出血の原因

「……おや?」


 とある休日、のんびりとパソコンを見ていた男がふと首元を触ると、ぬるりとした生暖かい感覚。触った指を見てみれば、べっとりと赤黒い液体が付着していた。血だ。


「なんだなんだ」


 慌ててティッシュを当てる。急に出血したらしい。何度かティッシュを変えるが、なかなか止まらない。

 とりあえず洗面所に移動すると、知らぬ間に汚れた部分も含めて洗い流した。

 その後、傷口に絆創膏を貼っておくことにする。

 それにしても、どうして急に血が出てきたのだろう、と首を傾げる。確か少し前からプツリと赤いできものがあったので、それを潰してしまったのだろうか。


「まあ、すぐに治るだろう」


 男はそう考えて、気にしないことにした。実際、程なくして出血は止まったので、その後は絆創膏を外して空気に触れさせておいた。

 しかし、二日後、またしても同じ場所から急に出血が起きた。

 仕事に行く直前の出来事だったが、午後からの出勤に変えて病院で見て貰うことにした。


「特に異常は見られませんね。ガーゼで触らないようにして、あとは自然治癒に任せましょう。もしまた出血が起きた場合は強く圧迫してください。そうすれば、すぐに止まりますので」


 二度目の出血があった以上いまいち釈然としないが、医師の言うことなので素直に従うことにする。

 だが、その後も大体一日置きに同じ場所から出血が起きた。

 医者にも何度か診て貰ったが、原因不明の様子だった。


「困ったなぁ」


 大した出血ではないが、こう繰り返しなると気が滅入ってしまう。

 男は頭を抱えるしかなかった。




「ふぃ~」


 その者は温泉に浸かっていた。真っ赤でドロリとした湯だ。

 少し前に見つけたその温泉は、彼のお気に入りスポットとなっていた。

 新鮮な湯にする為、底には穴を開けて蓋を嵌めている。

 いつも入る前には一度蓋を抜いて排水し、貯め直してから入浴していた。


「今日も良い湯だなぁ」


 彼は上機嫌に鼻唄を口ずさんでいた。

 また明後日にでも訪れるとしよう。

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