第33話 姪の成長 ※ジュリー視点です

「あーあ、行っちまったよ……」


 追いかけようかとも思ったがやめた。

 俺が行っても何も出来ないからだ。

 精霊王が守ってくれる、か。

 きっと無事に帰ってくるだろう。



「はあ……」



 深いため息が出る。



「姉ちゃん、ユメコのこれからの事は任せてくれ」



 姉ちゃん……ユメコがいなくなって辛い思いするだろうなあ……

 なんだか申し訳ない気持ちになったがこうなってしまったからにはもうどうする事も出来ない。


 それにしてもこの世界に来てからユメコもしっかり成長したもんだ。

 ここに来た当初は失敗を若さで誤魔化すようなふわふわした現代の女の子って感じだったのに。

 いつの間にやら地に足をつけ、軸がしっかりした女に成長している。



「エディやリックのおかげかな……」



 それにしても……


 いかん、オッサンにやけてしまう。

 エディもしっかりと男だったんだな。

 まさかあのタイミングでユメコを抱きしめるとは。

 ご丁寧に顔に手まで添えて。

 こりゃ、しばらくこのネタで2人をからかう事が出来る。

 エディの事だ、今頃自分のした事に悩んでるかもしれんな……



「ぶふー!いいもん見せてもらったー」



 さて、シェルターにこもるか……うーん……正直ここでのんびり紅茶飲んでいても大丈夫な気がしてきた。

 きっとエディ達がなんとかするだろう。

 ユメコも援護するんだろうし。



「俺ってばどうしてこういう性格なんだろ」



 再度危機感を覚えるためにドアを開け外の様子を見る。

 また少し暗くなってきている。

 逃げる人々、走る馬車。

 ……いかん、他人事のように見えてしまう。



「あなたもですか?」

「ええ、何がなにやら」

「一瞬で治ったんです」

「私もです!」

「薔薇のドレスを着た女性でしたわ」



 あ、これユメコだな……

 小走りに逃げながら行く人行く人皆、怪我が治った話をしている。



「すげーなユメコ……」



 パタンと、ドアを閉める。


『美味しいアールグレイいれてね!』


 ユメコの言葉を思い出す。



「へいへい、高級茶葉用意しときますよ」



 うん、やっぱりここでお茶でも飲んで待っていよう。

 いつものカウンター内。



「若者達よ、ガンバレ」



 紅茶を淹れ、新聞片手にイスに座った。

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