第2話 会いたい! また!

 "会いたい"と思うとなかなか上手くいかないもので、次の日は背中だけしか見れなかった。「バスよ、頑張って走って!」と言いたくなるれったさ。

 でも、



 「私の恋のために、あの自転車と一緒に走ってください!」



 なんて、バスの運転手さんに言えない。

 だから……、背中だけでも見れて良かった。

今日はそう思う事にした。


 今週は全然ダメで、遠くに自転車の存在を確認出来るか出来ないかぐらいしか見れなかった。

 あんまりがっついて見てても『うわぁ。何かめっちゃ見てくる女がいる』と引かれるのも嫌だから、たまに横で見れれば良いかぁ。


 あきらめモードになってきた次の週。

 チャンスが到来した。



 真横まよこ

 バスの! 私の! 真横!!



 軽く!余裕よゆうぶって、さわやかに手を振ろうと私は決めていた。

 赤信号で目が合って私は固まった。



 今日もカッコいい!



 胸がドキッ!として、息苦しくなって、息もえになる私。

 だって! だってよ?!

 ぐにこっちを見るのだもの。

 そりゃ息も止まるというものよ。


 そして自転車の彼は、かばんから素早くスマホを出して、それを私に向けた。

 スマホの画面にはsnsがうつってる。『え?アカウントおしえてくれるの?』って思ってたら、スマホをりだした。



『嫌ぁぁ!!

 振ったら画面が見えないじゃない!!』



 わざわざ意地悪したいの!?

 ..でも心に何か引っかかって……




 あ!!!!

 友達追加機能か!!




 早く! 早く、私も振らなきゃ!!

 急いでアプリを起動して、GPSをonにして、って



 青よ!

 信号が青になってしまったわ!!



「っぅあぁぁぁぁぁぁぁぁ」と、私はバスの窓にすがって手をついた。連絡先を知るチャンスだったのにぃぃ!



 でもね、突然の事だもの。

 どんくさい私じゃ、そりゃ、上手うまくいかないわ..


〈お客様。バスの走行中は座ってください〉

 とバスの運転手さんに車内用のマイクで注意されて、初めて、自分が立っていたことに気付いた。


 ずかしい!


 大きなひとごとを言っていた私は、他の乗客(半分以上、同じ学校の人)に注目されていた。

 後ろの席に座っていたお婆さんに「明日こそ頑張って!」と言われ、同じ学校の人は、ボソッと「青春してる」と笑われて、恥ずかしい事極きわまりない!

 この日の私は散々さんざんだった。

 明日は立たずに、座って腕をブンブン振ろうと心にちかった。


 ……明日も振ってくれるかな?

 愛想あいそつかされちゃったかな?

 不安な気持ちばかり大きくなるけれど、明日は私から、手を振る!!

 冷たい目で見られても、終わりにしたくない。


 うん! がんばる!


 あぁ~!でも今ので完全に嫌われてたらどうしよう?

 がんばる! 頑張がんばるのよ私!!

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