第3話 いいわよ、青春するわよ! ブンブンブン!!

 次の日はバスに乗ったら、すぐスマホのアプリを起動してGPSをonにし、"友達追加"機能に合わせた。



 さぁ、いつでも来い!!



 バスの横を走る自転車を見つけたら、必死で顔を見る。



 違う。あの人ではない。



 というか、後ろ姿でもだいたいわかるから、違うと思いつつ、一応顔を確認する。

 そんな作業。

 ため息ついてると、後ろの席の人が咳払せきばらいをした。



 ため息がうるさかったかったかな?



 そしたら、他にも咳払いしている人が何人かいて、『あ、風邪かぜ流行はやっているのか』と気がついた。



 風邪!

 風邪でお休みだったら会えない!!



 心の中でなげいていたら、バスの後ろに座っている人達が再び皆で咳をしだした。



「んっん~!」

「ゴホン!」

「ゲホン!」

「ゴフォッ!」

「ゲホッ!」

「グホッ!」



 いや、おかしいよ。皆、大丈夫? と思っていたら、バスの一番後ろに座っている同じ学校の男子生徒が「来たぞ!」と言った。

 そして後ろのお婆さんが「がんばって!」とささやく。



 まさか!

 まさか、まさか!



 皆して私に、自転車の彼が来たことを教えてくれていたのか!!



 そんなに、バレバレかー!

 ずかしすぎる!!!

 そして皆、優しいなぁ! こんちきしょう!!



 恋のドキドキというより、皆にバレバレという恥ずかしさで顔を真っ赤にしながら、窓にすがりつき、私は自転車の彼にスマホを見せた。

 自転車の彼は目を大きく開き、そして微笑ほほえんだ。

(カッコいい! 勇気を出して良かった!)


 赤信号でバスと自転車が止まる。

 今まで、これほどまでに赤信号が嬉しい事があったであろうか?!

 心臓がドクドクいって、にやけ顔が止まらない。



 さあ!

 るわよ!!

 彼とつながるために!



 ふんんんんんんんんんんんんん!

 と、私はブンブンブン右腕をった。



 繋がれ繋がれ繋がれ!



 右手に振動しんどうが来る。

「やったぁ!!」

 と思わず声を出して喜べば、バスの中で拍手がおきた。



 ずかしい!!

 けど皆、あたたかい!



 繋がった興奮のテンション高いまま「ありがとうございます!!」とバスの中の皆にお礼を言って、私は座った。

 顔中の血管がドクンドクンいって、顔が真っ赤なのが自分でもわかった。


 バスをりる時、運転手さんに「おめでとう」と言われた。

 そして、


「バス越しに自転車とコミュニケーションとるのは危ないから、今度からは放課後デートして彼との仲を深めて下さい」


 と、安全面の心配をされた。


 優しい。

 優しさとずかしさと嬉しいであふれた朝だった。

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