第3話

 二人のやり取りに、大方の話を理解した一同だが、そもそも何の話なのかそれが分からなければ話は進まない。

 藤田、新井、新井田は我関せずと言ったと所だろうか、二人の様子をただ黙ってみて様子を探っていた。

けれど、それは話が先に進まないと、相馬は恐る恐る二人の傍に行き話を切り出す。

 「あ、あの・・・」

 「何なの?」

池波の胸倉を掴みながら、明らかに不機嫌な表情と迫力の甲葉に相馬はおののくが、引き攣る笑みを浮かべて場を和ませようと試みる。

 「お、お二人のやり取りは、この際こっちに置いといて・・・」

 「おいて置くどういう事よ」

 「だ、だって、お菊・・・いや、会長代理は此処に用があって、出向て来たんですよね」

 「そうよ・・・あっ」

興奮していた甲葉は、相馬の言葉にハッとなり遣るべき事を冷静に振り返り、池波から手を放すと、冷静さを取り戻したらしく、仕切り直し化のように再び部員に目をやる。

 「そうですわね。業務をこなしに此処に来たのだし、話が通っていなければ、改めて話せばいいのだから」

 「そうですよ、くだらない事はチャチャと終わらして」

 「くだらない事って、何よ」

 「それは・・・、言葉の綾で・・・」

 「あんたは、何時も一言余計なのよ」

フンと、鼻息を鳴らしながら、藤田の方を向き話を切り出そうとする

 「あ~、怖かった」

 「相馬さん、大丈夫?」

 「う、うん、ありがとう庭山君」

庭山に、笑みを浮かべながらお礼を述べるが、何もしなかった3人はニヤニヤしながら相馬に目線を合わせていた。

 

 何で私が・・・、絶対あの3人私にやらせる気でいたわね・・・


 3人の行動パターンは分かっていたつもりではいたが、それではいつまでも進展しないのは問題なので、結果的に相馬が泥をかぶる羽目になっていく。

毎回毎回、同じことの繰り返しにうんざりし自分も傍観者になろうかと思うが、生来のの性か結局放ってもけない為、を恨めしく思う。


 そんな相馬の心情など知る由もなく、甲葉は無しを切り出す。

 「じゃ、改めて話をするわ」

 「どうぞ」

 「先日部員不足の事で、話をしたわよね」

 「しましたね」

 「期限内に部員を規定人数まで集めると」

 「ええ」

 「で、どういう経過になっているか、池波くんに様子を見に行かせたのよ」

 「なるほど、それで・・・」

 「部員がそろったと伺ったので、確認の為に今日こうして来たわけよ」

 「・・・なるほどね」

 たった、数行で事が終わる内容なのに、何でこんなにも縺れ合うのかと、いささか不意に落ちない様子ではあるが、事の発端が岡安である以上責任追及した所で意味がないのは、此処にいる全員分かっていいる事で。


 「まぁ、概要は理解しました」

藤田は、事態を飲み込めたのか、納得した様子で椅子に腰かけ、

 「でも、期間はまだでしょ?」

 「だから、一応規定人数がそろったのなら、部の存続を許可しようかと思ったのよ」

 「なるほど。だったら問題ないですよ」

 「そう。その言葉、嘘でなければいいけどね」

 「嘘なんてつくと思います?」

 「思うわ」

 「アハハ、ひどい言われようで」

乾いた笑いを響かせて入るが、目は笑ってはいない。

 「で、その新入部員は・・・何処?」

その言葉を待っていたのか、相馬と仁井田は庭山の手を携え甲葉の持ちに連れ出す。

 「はい、新入部員の庭山君です」

 「あっ・・・どお・・・」

いかにも何処にでもいるような十把一絡げな庭山を甲葉は、目の前に駆り出された彼を下から上に眺め、

 「ふ~ん」

 如何にも興味なさそうな表情をしながら溜息をつき、見た目とかをとやかく言う事ではない。

そもそも、この場では関係ないのだから。

この部室で見たた事もない生徒だから、元祖美術部とは無関係な生徒だろうし、身内の即席でもないだろうから問題はないと判断した。

 「まぁ、いいわ。彼を部員と認めましょう」

 「「「「やったー!」」」」

 生徒会会長代理のお墨付きを頂き、晴れて部の存続が確定したことにより、4人は喜びを分かち合った。

そんな様子に、池波は面白くないのか肩をすくめ、つまらなそうにしながら教室から退室しようとする。

 「じゃ、彼の入部届見せて」


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