第3話
「すまん、遅くなった」
クラスでの用事を済ませ、遅れてやって来た元祖美術部部員の3年生新井康智。
「困りますよ、甲葉会長」
「ひど~い!。あんまりです!」
「横暴だぞ~」
部室のドアを申し訳ないようにして開けると、部員と会長代理との怒号が飛び交う部室の中を見て、何事かと思い目を丸くする。
「何だ・・・?何やってるんだ?」
事情の分からない荒居は、何が起きていいるの把握できずその場に立ち尽くしてはいたが、何かさ察したのか岡安を見て、
「岡安先輩、また何かやらかしたのですか?」
「失敬な、私ではなくこのお菊がだな」
「だれが、お菊よ!」
「新井先輩、聞いてくださいよ」
「え・・・?」
「お菊会長代理が、いきなり元祖美術部を廃部にするといったんですよ」
「いい加減にして!」
声を荒げる甲葉会長代理を尻目に、目を潤ませながら祈るようにして、相馬は新井にすがるように近づく。
「廃部だ?。甲葉どういう事だ?」
「あら、新井くん。これにはちゃんと、理由があるによ」
興奮して、声を荒げる新井に、落ち着くよう両手を胸の前で上げ抑えるよう促す。
「ほほ~ん。では、その理由とやらを聞かせてもらおうか」
「うっ」
乗り出している岡安の顔を手で押さえ、
「分かりました。分かりましたから、顔を近づけない」
全員の注目が集まるのを確認して、
「こほん」
小さな咳払いで間を空け、落ち着いた所に本題を切り出す。
「本来でしたら、部活動として活動するには、最低人数である5名いないと活動できない事は知ってますよね?」
「だから、規定人数に達していない、此処に乗り込んできたんでしょ」
藤田部長が、扇子を畳みながら問に答える。
「ええ、本来なら規定人数に達していない部の活動は禁止なのよ。でも、これはあくまでも建前上の話であって特に問題なければ、定員に達してなくても生徒会の判断で、先生達には話をつけて廃部にする事はないのよ。普通ならば・・・」
「なんだ、じゃ問題ないじゃない」
ホッと、胸をなでおろす相馬を睨み、
「相馬さん、あなた人の話を聞いてなかったの?。”問題”なければの話よ。も・ん・だ・いなければよ」
「だから、問題なかろう」
岡安の問に、部員一同大きく頷き、何が問題あるのか不思議でいた。
「問題ありよ!」
そう言い放ちながら、本棚のゲームを何度も叩きながら、認識しろと言わしめる。
「さっきも言ったように、部としての活動らしき活動はしていない。それどころか、こんなゲームで毎日毎日遊んでばかりで・・・。これが、健全な部活動と言えますか!あなた達は!」
部員一人一人指を指し、反論できるなら言ってみろと、いわんばかりの笑みを浮かべる。
「とにかく二学期が始まるまでに、規定人数の5人に達していなかったら、廃部です」
やっと、言いたいことが言えて満足気な顔すると、副会長と書記を両脇に従えて部室から立ち去る。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます