第3話 赤髪の少女

 オレは突然手を握られ、少しドキドキする。女子と手を握るなんて、運動会のダンスの時以来だろうか?


 しかしキナミコウカと名乗るこの少女、顔こそカワイイものの、良く言えば個性的、正直な所、かなり非常識な女の子のようだ。

 例のギザ歯、おまけに角を生やした帽子から覗く髪色は、なんと真っ赤。さらに気が強そうな目にキラキラ輝く瞳は、やっぱり真っ赤。

 待てよ、言葉に訛りもあるし…。


「あっ、もしかして君、カープファン?」

「野球はカープに決まっとるじゃろぉ!」

「じゃあ、広島からこの学校へ?」

「今朝、こっちに着いたばかりじゃ」


 やっぱり。しかし、いくら熱の入ったカープファンだとはいえ、こんな成りで御出井学園の野球部が受け入れてくれるのか? カラコンまで入れて。

 まあ、そんな事、オレが心配する事でもないんだが。


「なぁ、雷児、ウチの角、どうじゃろぉ?」

「え、つ、角? あ、あぁ、カ、カワイイね」


 ついつい角に目がいっていたのかもしれない。コウカが突然角の事にふれる。

 どうもこうも、ガキじゃあるまいし角なんて生やしてんじゃねぇーよ。

 と言いたい所だが、とても言えない。


「ありがとう。角は鬼の誇りじゃけぇ、毎朝磨いとるんよ。でも、雷児の角かて、ぶちカッコええわぁ」

「オレの、角? え、角?」


 何言ってるんだ、この子? 

 とは思ったものの、その可愛らしい笑顔にオレもつい笑い返してしまう。言ってる事の意味がわからないが、何か、ホンワカとした雰囲気が漂う。


 程なくオレたちはグランドに着くと、そこにはすでにユニフォームに着替えた先輩たちが揃っていた。

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