第9話 『大パーティー』
さて、父が亡くなった後、その母に与えたショックの大きさは、はかりしれません。
表面的には、平静をよそおっていたのですが、その後、周囲に対する攻撃行動がだんだんエスカレートしたことからも、その大きさは大変だったことが分かります。
ただ、ある意味、重しがなくなったと申しますか、なんとか抑えていた母の衝動を、もはや抑制する者がいなくなったといいますか、その後、多少なりとも、母に言う事をきかせることができるものは、やましんただ一人となった、と言えます。
母の兄妹や、私のいとこなどが、母の長電話のあいまに、『お嫁さんの実家に苦情言ったりは、それはやっちゃだめなんだよ』、『しんくんが(やましんですが)、出世できなくなるよ』(ま、実際、そうなったわけですが、そこは、本人の実力がなかったということで、まあ、帳消しか。)とか、さかんに言い聞かせ、当初の内は、なんとか『そうかなあ・・・』と、答えていたようですが、それも次第に効果が薄くなりました。
あるひ、『おとうちゃんの偉大さを分かってもらうために、近所の人を集めて、パーティーをするから、準備して。』とか、言い出しました。
確かに、父が、私とは比べ物にならない、偉大な人であることは否定しません。
戦争の影響もあり、小学校しか出してもらえず(高等小学校と言われる旧制の学校ですから、今でいえば、中学校です。)、満州に渡り、働きながら勉強を積み、難しい資格を取っていって、学歴がない人としては、勤務会社(大企業なんです)で可能な最高位まで行ったのですから、まあ、立派と言えば、立派なんです。
しかし、母が思うように、社会的な地位が高いとは言えません。
〇京大学とか、京〇大学とか出たエリートさんは、5年もかからずに、父を追い越してゆきます。(それは、やましんも、同じでしたが。)
それに、母自身が、ご近所のやっかいものになっていたので、集まってくださる人も、少ないと予想されましたし、私は、即座に『いやだ』と、言いました。
しかし、今になって考えると、多少は、やり方があったのかもしれません。
欧米のような、『バーベキュー・ぱーてぃー』とかが、習慣的な行事になっていれば(そういう方も、いらっしゃいますので。)やりやすいのですが、そういうこともなく、第一、そういう庭もなく、火事になるだけですから。
でも、さらに昔は、路地裏が並ぶ都会に住んでいたので、しちりんとかで、干物の魚を焼いて、ご近所でいただいたものですから、まだ、そのほうが、やりやすかったかもしれません。
もしかしたら、なにか、方策があったかもしれません。
そのあたりは、もうすこし、私が策士で、機転がきけば、良い方法があったのかもしれませんが。
いずれ、ずばっと拒否してしまったことは、母の内部に禍根を残したことは、確かでしょう。
********** 🌻 🌷 🌷 ******** つづく
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