魔法適性検査
今、俺はネクスト騎士団本部の大広間で新団員の歓迎パーティーに参加している。とは言っても、あの団長の叫び(咆哮)にやられ、もう30分も失神しているカリンを長椅子に寝かせて、ずっと見ているだけなんだがな。
「それにしても凄いなここは····」
この大広間には約千人もの人がいる。だが窮屈ということはない。なんせ、めちゃめちゃ広いからな。
「ん····」
カリンが目を擦って起き上がる。そんな彼女に俺は、
「ようやく目が覚めたか?」
と声をかけた。
「私はいったい?」
「君は団長の叫び声で失神してたんだよ····30分も」
自分の状況がイマイチわかっていないカリンに事情を説明する。
「そうだったんですか。ありがとうございました!」
「歓迎パーティーはあと30分しかないから楽しんでおいで」
カリンは立ち上がり俺に質問をする。
「カケルさんは行かないんですか?」
「ああ。俺は静かなところが好きなんだ」
俺がそう答えるとカリンはまた俺の横に座った。
「なら私もここでカケルさんとお話をします」
「お、おう····」
俺的には一人のほうが落ち着くんだが····まぁ、良いか。でもやっぱり落ち着かないな。なんというか、美少女の横に座っていると思うとどうしても、ねぇ?
「そういえば、どうしてカリンさんは騎士団に?」
「え?そんなの騎士団の家系に生まれたからに決まってるじゃないですか?」
いや、決まってるかどうかなんて俺が分かるわけないじゃん?この世界を知り尽くしてるわけじゃないし。
「そういうものなのか?」
「そういうものですよ?騎士団の家系の人間は代々、騎士団に使えるのが主流ですから」
つまり、騎士団の家系に生まれた『呪い』みたいなものか····
「カケルさんはどうして騎士団に?」
「俺は友達に紹介されて騎士団に入ったんだよ」
「そうだったんですか!?」
カリンはバッと立ち上がりながら驚いた。
流石にオーバーリアクション過ぎて俺も驚いてしまった。
「どうしてそんなに驚くんだ?」
「だって、カケルさんは物凄く魔力量に長けてるじゃないですか?てことはやっぱり····」
「いやいや、俺はべつに大した家の生まれじゃないぞ?」
俺の言葉を聞いた瞬間いままで忙しくはしゃいでいたカリンの動きが止まる。そしてカリンは息をゆっくり吐き、また俺の横に座った。
(あれ?俺なんか気まずいこと言った?カリンがここまで静かになるとなんか不安だな····)
そしてそのまま、25分の時間が過ぎる。すると大広間に副団長の声が響いた。
「新団員!全員集合!」
それを聞いた俺とカリンは一番最初の席に戻る。
舞台の上には魔力量測定の時に使ったような水晶が置いてあった。
するとまた、副団長がまた声をかける。
「いまから!魔法適性検査を行う!皆はこの検査によって配属される部隊が決まる!」
おそらくこの適性検査というものが被験者の魔力の色を確かめるものだろう。それにしても魔力の色によって配属される部隊が変わるのか····
「それではを名前呼ばれた者は舞台に上がれ!」
次々に新団員の名前が呼ばれ、みんなは適性検査によって自らの魔力の色を確認していった。
数分後····
「カリン・キュリエール!前へ!」
ついにカリンの名前が呼ばれ、カリンは舞台の上に上がっていった。そして水晶に手を置くと水晶はちがう赤と緑の光を発した。すると副団長が驚く。
「まさか····
カリンの親はどうやら異なる色の魔力を持っているようだな。だが確か、色の異なる親から生まれた子供は寿命が短く、すぐに死んでしまうのではなかったか?まさか、これは····
「まさか、神の子が本当に実在したとは····」
副団長の言葉の中に気になる言葉があった。そして俺はそれについて質問する。
「神の子?」
「まさか、知らないなんて言わないわよね?」
副団長が俺を物凄い顔で睨んできた。そして副団長は俺に呆れた顔で説明をしてくれた。
「この世界の人間はね。ひとつの色の魔力しか持てないの。それ以上の色を持っていると体が耐え切れず消滅してしまうものなの!でも稀に消滅しなかった子供がいる。それを総称で『神の子』というの」
とりあえず「神の子」はすごいというのは分かった。
俺が一人で納得しているとカリンが戻ってくる。そのカリンは俺にドヤ顔をしてきやがった。
「さて、次はアカツキ・カケル!」
俺はそんなカリンを横目に見ながら舞台に上がった。
「それでは手を置いてください」
「わかりました」
俺は言われたとおりに水晶の上に手を置く。すると水晶にひびが入る。
「え?」
ひび割れた水晶は4つの色の光を発した。赤、青、緑、そして白。さっき2色で驚いていたのだから副団長の反応は分かり切っている。もちろん、
「えぇぇぇぇぇぇ!?」
驚くよなぁ····。これが勇者特典みたいなものなのかな?まぁ実質神様から恩恵授かってるみたいなものだからな。
「まさか····神様か何かなの!?」
「えっと····」
そこから静まるまでの約10分間、俺は質問攻めにあっていた。
「それじゃあ!席に戻ってください!」
ようやく開放された俺は自分の席に戻った。
「それじゃあ!魔力の色ごとに配属される部隊が違うからそれぞれお世話になる部隊に挨拶しておくように!カリン・キュリエールとアカツキ・カケルは団長室に来い!それじゃあ解散!」
歓迎パーティーのあとは団長室か····また質問攻めにあうのか〜、嫌だな····
「カリン!」
俺は何故か椅子に座ったまま動かないカリンに声をかける。
「···········」
返事がない。ただの屍のようだ。って!そんなこと考えてる場合じゃない!
「カリン!」
「···········」
仕方がないのでもう1回声をかける。
「カリン?」
「····け·····た」
凄い小さい声だがカリンは何かをブツブツ言っているようだ。
「どうした。カリン?」
「カケルさんに負けた!!!!うわぁー!!!」
そう叫ぶとカリンはどこかに走り去ってしまった。カリンの声のせいで俺の耳がギンギン言っている。
「負けたってどういう意味だ?」
俺は不思議に思いながらも1人で団長室に向かった。
魔王となった勇者は運命に抗う 魔王勇者アストラル・サード @akatuki_kamui
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