髪、斜め前には銀髪が座った
銀髪が、レオンに目で何やら合図を送る
レオンは、コホンっと咳払いをひとつした
「まずは自己紹介から始めようか、僕の名前はレオン・アルベルト
知っての通りAランクの白薔薇の騎士団に所属している、まぁAと言ってもなったばかりだけどね」
「よろしく、えっと⋯⋯」
「レオンで大丈夫、それと敬語じゃなくてもいいよ、僕はまだ18だし、ミタも、そのくらいだろ?」
「僕も18だよ、それから僕のことは柊って呼んでほしい」
「オッケー、シュウ
じゃあ、ほかのメンバーの紹介なんだけどシュウの前にいる金髪の女性が、ユナ・ベイソン」
金髪は、僕に微笑みかけてきた
「ユナ・ベイソンですわ、ユナとお呼びください」
ほのかに香る香水の匂い
「よろしく、ユナ
僕のことも柊と呼んで欲しい」
お互いに軽く会釈した
「そして僕の目の前に居る銀髪の女性が、白薔薇の騎士団のリーダー、ミラ・フローレス」
銀髪は、立ち上がり頭を下げた
「私はミラ・フローレス、一応白薔薇のリーダーなのだが最近はレオンに乗っ取られている名ばかりのリーダーと周りからは言われている」
とレオンの方を見てニヤリと笑う
「そんなつもりないんだけど⋯⋯」
ミラはレオンの苦笑しつつ弁明する
ミラはどこか正義感が強く真っ直ぐな印象を感じさせる
どこか懐かしく青臭い
「でシュウ、君は、どこから来た」
元の世界のことを思い出していると唐突にミラが尋ねてきた
「えっと⋯少し遠くの、寂れた村から来ました」
異世界から来ました、日本から来ましたなどとは答えられないため、嘘をつく
「君の故郷では、あのような文字を使用するのか?」
「はい、ごく一部ですが、あの文字を使います」
「そうか⋯⋯」
「ミラさんあの文字に何かあるんですか?」
「いや、この世界は全て同じ言語を使用すると思っていたので、少々気になった」
⋯⋯
「あら、魔法の詠唱などで使われる文字や言語は違いますわよ」
「それは知っている、私が言っているのはだな日常で使う言語のことだ」
「魔法使いにとっては毎日使う言語です」
「私の揚げ足ばかり⋯⋯意思疎通のための言語に限定したらの話だ」
この世界は全て同じ言語を使用するって、ほかの言語がないってことなのか?ん〜⋯
「おっ、来たみたいだよ」
考え事をし始めると食欲をそそる匂いとともに料理が運ばれてきた
ミラはまだユナにつつかれている
「ほら、3人とも料理が来たからそこまでにしよう
せっかくの美味しい料理が冷めてしまう」
ミラさんよりもリーダーポイな
僕は考えるのを後回しにして目の前の美味しそうな料理を味わう事にした
〜
「うん、満足」
「ほんと、何回来ても飽きないよねアルシェは」
「そうですわね⋯⋯まぁ誰かさん達のご飯と比べればどこもおいしく感じますね」
「あはは⋯⋯痛いとこつくなぁ⋯⋯」
「ほんと⋯⋯」
アルシェの料理は4人分で銀貨4枚だった
これならば自分の分も払えた
ミラに自分の分の食事代を払おうと、銀貨の入った袋をコートのポケットから取り出し銀貨1枚をとりだしたのだが、ユナがミラは頑固だから面倒な事になるので、言葉に甘えておいた方が良いといってきた
僕はミラの優しさに甘えることにし⋯⋯あれ?
「ん?誰かさん達・って⋯⋯レオンとミラさんの事じゃ⋯⋯」
「失敬な!私はできますよ!ユナ程ではありませんが⋯⋯」
「すみません⋯⋯」
「ん?あぁ、ミラ
たぶんシュウは白薔薇のメンバーが僕ら3人だけだとおもってるんだよ」
「え、他にもいるんですか?」
「うん、あと⋯⋯一人ね⋯⋯」
「ミラそんな顔したらフェリムがまたいじけるよ⋯⋯
あぁ見えて、あいつ意外とメンタル弱いから⋯⋯」
どんな人なんだ⋯⋯
「あの⋯⋯それよりもフェリムを迎えに行かなくては行けないのでは?」
「あぁ!」
あったことも無いフェリムという人物に同情しつつ3人の会話を聞く⋯⋯
「そうだね⋯⋯でも、まだカードできるまで時間あるし⋯⋯かと言ってあいつとも合流しないといけないし⋯⋯
そうだシュウ⋯⋯この通りには沢山店があるから見ときなよ
店前に立ってれば迎えに来るからさ」
「なら、服屋にいますね⋯⋯
この服装を早く辞めたいので⋯⋯」
「あら⋯⋯意外とお似合いですよ」
「感覚がないかと思っていた⋯⋯」
ここぞと先程の仕返しをしてくるミラと口元を隠しながら言ってくるユナ
絶対笑ってる⋯⋯
「あぁ⋯⋯それもそうだね⋯⋯
ならあそこがいいよ
値段も手頃だし、素材もいいから結構長い間使えるよ」
「ありがとうレオン⋯⋯」
レオンだけ優しい⋯⋯
こうしてレオン達白薔薇と一時別行動することとなった
アルシェ近くにあるとある服屋
僕はそこで白い服と、黒のズボンを買った
元から服にお金をかけるタイプじゃない僕は安くて着やすいシンプルな服にした
ザ村人の服よりはマシだ⋯⋯
会計を済ませ店先で待つ
大通りを歩く人々⋯⋯
獣人だろうか⋯⋯獣耳を生やした人間が歩いている
ん?
今度は背の低い耳のとんがった老人⋯⋯
「さすが⋯⋯異世界⋯⋯」
大勢の人々が行き交う光景をただただ眺めていた
こんな時スマホゲーがあれば、時間を潰せるのだが⋯⋯
「ほんっと⋯⋯全部消すことはないだろ⋯⋯」
ため息混じりに愚痴をこぼす
「ん?」
視界に捉えた違和感のある光景──
4人組の男が黒い髪の女の子を取り囲み、路地裏へと消えた
嫌な予感がする⋯⋯
僕はその場に荷物を置き走り出した
勝手に動く体⋯⋯
僕の脳裏にこびり付いた光景
それは男達の隙間から見えた少女が怯えている光景だった
※
「やめてください、お家に帰らせて下さい」
少女は地面に座り込み震えながら言った
目の前にいる男達は不敵な笑みを浮かべ、お前の親が金を俺達にくれたら、かえしてやるよと言い下品に笑う
私は男達の首元を見て男達が自分を家に帰す気がないことを悟り自分が貴族の娘であることを恨んだ
これがただの村娘ならば、こんな男達に目をつけられることは無い⋯⋯
男達の肩や手の甲には獅子の入れ墨、首には三本の牙の入れ墨
これは、ビーストファングのメンバーである証
ビーストファングは、この国に拠点を置いている、5つのグループからなる組織で首の入れ墨の牙の本数で所属しているグループをしめしていた
ビーストファングは昔から人身売買などが盛んであったのだが、こんな真昼間の街道で貴族を襲うなんてことは無かったのだが⋯⋯
1年前の王国側が組織を根絶やしにするため、抹殺命令を出し勢力が弱体化したため、後先考えない行動や犯罪が増えた
凶暴で、血も涙もない組員たちを恐れ人々は、誘拐されるところを見ても誰も助けようとはしない
私は、自分がこのあとどうなるのかを悟り、助けを求めるのを⋯⋯希望を持つのを辞めた
だが、全てを許してはいけない⋯⋯
この方と私は違うのだから⋯⋯
男の1人が私が観念したのに気づくと、私の服に手を伸ばす、私は目をつぶり震える拳を握りしめた
「誰だ、お前?俺達が誰だか知っててやってんのかァ?」
「知ってるよ、あんたらがロリコン変態野郎ってことはね」
「ロリコン?お前訳わかんねぇこと言ってんじゃねぇぞ」
聞こえてくるのは男達の声と鈍い音
服に手を伸ばしていた男の呼吸音が突然消えた──
私はゆっくりと目を開ける
「ふぅ⋯⋯」
漆黒のコートに身を包みゆっくりと息を吐く男
男の周りには私を襲った男達が呻き声を上げながら蹲っていた
「ん?」
男は私の方へと歩み寄る
──ビクッ──
無意識に身体が反応し縮こまる
それを見て男は察したのか歩み寄るのをやめ、ポリポリと頭をかいた
「あぁ⋯⋯っと、僕は⋯⋯その⋯⋯
こいつらの仲間じゃないよ」
困った様子で下手な笑みを浮かべ、しゃがみこみ私と目線を合わせ自分に向かって手を伸ばしていた
言葉通り、首に刺青はない
「怪我してない?痛いところは?
立てる?」
優しい声
本当にビーストファングを倒したのかと疑ってしまうくらい頼りなさそうな青年
私は手を取り、こくりと頷いた
「よかった⋯⋯」
青年は少女の手を引き立ち上がらせる
青年は服についた砂などを払ってくれた
今だ小刻みに震える私に青年はそっと頭を撫で言った
「もう大丈夫だよ⋯⋯
君は助かったんだ」
青年の言葉で我慢していたものが崩れ落ちた
少女は自分に目線を合わせてくれている青年に抱きつき、溢れる出す感情が収まるまで私は泣いた
※
少女を助けた柊は、その後柊を探していたミラと合流し、柊に抱きつき泣いている少女と、周りで気絶している男達の事を話した
──数分後
ミラたちの呼んだ国の兵士たちによって男達は連れていかれ、少女の方はギルドに連れていくこととなった
ミラが少女に「こっちにおいで」「お姉さんが抱っこしてあげようか」など言っいい少女を誘ったのだが、少女は全て断った
最後の誘いを断った際のミラから僕への殺気は、流石Aランクというのもあって今度は僕が泣きそうになった
──ギルドに着いて数十分後
「リリー!!!」
「リリー!」
少女の両親が迎えに来た
少女の両親は泣きながらお礼を言い、お礼にと金貨の入った袋を手渡してきたのだが、さすがに金額が大きそうなので断った
少女の両親が僕の名前を聞き、帰る前にシュウさんにお礼を言いなさいと少女に言い背中を押した
恥ずかしそうにしながら近づいてくる少女
少女が僕の前まで来ると僕は少女に目線を合わせるために中腰となった
「助けていただきありがとうございました」
「うん、怪我がなくてよかった」
頭を撫でる
「あっあの⋯⋯」
「ん?なに?」
「その⋯⋯耳を⋯⋯」
少女はモジモジと何か言いたげに言ったので、少女の方に耳を向け──
その瞬間、頬に柔らかい感触が──
「!」
僕の時間が、ギルド内の時間が止まった
少女は恥ずかしそうに──
「これは、その、お、お礼です」
と言い走って父親の元へ行くと父親の体に顔をうずめた
少女の思い切った行動に心が反応してしまった
俺は自身の口に指をやる
「ロリコン⋯⋯⋯⋯」
ハッとなり振り返る
ミラの吐き捨てるような言葉
みんなの目が⋯⋯冷たい⋯⋯⋯⋯
その言葉は僕が教えたばかりの⋯⋯、異世界この世界になかった言葉
「いやいやいや、これは僕がやったんじゃなくてあの子がいきなり──」
こうして少女にキスされた僕は、少女ハンター(ロリコンハンター)という、不名誉なあだ名で呼ばれることになった⋯⋯
僕の異世界生活の変な幕開け
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