第2話クラス委員
目を開けると、いつと何一つとして変化がない天井が見えた。窓を閉めているというのに蝉の鳴き声が聞こえている。
「あっつい。」
よく晴れた朝だ。少しの間だけ太陽も夏休みに入らないものだろうか。『コンコン』と音がした。また、加藤さんかな。
「どーぞ。」
控えめにドアが開いた。高校生くらいの女の子が立っている。誰。
「あ、私、クラス委員の橘和、、、です。」
ああ、加藤さんがそんなこと言ってたな。
「何しに来たの。」
「えっと、その。楓君にクラスの事とか話したいなって。思って。」
なんだ、それ。その前に、なんだ、こいつ。クラス委員といえば明るくてワーワーキャーキャー言ってんじゃねーのか。だめだ、こういうのに免疫がないからなんか変な感じがする。
「別に、興味ないから。」
そう言うと橘は少し暗い顔になった。
「そっか。そうだよね。じゃ、私帰るね。」
は。何だ、帰ってほしいはずなのに引き留めようとしている。
「おい、待て。」
橘の肩がビクッと跳ねた。
「それ、学校のノートか。」
「え、あ、うん。なんか、先生が渡せって。」
「なら渡さねーと、お前が怒られるだろ。」
「そうなんだよね。」
困ったように笑った橘は可愛さが2割増しになっていた。
「ん。だったらよこせ。」
「え、良いの?ありがとう。」
変な感覚が僕の心に広がった。これ以上の関わりは僕にとってなんだか危険な感じがする。
「今日は、もう帰れ。きっと親も心配してんだろ。」
「えっと、、、楓君は優しい人なんだね。心配してくれてありがとう。また、来るね。」
・・・ん?今なんて言った。この僕が、優しい、、、だと?っていうか僕はいつ橘の心配をした。それに加えてまた来るだと?突っ込むタイミングを逃してしまったので僕は無言を貫くしかなかった。でも、また来るっていう言葉にはそれほどの不快感はなかった。なんだ、僕は橘に来てほしいのか、会いたいと思っているのか。
「次に来るときにノートを返す。だから、ノートをすぐに返してほしければさっさと来いよ」
って、僕は何を言っているのだろう。橘はその言葉を聞いて笑顔で「楓君の事も知りたいからすぐに行くね!!」と言った。なんか、花でも咲いたみたいだな。橘は何かを思いついたようで、メモ帳に何かを書いて僕に渡した。
「なんだこれ。」
「私のLINEと電話番号。ま、LINEさえ知ってれば大丈夫なんだけど一応、ね」
か、可愛い。と思ってしまった僕は今、頭が相当やばい状態だと思う。加藤さんが来たら一回検査をしてもらった方がいいかもしれない。
「じゃ。またすぐに。」
またすぐに。という言葉が僕の脳内で何回も再生されていた。
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