第12話 『父』 その2
製鉄所の、溶けた鉄が飛び交う、かなり危険な場所での仕事をしていた父です。といっても、現場を見たことはありませんが。
むかし、ある、子供向けの科学雑誌の冒頭記事に、父の写真が使われたことがありました。
その雑誌は、ぼくが高校生くらいまでは、持っていたのですが、その後、何故だか、行方不明になっています。
製鉄所は、製糸工場とともに、日本の産業革命の立役者でした。
日本は、イギリスやフランスのように、自主的な産業革命は出来なかったので、明治政府による、官制の産業革命を行って、まずは成功した部類に入ります。あまりに、急速にやったものですから、内部に沢山の歪みが生じてしまった側面がありました。公害問題などもそうでしょうし、官民の癒着や、労働者の低賃金などは、未だに引きずっているようです。
父は、高等小学校しか出ていません。
最初は、満州の製鉄所で働き、終戦後は、国内に引き上げて、内地の製鉄所に入りました。
叩き上げの、現場一筋のひとですが、勉強は好きだったとみえ、たくさんの資格も取り、そうした立場のひとのなかでは、最高位にまで上がったひとでした。ただし、一流大学を出たエリートは、5年くらいで、簡単に、父を追い越して行きましたが。こういうのは、大企業も、官庁も似たようなものだったようです。
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『老い乱』 やましん(テンパー) @yamashin-2
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