遠藤耕一

同じクラスメイトで彼女でもある知子がマラソン大会の練習中に倒れ、早退してからずっと気になっている。

今日はクラスメイトの安西カナがお見舞いに行っている。

同じ日にお見舞い行ってもなぁ。

土曜日に行ってみよう。

そのくらいには良くなってるといいんだが・・・。

メールを送ってみる。

『具合どう?』

ピコンと返信がきた。

『だいぶ、良くなったよ』

よかった・・・。

『明日、家に行ってもいい?』

『じゃあ、掃除しておくね』

何度か家に行ったことがあるが、知子の部屋はいつもきれいだ。

お風呂に入って明日の準備をする。


ー土曜日ー

目覚まし時計で目を覚ます。

今日はお昼前に知子の家に行くことになっている。

急いで自転車で知子の家に向かうと、川の向こうで知子が待っている。

「お待たせ」

自転車から降りて、知子のもとに行く。

「全然待ってないよ」

自転車を押しながら、二人肩並べて知子の家まで歩く。

「お母さん、ご飯作って待ってるよ」

「マジで?お前のお母さんのご飯美味しいんだよなぁ」

知子の家の横に自転車を置く。

「お邪魔します」

「いらっしゃい」

エプロンで手を拭きながら、知子の母が出てくる。

「これ、お土産です」

耕一は紙袋からお菓子の詰め合わせのようなものを出す。

「あら、いつも悪いわね」

知子の母が受けとる。

「あとで頂きましょうね」

両親と食事をとり、知子の部屋に入る。

「知子、もう本当に大丈夫なのか?」

耕一は心配そうに聞く。

「ただの貧血だってばぁ」

笑いながら言う知子。

「相変わらずきれいな部屋だな」

辺りを見回す耕一に知子は照れる。

「何にもない部屋なだけだよ。家の中は猫のキズだらけだしさー」

確かに外観とは違い、家の中は猫の引っ掻きキズと思われるものがある。

「猫はどうしたの?」

「あのね、実は帰ってこないの」

なるほど、いつもなら寄ってくるのに今日は居なかった。

「帰ってくるといいな」

「うん」

寂しそうにうつむく知子を優しく抱き締める耕一。

この時間がずっと続けばいいのに、と耕一は思う。

夕方になり、耕一は帰る準備をする。

自転車に乗り、知子の家をあとにした。

家に帰り、ズキンとした痛みが走った。

見るといつの間にか出来た傷がある。

いつ怪我したんだろう・・・。




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