第50話 メンバー紹介

「さーて。ほんじゃま、次回からの夏大に向けてメンバー紹介でもしとこうか」

 藤原が言う。

「そうですね。一年生の紹介もまだですし」

 側にいる紅寧が答える。

「おっしゃ。ほな、いってみよか。昨年と被るところもありますがご了承を」


 一番 センター 難波一輝(二年) 右投げ左打ち

 夏前にショートからセンターへコンバート。昨年はバスケ部からの助っ人だったが、今は野球部の活動が主。昨年、大味だったバッティングはこの一年で何とか改善。調子に乗ると大振りになる。基本的には足を生かした守備とバッティングが売りのリードオフマン。この男の出塁が得点の鍵。


 二番 セカンド 大西(三年) 右投げ右打ち

 キャプテン。安定感のある守備とバントが得意な職人気質の選手。リーダーシップがあるわけではないが、人一倍の真面目さと誠実さでチームを背中で引っ張ってきた。皆から信頼されるキャプテン。大西の力を生かすためにも、難波には何としても出塁してもらいたいところ。


 三番 ピッチャー 春野大智(二年) 右投げ右打ち

 ノビのあるストレートが持ち味。チームの中心であり、絶対的エース。一年かけて鍛えてきた体力と下半身のおかげで安定感も増した。まだ伸び代も感じられる。持ち球であった縦横二種類のスライダーの

 キレにも磨きがかかってきた。昨年のような不安要素はない。あるとすれば、勝ち上がっていった時の連投だけ。バッティングも下半身が安定したおかげで飛距離が伸びた。変わらずチャンスにはめっぽう強い。


 四番 ファースト 上田刀磨(二年) 左投げ右打ち

 故障した右投げから左投げに変更。一年間、焦らずに練習できたおかげで、守備は問題なくこなせるようになった。昨夏からの一年、間違いなく誰よりもバットを振っていた。強豪校でも四番を張れる実力をつけたと言っていい。今、一番信頼りになる右のスラッガー。


 五番 キャッチャー 大森哲也(二年) 右投げ左打ち

 小柄ながら全身を使ったパンチのある打球を飛ばす、左の中距離ヒッター。弾道が低いのでホームランこそあまりないが、鋭い打球で外野の間を抜く。持ち前の高い野球脳でチームを引っ張る。


 六番 ショート 遠藤 (一年) 右投げ左打ち

 期待のルーキー。一年の中で最もセンスを感じる選手。将来的には三番を任せたくなる巧打者タイプ。


 七番 ライト 加藤 (三年) 右投げ右打ち

 ただ振るだけだった昨年のバッティングを一年かけて改善。バットにボールが当たるようになった。ただフライが多い。使う方としては一発狙いの博打的なところも……。相手に威圧感与えられたらなお良し。


 八番 サード 岡崎(一年) 右投げ右打ち

 大智の中学からの後輩。これといった特徴があるわけではないが、何事も無難にこなす。


 九番 レフト 大橋(三年) 左投げ左打ち

 足が最大の武器。大智のピッチング練習に付き合い、選球眼に磨きをかけてきた。加えて。力のなさを補うために、内野と外野の間にボールを落とすバッティングを習得。盗塁の技術はチーム一。


 背番号十 岩田(一年) 投手 右投げ右打ち

 背番号十一 吉川(一年) 投手 左投げ左打ち

 背番号十二 青木(一年) 捕手 右投げ右打ち

 背番号十三 林(一年) 一塁 左投げ左打ち

 背番号十四 藤本(一年) 二塁 右投げ左打ち

 背番号十五 谷本 外野(一年) 左投げ左打ち

 背番号十六 木下 外野(一年) 右投げ右打ち

 背番号十七 久保(一年) 外野 右投げ左打ち


「以上、十七名。いやはや、なかなか良いチームじゃないの」

「ちょっと、監督! 一人、忘れてませんか?」

「へ?」

 首を傾げる藤原。

 そんな藤原を紅寧がギロッと睨む。

「あぁ、すまん、すまん。こちらスコアラーとコーチ、情報収集から分析まで兼任する敏腕美人マネージャーの黒田紅寧さんです」

「どうも敏腕マネージャーの黒田紅寧です」

 紅寧はペコリとお辞儀をする。

「今更紹介する必要あった? 最近、結構出てるよね」

「はい。でも、私だってちゃんとチームの一員ですよ。ベンチ入りもするし。みんなと一緒にちゃんと紹介してもらわないと」

 紅寧は頬を膨らませて怒っている。

「わかった、わかった。すまんかった」

 藤原は紅寧の怒りを抑えて、一つ咳をした。

「それでは改めまして。千町高校野球部、以上、十八名でした! これでいい?」

「OKです!」

 紅寧は笑顔でOKマークを藤原に送った。

 藤原はふーっと一つ息吐く。

「さて、あとはこの大会で二人の一年生ピッチャーをどこで使うかだな」

「ですね。監督の腕の見せ所ですよ」

「だなー」

「初戦はどうするんですか?」

「初戦は当然、春野で行く。いきなりこけるわけにはいかんしなぁ」

「となると……、二回戦が無難なところですね」

「そうだな。三回戦だといきなりシード校、もしくはそのシード校に勝ってきた相手に投げることになるしな。流石にいきなりそんな相手に投げるのは気が重いだろ。とりあえず二回戦で一度は使っておきたいな」

「わかりました。じゃあ、二人にはそのつもりで準備しておくように伝えときますね」

「おう。よろしく」

 さてさて、間もなく二年目の夏本番です。

 どうなることやら……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る