第二話 旅立ち <1>



 僕が旅立ちを決めたあの日から、三日がたった。


 僕は胸を躍らせながら旅立ちの準備を進めた。

 干した肉を分けてもらい、持っている服をと野宿用の道具をバッグに詰めた。


 そして腰には――剣の姿になっているジャンヌを挿している。


 旅の軍資金は、村で集めたものを行商人に売って稼いだお金だ。

 村ではお金を使うことがほとんどなかったので、街で1ヶ月はなんとか生活できるくらいの金額が溜まっていた。

 仕事を見つけて生活を安定させるまでは、なんとか食いつないでいくことができるだろう。


「それじゃぁ、行ってくるよ」


 僕は村長に言う。

 村長は、僕の手をとった。その手は、前よりもすこしシワが増えていた。


「もし生活に困ったり、疲れたらいつでも戻ってきなさい」


「うん。ありがとう」


 物心つかないころに戦争孤児になって、この村で育った僕にとって、村長は本当に父親同然の存在だ。

 旅立ちは、ずっと夢見てきたことだったが、それでも村長と離れ離れになることには、思うところもあった。


「じゃぁ、僕、いくね」


 涙を流れてこないうちにと、僕は家を出る。


「気をつけてな」


「うん」


 僕は踵を返して、村の大通りを歩く。


 すると、村の人たちが家のまえで見送りをしてくれた。


「元気でやれよ〜」


「いつでも帰ってこいよ」


 そんな風に、次々と温かい言葉をかけられる。

 旅立ちたいという思いは小さい頃からずっと持っていたが、この村が嫌いだっのではないと改めて実感した。

 

「必ず、すごい剣士になって、この村に帰ってくるよ」


 僕はそう宣言して、村を後にした。


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