第一話 使役の力 <5>

 †


 その日、村人たちが僕のためにと宴会を開いてくれた。

 大人たちは貴重な肉を使って料理を作ってくれて、村の子供たちも僕のことを英雄だと、褒め称えてくれた。


 今まで僕は村長の家で働いているただの戦争孤児でしかなかった。できることと言ったら雑用くらいで、村の役に立ってるなんて土手も言えなかった。

 でも、今日生まれてはじめて、誰かの役に立つことができた。

 誰かを助けることができたのだ。

 それが何よりも嬉しかった。


 そして、宴が終わり、村長とともに家に帰る。


 その頃には、僕の一つの決意をしていた。


 家に入ったところで、村長を呼び止めて少し話をしたいと申し出た。


「村長。僕、冒険者になりたいんだ」


 それはもしかしたら突然のことに思われるかもしれない。

 だが、剣士になることは、子供の頃からずっと夢見てきたことだった。


 親を戦争と魔物の襲撃で失った。

 だから、僕は自分の剣で、誰かを守れる存在になりたかったのだ。


 そして、僕にその力があるとわかったのが、たまたま今日という日だったというだけのこと。

  

「世界を回りながら、魔物とか戦争に苦しんでる人たちを助けたい」


 村長には、今まで僕をここまで育ててくれた義理がある。

 だから、仕事をほっぽり出して、村をでることには、もちろん抵抗があった。

 だけど、やっぱり剣で人を救ういう夢は捨てられなかった。


 だから、ダメもとで聞いてみたのだ。


 ――と、村長はふっと笑って答える。


「お前の好きにしなさい」


「……村長っ!」


「別に私にお前を縛る理由はないよ。お前にはその力があるんだから、存分に力を発揮すればいいさ」


「……ありがとう」


 こうして、僕は冒険の旅に出ることになったのだ。



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