睡眠活動装置

「ふわぁ……眠くなってきたな」


 日夜さまざまな研究に勤しむA博士はふと猛烈な眠気を感じた。


「ちょうど良いところだというのに……せめて睡眠中も思索に耽れたら良いのだが」


 そう呟いた途端、脳裏に一つのアイディアが閃いた。就寝前にそれをメモに残しておく。

 しばらくして起床したA博士は早速、メモに残しておいた開発へと注力した。

 数日後、彼は帽子のような形をした装置を目の前にして声を上げる。


「完成だ! これを被って眠れば、自らの意思で自由自在に操作できる夢――すなわち明晰夢を見ることが可能となるぞ!」


 A博士は睡眠活動装置と名付けたそれを被り、実験がてら就寝することにした。

 すると、彼は気づけばいつもの実験室にいた。感覚的にも普段と何ら違いはない。

 なので、平時と変わらず新しい装置を生み出そうとしたところで思い留まった。

 これは夢の世界。いくらこの中で実験し何かを生み出したとしても、それを現実に持っていくことは出来ない。

 あくまで思考に没頭する場として活用しなくてはならない。


 そうして、A博士は夢の中で思索し、目を覚ませば考えた理論を実践する、というような暮らしを送るようになった。

 これまでに比べて遥かに効率が良くなり、研究は順調に進んでいった。

 そんな風に現実と夢を行き来していたある日のこと。


「ふわぁ……眠くなってきたな」


 A博士は猛烈な眠気を感じたが、そこでふと疑問に思う。


「おや、今は現実だったか。思考に専念していたから夢の中だと思っていたが」


 眠くなるということはきっと気のせいだろう。

 いつものように睡眠活動装置を被って寝ることにしよう。

 そうして、A博士はいつもの実験室で思索を始める。目を覚ませば、考えた理論を実践する。

 ただひたすらその繰り返しだ。


 時折、今が現実なのか夢なのか分からなくなった。眠いということは現実だろうと納得した。

 また長い時間の経過によって、睡眠活動装置という研究成果のことを次第に忘れていった。


「ふわぁ……眠くなってきたな。ちょうど良いところだというのに……せめて睡眠中も思索に耽れたら良いのだが」


 ふと猛烈な眠気を感じたA博士はそう呟き、一つのアイディアを閃いて実現させる。


「完成だ! これを被って眠れば、自らの意思で自由自在に操作できる夢――すなわち明晰夢を見ることが可能となるぞ!」

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