霜月二十八日「詳細」

十一月二十八日(令和元年、二〇一九年)木曜 曇り


――――――

『てにをは辞典』

編者:小内 一{おない はじめ}

出版社:三省堂

定価:3,800円+税

発行日:2010年9月17日

――――――――――


## 見返し

 表紙の見返しには、五十音索引が掲げられている。また、彩りを添えるかのように、世界各国の絵文字が散りばめられている。

 巻末の見返しも同様。


## 本文の手前まで

 まず、編者による「はしがき」がある。その次に、凡例。

 以上、おしまい。とくに、目次などない。


## 本文

 本文の一ページ目「あ」を見ると、絵文字が紹介されている。この絵文字は、見返しに添えてある世界各国の絵文字だ。

 ということは……。

 ページを繰っていくと、五十音のア行、つまり「あ、か、さ、……、や、ら、わ」の各ページに、世界各国の絵文字が、紹介されている。

 五十音すべてのページにわたって、紹介されていると思った。しかし、その紹介があるのは、ア行のみだ。イ行からオ行の各ページには、紹介はない。すなわち、絵文字の紹介は、「あ、か、さ、……、や、ら、わ」の各ページの十個のみだ。

 五十音すべてに、世界各国の絵文字が紹介されていると思ったのに……。しょっぱいよ。

 肝心の本文は、出版社の紹介のとおり、名だたる作家の文章が、切り取られて載っている。それを、五十音順に引く。

 おしまい。


## 巻末

 採集された数々の書籍名が、掲げられている。併せて、作者名と訳者名も記されている。

 それ以外、とくに、なし。索引なし。テーマ別の索引も、なし。


## 総括

 映画『バイオハザード』のDVDの特典映像で、マリリン=マンソンが、次のように言っている。


「作曲家を含め 音楽に関わる人間なら――」

「しちゃいけないことがある」

「自分の引き出しにない音を 作ろうとすることだ」

「その人のサウンドを 素直に出すのが大切だよ」

「この映画のサントラでも――」

「一番 心がけた事さ」

「リンチの映画を見れば よく分かるだろう」

「『エレファント・マン』は 単調音で構成されている」

「『ブルーベルベット』もだ」

「自分のスタイルを 持ち続けるのが大事なんだ」


 これらの言葉が、すべてだと思う。八年前後もこの辞典を所有して、ようやく悟った。

 人の引き出しにある言葉を借用しても、なんにもならない。

 『てにをは辞典』三省堂、は、紙クズ辞典と化した。


さらば、「3,800円+税」よ


 この恨み、死ぬまで忘れない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

その、愛すべき辞典たちよ 大野城みずき @oonojou_mizuki

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ