第5話 楽器店

 午前九時半。スマートフォンのアラームが鳴り響いていた。

 ゆうは眠れないまま朝をむかえた。アルバイトに出勤するまで、あと二時間。アルバイトに行く気分ではなかったが、行かないわけにもいかなかった。

 悠木はアラームを止めると、起き上がった。眠気も疲れもさほど感じなかった。未だ収まらない緊張が、それを上回っているのかもしれない。

 洗面所で顔を洗う。洗面台の栓をし、左手を冷水を浸してみたが、痛みは小さくなっていた。たいしたことではなかったのだと、今にして思う。

 悠木は眼を閉じた。昨夜、博多の街中で中年の男を締め上げようとした。覚醒剤の売人と思われる男で、今永が覚醒剤のルートを手に入れようとしたのだ。

 いつものように今永が男をぶちのめすだろうと思っていたが、逆に今永が倒された。腹と顎に一発。それで終わりだった。信じられないことが起きたと思った。

 今永を倒した男がこちらを振り向くと、隣にいたよしが逃げ出した。悠木はその場にへたり込んだ。逃げることもできなかったのだ。

 男に脅され、今永がしようとしていたことを吐いてしまった。煙草の火。軽く当てられただけだった。半日で痛みすら消えてしまう、その程度のことで吐いてしまった。自分が弱いのだと、思い知らされることになった。

 強い男になりたかった。悠木にとって、今永は強い男だった。

 今永と出会ったのは、今年の春だった。悠木は高校二年の冬に高校をやめ、特になにをするでもなく、ぶらぶらとしていた。

 中学の先輩だった吉田から、今永が兵隊を集めているということで、悠木にも誘いがきた。吉田とは中学の頃に親しかったし、一緒に荒っぽいこともしていたので、声をかけられたのだろうと思った。時間はいくらでもあったし、参加することにした。

 今永は吉田の高校の先輩で、歳は離れていたが同じ高校の縁があり、知り合いだったらしい。

 なかの川沿い、繁華街に近い広場に集合した。初めて見る今永は、どこにでもいるような男に見えたが、どこか異様な眼の光を感じた。

 集まったのは、今永を入れて八人だけだった。吉田から相手のグループは三十人はいると聞いていたので、いくらか気後れを感じた。それでも、この今永という男と一緒ならきっと大丈夫だろうと肚を据えた。

 今永に連れられて、繁華街の一角にあるビルに着いた。四階建てのビル。すべてのフロアに、いわゆる水商売の店が入っているようだった。水商売の店といっても入ったことはないので、ドラマや漫画で見た店のイメージしかない。

 ビルに入り、エレベータホールを抜けると、奥にある階段の前で今永が立ち止まった。

 駆けるぞ。今永はそう言うと、駆け出した。

 悠木は一瞬あっけにとられたが、すぐに今永の後を追った。必死に追ったが、今永の姿は見えなかった。ただ、足音が聞こえるだけだった。

 四階にたどり着くと、今永が店の扉の前で息を整えていた。他の六人も、一人ずつ上がってきた。

 今永が一歩後ろに下がり、扉を顎でしゃくると、一番後ろを駆けていた男が前に出てきた。男はドアノブに手をかけると、今永の方を見つめた。ひと呼吸置き、今永がうなずくと、同時に男が扉を開いた。

 悠木の眼に、店の光景が飛び込んできた。大きいビルだとは思わなかったが、店の中は広かった。十人や二十人どころではない客が入るのだろうと思った。悠木のイメージでは、飲み屋とかバーとかではなく、キャバクラというのが近かった。そして中には、二十人ほどの男たちがいた。店の客ではなく、自分たちを迎え撃とうとしているのだとわかった。

 中にいた男たちが一斉にこちらを振り向いた時、今永は入口の近くにいた男をひとり、殴り倒していた。それを合図に、店の奥にいた男たちがこちらに殺到した。

 吉田が悠木の後ろから飛び出していくのが見えた。一瞬遅れて、悠木と他の男たちも店内になだれ込んだ。

 ひとりの男と向き合った。歳は、おそらく悠木とほとんど変わらない。先に男の出した右の拳が悠木の左頬を打った。油断しているつもりはなかったが、かわせなかった。それでも、一発喰らっただけだ。口の中に血の味がしたが、気にしなかった。中学の頃は、よくこんなふうに殴り合いをしていたことをなんとなく思い出した。お返しとばかりに、悠木は右の拳で男の頬を打った。続けて顎に一発。それで相手は倒れた。喧嘩は強い方ではなかったが、それなりに慣れているという自信はあった。

 奥を見ると、今永がひとりで突き進んでいた。既に、四人は倒しているようだった。相手の男たちが、今永ひとりに圧倒されている。そんな男がいるということが、悠木には信じられなかった。

 悠木が足元に倒れた男を乗り越えて前に出ると、今永の少し手前にいた吉田が、こちらを振り向いた。

 後ろだ。吉田と眼が合った。自分のことだと気がつき、振り向くと酒瓶が眼の前に来ていた。瓶の割れる音と、額への衝撃。その感覚とともに、悠木の記憶は途切れた。

 気がつくと、ソファの上に横たわっていた。店の中は閑散としていた。終わったのだと、悠木は思った。

 吉田が店の奥から出てきた。どうやら頭を打たれ、気を失っていたらしい。吉田の話によると、悠木は瓶で頭を殴られ一度は倒れたが、起き上がり相手をぶちのめして、また倒れたのだという。既に痛みも感じていなかったので、どこか実感がなかった。

 具合が悪くなったらすぐに病院へ行け、という吉田の声を背に、悠木は家に帰った。

 二日後、今永が礼を言いたいのだと、吉田から連絡がきた。幸いにして、病院に行くことはなかった。

 呼び出されたのは、二日前に訪れたビルにほど近いホストクラブだった。今永が経営しているのだと、吉田から聞いていた。

 吉田に言われた通り、入口にいた黒服に名前を告げると、店の奥へと案内された。

 扉を開くと、部屋の真ん中にある高価そうなソファに今永が座っていた。隣には吉田もいた。テーブルの上には何本かの琥珀色の酒瓶と、氷を入れるケースのようなものが置いてあった。酒はウイスキーなのだろうと思った。飲んだことはないが、水や氷を入れて薄めて飲むものだということは知っていた。

 今永は笑みを浮かべると、自分の向かいに悠木を座らせた。ソファの感触は悪くなかった。

 やるじゃねえか。テーブルの上に置いてあった酒瓶を掴みながら、今永が言った。今永は瓶の封を開けると、ケースの中に酒を注ぎはじめた。ケースのかさが徐々に増していくのが見えた。

 最後の一滴まで注ぎ込むと、テーブルの上を滑らせ、悠木の前に差し出した。

 勝利の美酒だ。今永は笑みを浮かべたままだった。吉田は、困惑したような笑みを浮かべていた。

 悪意は感じなかった。それでも、試されている、という気がした。

 悠木は両手で無造作にケースを掴むと一気に持ち上げ、口をつけた。喉を灼く感覚。氷が鼻に当たり、ひどく冷たかった。それでも、一息で飲み干した。ケースから氷が、がらがらと転がり落ちた。

 吉田が眼を丸くしていた。今永もまた、意外そうな顔をしていた。

 初めて飲んだウイスキー。味もよくわからなかった。ただ冷たく、喉を灼くという感覚だけだった。

 不意に、身体が熱を帯びるのを感じた。酒を飲んだのは初めてではないが、これまではたいした量を飲んでいなかったのだと思った。

 急激な身体の変化に耐えきれず、悠木は雄叫びを上げた。吉田はやはり、眼を丸くしていた。

 それを見た今永が、大きな声で笑った。

 いいな、おまえ。気に入ったよ。今永は立ち上がると、悠木の肩を抱いた。

 結局その日は、朝まで今永に付き合わされた。終始、今永は上機嫌だった。少なくとも、悠木にはそう見えた。

 帰る時、今永に封筒を手渡された。

 礼だ。今後とも、よろしく頼む。そう言うと今永は、近くの駐車場に停めてあった車に乗り込み、颯爽と帰っていった。

 封筒の中には金が入っていた。二十万。これまでアルバイトもしたことがなかった悠木にとっては、考えられない大金だった。まっとうに仕事をしていても、1ヶ月では稼げない額だということは、なんとなく知っていた。

 それからも何度か今永の仕事を手伝った。もらえる金はまちまちだったが、ただアルバイトをするよりは割がいいと思えた。

 悠木は眼を開けた。洗面台から水が溢れそうになっていた。蛇口をひねり、水を止める。疲れた顔が鏡に映った。やはり、アルバイトに行く気分ではないのだと、また思った。

 その思いを振り切るように、悠木は着替えると家を出た。食事は途中でとればいい。アルバイトに行くのに、特に用意するものもないのだ。

 歩いて五分もしないうちに、チェーンの牛丼屋に辿りついた。特別好きなものでもなかったが、なんでもよかった。ただ、なにか食べたかった。結局食券を買ってから食い終わるまで、二十分もかからなかった。

 店を出ると、腹が満たされたからか眠くなってきた。これからアルバイトをすることを考えると耐えがたいので、途中のコンビニに入り、コーヒーを買った。

 コンビニを出ると、店の前の喫煙所で煙草に火をつけた。

 ひとつ吸い、吐き出す。続けてコーヒーを開けて、一口飲む。眠気覚ましにきくと、今永がやっていたことだった。

 煙草をくわえながら、悠木は空を見上げた。晴天だったが、気温は高くない。カットソーとジーンズの組み合わせだと、帰りの時間には少し冷えるかもしれない。そろそろ冬物を買う頃かと、悠木は思った。

 職場に着いたのは、十時半を少しすぎたところだった。福岡駅の南側。中央の通りにある楽器店。店長が今永の友だちだったので、今永の伝手で雇ってもらった。楽器について、悠木はギターを少し触ったことがある程度だったが、店長にはこれから覚えていけばいいと言われた。

 裏口から従業員の控室に入ると、吉田と出くわした。控室のパイプ椅子に、うずくまるように座っていた。吉田も同じように、この店でアルバイトをしている。

しょう

「おはよう」

 吉田は、なんとなくといった感じで頷いた。吉田の顔色も、いくらか悪かった。

 昨夜、倒れた今永をどうしたものかと考えていると、吉田から電話があった。

 すまない。逃げちまった。今、車を持っていく。それだけ言うと、吉田は電話を切った。

 十分もしないうちに、今永の車が現れた。運転していたのは、吉田だ。吉田は今永の運転手のようなことをやることもあり、スペアキーを渡されていた。

 すまない。二人で今永を担ぎ上げた時に、吉田はもう一度、呟くように言った。

 今永を車に乗せ、今永のマンションに着くまで、吉田は一言も喋らなかった。

 今永は、マンションに住む直前に眼を覚ました。今永もまた、なにも言わずに降りていった。

 吉田は悠木を家まで送ると言ったが、悠木は断った。十分に歩いて帰れる距離だったし、少し街を歩きたい気分だった。吉田は車を駐車場に止めるので、悠木は先に降りて帰った。

「俺は昨日、眠れなかった」

 悠木の方を見ずに、吉田が呟いた。悠木はスマートフォンと財布をロッカーに入れ、鍵をかけた。仕事中にスマートフォンを使ってはならない規則は無いが、さほど使うこともなく、かさばるのでいつもロッカーに入れていた。

「俺は高二の時に、今永さんと知り合った。初めて今永さんを見て、とんでもない人だと思った。世の中にはこんな人がいるんだと驚いたよ」

「ヨシ君は、何年か前から今永さんを知ってるって聞いたな。けど、詳しい話は聞いたことがなかったと思う」

「ああ、俺もあんなに強い人になりたいと思ったんだ」

 吉田が顔をあげ、悠木の方を向いた。その思いは、悠木と同じだと思った。突っ張った男にとって、強さとは全てに優先されるものだった。

「俺たちの高校のやつが、別の高校のやつと揉め事を起こした。おまえも知ってるかな。ハクヒ、はかひがしこう

 博多東高校。あまり柄のよくない学校だということは知っていた。

「揉めた理由は、なんだったかな。女を取り合ったとか、バイクで煽られたとかだったかな。まあ、あの頃は頻繁にそんなことがあったから、細かく覚えちゃいないんだが。そんな中でうちのやつが相手をひとりぶちのめした。そうしたら今度は報復として、やつら自分らのOBを出してきてな。それが剣道の有段者だの、元レスラーだの、よく集めたなって感心するくらい、オールスターみたいな連中だった」

 ありそうな話だった。中学や高校の頃は、悠木もそんな毎日を送っていた。いや、今もあまり変わらないかもしれない。

「そこに、今永さんが?」

「ああ、一個上の先輩の兄貴の友達が今永さんだったんだ。今永さんもうちの高校のOBで、母校の後輩の危機ってことで来てくれたんだ。それでやつらを迎えたんだが、俺たちはなにもできなかった。今永さんが、ひとりで倒しちまった」

 吉田の眼に、先ほどまではなかった光が宿っていた。吉田にとって、忘れられない記憶なのだろう。

「それからも、俺は何度か今永さんと一緒に戦った。その度に、今永さんのようになりたいと思った」

「強い男、か」

 一瞬笑みを浮かべた吉田がうつむいた。

「昨夜は」

 吉田が絞り出すような声をあげた。

「俺は、なにもできなかった。今永さんも、なにもできなかったと思う」

 見てはならないものを見てしまった。起きてはならないことが、起きてしまった。悠木と吉田が、共に抱いた思いだろう。自分の信じていたものを、失ってしまった。ただ、悠木にとっては、吉田ほどには今永が絶対的な存在ではなかったのかもしれない。付き合いの長さ以上のなにかが、吉田にはあったのだと思う。

「時間が必要かもしれないな。俺にも、ヨシ君にも」

 悠木は、軽く伸びをしながら言った。

「世の中には、とんでもなく強いやつがいる。そう割り切るしかないのかな」

「翔太」

 吉田が、悠木を見つめていた。その眼から、光は失われてはいなかった。

「俺は、強くなりたい。今でも少しは強いかもしれないかもしれないけど、こんなものじゃない。今永さんよりも、昨日のおっさんよりも、強くなりたい。あんなおっさんなんか、片手でひねれるくらいに」

 吉田が立ち上がった。

「すぐに立ち直ることはできないかもしれない。今、なにをすればいいかもわからない。ただ、強くなる。それだけは、決めた」

「ああ、その気持ちは、俺も同じだ」

 吉田が笑った。悠木もつられるように笑っていた。

 吉田が左腕につけた時計を見やる。

「行こうか」

 吉田に続き、控室を出た。店内に入ると、店長のおおがレジの用意をしていた。

「おはようございます、店長」

「ああ、おはよう」

 太田が振り向き、応えた。後ろで束ねた長髪が揺れた。始めて出会った時から、印象的な髪だった。

「二人とも、疲れてるな。また、今永の手伝いか?」

「ええ、まあ」

 吉田が微かに笑みを浮かべながら応えた。

 太田は二人が今永の仕事の手伝いをしていることを知っていたが、どんなことをしているのかは知らなかった。知る必要はないと考えているようだった。

「若いからって、あんまり無理はするなよ」

 太田がレジに眼を落としながら言った。

 悠木は店内を歩きながら見渡し、棚を確認する。

 朝、開店前に在庫の補充をする。それが、このアルバイトを始めてから、悠木に任せられた仕事だった。補充するのは、ギターの弦など消耗品がほとんどだった。仕事には慣れてきたので、毎日どの商品がどのくらい減っていくのかは、なんとなくわかるようになっていた。

 不足している商品を確認し、在庫を探しに倉庫を行くと、見慣れないダンボールが高々と積まれていた。

「店長、これは?」

 悠木はダンボールを一つ抱えて持ち出すと、太田に尋ねた。

「ああ、ピックだよ。」

「ピック?」

 ピックはギターの演奏に使うものだが、それほどの消耗品ではない。あのダンボールの山を見ると、違和感はある。

「今週末にドームでライブがあるだろ?そのミュージシャンの使ってるピックだ。ピックと言っても、演奏に使うというより、グッズという方が近いか」

「ああ、そういえば」

 最近、街のあちこちでライブのポスターや広告が掲示されているのを見ていた。ドームでライブをするミュージシャンは珍しくはないが、特別宣伝が多いようには感じる。

「しかし、奥のダンボール、全部さばけるんですかね。すごい量ですよ、これ」

「それが、グッズとしてかなり売れるんだよ。一枚あたり百円とかだから、十枚二十枚と買っていくファンも珍しくないんだ」

「へえ、そういうことも考えるのか」

 楽器店だからといって、ただ楽器や部品を売っていればいいというものではない。この店でアルバイトを始めて、悠木にとって学ぶことは多かった。

「おまえにはいないのか、好きなミュージシャンとか、バンドとか?」

「それが、これといっていないんですよね。最近SONIAのCDを買いましたが、テレビで耳にしてなんとなく気に入ったというだけで、特別好きだというわけでもないし」

「これを機会に、そのミュージシャンを聴いてみたらどうだ。ピックだけじゃなくて、CDも売るんだ。社割してやるよ」

 太田が笑みを浮かべた。

「店内でガンガン流すんでしょう。仕事してりゃ嫌でも耳に入ってくるんだから、気がついたら好きになってるかもしれませんね」

 悠木は苦笑した。

「今日からは、ピックの補充も忙しくなるぞ。このミュージシャンには、熱狂的なファンも多い。ダンボールごと売ってくれ、なんてファンが来るかもしれないな」

 太田が声を上げ、笑った。

「さて、開けようか」

 太田が特集コーナーに置いてあった再生機器を操作し、ディスプレイに映像を流した。同時に大音量で楽曲が流れ出す。これからしばらくは毎日、繰り返し聴くことになるだろう。

 吉田が入口の鍵を外し、ドアを開いた。ドアは閉めずに、開け放しておく。その方が客が入りやすいのだと、太田が言っていた。

「おそらく昼過ぎまでは、暇だろう。俺は奥で作業をしてるから、補充と接客を頼む。もしなにかあったら、呼んでくれ」

 店のノートパソコンを抱え、太田は奥に入っていった。

 開店時間を過ぎたが、まだ来客はない。平日の昼間なので、太田の言うようにしばらくは暇なのだろう。

 吉田が壁に吊るしてあったギターを取り、メンテナンスを始めた。吉田は高校のときにギターを始めており、悠木よりもだいぶ詳しかった。接客のとき、客の前で簡単なフレーズを演奏して聴かせたりする。それでも、本人はあまりギターに自信はないようだった。

 悠木は倉庫から出していたダンボールを開け、ピックを陳列していく。

 流れていた楽曲が、サビに差しかかったようだった。ディスプレイには、サングラスをかけた男がギターをかき鳴らしている光景が映っていた。プロモーション映像ではなく、ライブ映像のようだ。ギターをよく知らない悠木にとっても、それが上手いということはわかった。そして、その歌詞が今の悠木にどこか突き刺さるものを感じた。

 棚に置いてあるCDを手に取り、ジャケットの表裏を見る。

 買ってもいいかもしれない。ただ、しばらくは仕事をしながら聴いていよう。

 CDを棚に戻し、悠木はそんなことを考えた。

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