第26話 約束の日1
「いらっしゃいませ」
エドワード様とロードリック様がいらっしゃる。
「俺チャイね」
ロードリック様はチャイがお気に入りである。
「俺は……いつもの紅茶を」
「はい!」
エドワード様はダージリンがお気に入りだ。
「そうだ夢子、俺らお前に色々聞きたい事があってさ」
ロードリック様はかなりフランクなお方で出会って2日目からいきなり呼び捨て&タメ語になられた。
別に文句は全くないのだがエドワード様と比べるとかなり対照的で笑ってしまう。
「なんですか?」
お茶を作りながらお話する。
「お前の好きな色、好きな食べ物とか……お前自身の事、お前の国の事を教えてくれ」
「ええと……」
何から答えればよいのやら。
「リック、彼女が戸惑ってる」
「んじゃまずはお前の好きな色から」
「ええと、赤……」
「食べ物は?」
「んー……い、色々あり過ぎて……」
カレー、イチゴ、トマト、おでん……沢山思いつくな……
「んじゃ好きな果物と甘いものは?」
「果物は……苺で、甘いものはチョコケーキかな?」
「へえ、夢子はチョコケーキが好きなのか」
はっとエドワード様を見てしまった。
微笑んでいる。
優しい瞳。
今私のこと『夢子』って呼び捨てにした……?
■□▪▫■□▫▪
目が覚めた。
帰宅してさらに泣きに泣いていつの間にか眠っていたようだ。
天井をぼんやりと見つめる。
初めてエドワード様が私を呼び捨てにした日の夢だ。
「エドワード様……」
ぽそりと呟く。
無事だろうか、ロードリック様も無事に帰って来てくれるだろうか。
まだ朝の5時だ。
こんな時間にお店に行くのは常識外だが……
「行ってみよう」
行けばその後どうなったかわかるかもしれないし。
急いで準備してお店に向かった。
■□▪▫■□▫▪
お店についたが誰もいない。
2階も確認したがジュリーは帰っていないようだった。
カウンター席に1人座る。
どうしよう、皆無事なのかな、大丈夫なのかな?
不安で心が押し潰されそうになる。
目に涙が浮かんでくる。
あんなに泣いたのにまだ泣けるんだな、私。
カタンと音がした。
立ち上がって音がした方を見るとドアが開き、ジュリーが入ってくる。
「夢子?」
「ジュリー!」
走って近寄り思わず抱きついてしまった。
「お前、ずっとここにいたのか?」
ブンブンと首をふる。
「1度家に帰ったよ」
「そうか」
ホッとした顔のジュリー。
「エディもリックも無事だったぞ」
「ほんと?」
「ほんとだって、あいつらピンピンしてたわ。それと夢子の紅茶、今回もしっかり効いたぞ。お前のおかげで死者も出ず、怪我人もゼロになった。すんげー効果だったぞ」
ニカッと笑うジュリー。
いつもの笑顔。
ああ良かった。
無事で良かった。
神様、いや、精霊王様ありがとうございます。
ほっとしたらまた涙が出てきた。
ヨシヨシとジュリーが撫でてくれる。
「今日は店閉めるから、お前はここでのんびりしてろ。昼過ぎにエディとリックが来るぞ。それから午後にはボールトン家の人が来るからな」
「はい?」
ボールトン家?
「エディがお前の紅茶飲んですっかり元気になってな、今日隊士達は休日になるし、俺も休みたいし、せっかく暇なら今日夢子と2人で食事しろと伝えておいたのよ」
「え、今日?」
「何か用事あったか?」
「いや、そういう訳じゃなく……」
「あ、ドレス!あれは用意しとけよ。家戻って取ってこい。俺は寝る。あー、あとキャタモール公爵もお前にお礼したいと言ってたけどそれは後日にしてもらったぞ。昼飯は俺が作ってやるから昼には戻れよ。んじゃな、おやすみー」
一気にしゃべり、大きなアクビをしながらジュリーはさっさと2階に行ってしまった。
え、嘘でしょ、いきなりディナー?
しかもボールトン家の人が来る?どゆこと?え?何事?と、とにかくドレス、ドレスを取ってこなきゃ……
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