宴の始まり

俺が目を開けるとそこは見知らぬ場所だった。


「ここ、は····」


そこはとても広く、まるでどこかの城の中のようだ。


「余所見をするとは····いい度胸だ!」


俺に誰かが叫ぶ。そして俺は声のした方を見ると黒い鎧を纏った男が部屋の玉座の前で立っている。その手には巨大な剣が握られており、その周りには無数の浮遊する剣があった。


「あれは····」


そして次の瞬間、俺の腹は浮遊する剣によって貫かれていた。


「ぐはっ!」


俺は血を吐きながら地に伏す。


「お前は····だ····れだ!」


俺はその男に叫ぶ。すると、またもや剣が飛んできた。


「我の名は····」


そして景色が途切れた。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「····今の夢、は····」


最悪の目覚めだ。まさか誰かに殺される夢を見させられるとは····ただの夢ではないというのは何となく分かった。だが、いったいあの男は誰だ?


そんな疑問を抱えながら、俺は食堂に向かった。


「おはよう!みん、な····」


俺が挨拶をした方向には誰も居ない。


「ぷぷぷ、アリスたちなら遠征に向かっておるぞ?」


セカンドが笑いながら俺に声をかけてきた。


そうだった。アリスやマナ達は今、遠征に行っているんだった。なんか恥ずかしいな····


「よいしょっと····」


俺は食堂の端の方にある席に座る。そして朝ごはんを頼んだ。

今日の朝ごはんはハンバーグとコーンポタージュだ。


「うまっ!」


俺の朝ごはんはすぐに終わってしまった。この宿のご飯はどれも美味すぎる。


「主様····部屋に荷物が届いています」

「そうなのか?」


俺はファーストに言われ荷物を確認するために自分の部屋に戻った。


「何だこれ?」


俺の部屋にはひとつの箱があった。

箱には手紙も付いていた。俺はその手紙を読む。


「アカツキ・カケル様へ、ネクスト騎士団入団おめでとうございます。一緒に送られてきた箱には騎士団の制服が入っています。それを着て8時に本部の大広間に来てください。····か」


現在の時刻は朝の7時。時からネクスト騎士団本部に行かなくてはならない。そしてここから騎士団本部まで約30分、全然余裕だ。


「早めに準備しておくか····」


俺はすぐに箱に入った制服を取り出す。

騎士団の制服は白が多めで赤のラインが入っており背中には剣のホルダーがクロスされて付いていた。

どうやら騎士団側が俺が双剣使いだからと気を使ってくれたんだろう。


「ファースト!セカンド!」


すぐ側にいた、2人を剣状態に戻す。そして背中のホルダーに刺す。


「準備完了!」


俺は宿を出た。宿の外は普通に賑わっていた。


「朝なのにみんな元気だな····」


俺は本部まで全速力で走ってみることにした。


「行くぜっ!」


すると予定よりも早く本部に着いてしまった。大体20分も早く着いてしまった。

もちろん俺の他には誰もいない。仕方ないので本部内の図書館で魔法の勉強をする事にした。


図書館には約100万冊の本があり、一般の人も入ることができる。ただ一般の人の場合は金がかかるのだが。


「まずは魔法かな····」


俺は魔法書のグループの場所に向かう。その中で1冊目に入った本があったので手に取ってみる。


「初級魔法編か。今の俺にはぴったしだな」


俺はまだ魔法というものを明確に知っていない。必要最低限の知識くらいは知っておかなければ····

早速、図書館の椅子に座って机の上で本を開いてみる。


「魔法とは自らの魔力を代償に顕現させる強力な力をいう、しかし魔力にも様々な色がある。この色によって使える魔法の属性が決まる。赤なら火、青なら水、緑なら風これが基本の3属性だ。この3つの他にも教会の人間にしか使えない光属性、魔物や魔人しか使えない闇属性、無属性がある」


つまりは教会の人間でもない限りは大体の人間は火、水、風のどれかに部類されるという訳か····なら、勇者の場合はどうなるのだろうか?


「先程、魔力の色について書いていたが、その色は親からの遺伝によって決まる。しかし両親の色が別々だとその子供は体が耐えきれず早くに死んでしまう。そのためこの世界では同じ色の人間としか結婚出来ないようになっている」


この世界にはどうやらひとつの属性を使える人間しか居ないようだな。という事はやはり俺もひとつの属性の魔法しか使えないんだろう。

俺は時間を確認する。時刻は7時50分あと10分で時間になってしまう。そろそろ集合場所に向かうことにした。


「集合場所は確か····大広間だったよな」


俺は本部の案内板を確認し、大広間に向かう。


「相変わらずここは広いな····でもめちゃめちゃ綺麗だな!本当にどうやって掃除してるんだか····」


そんなこんなで無事に大広間に着いた俺は扉の前に立っている。


「さて、入るとするか!」


俺は扉を開き、中に入る。そこには超巨大な部屋があった。大広間という名前に合った凄くでかい部屋だ。中には既にたくさんの人がいた。恐らくネクスト騎士団の団員のみんなだろう。


俺が部屋の大きさと人の多さに見惚れていると1人の女性が話しかけてきた。


「おはようございます!カケルさん!」

「お、おはよう。カリンさん」


相変わらずカリンは可愛いな····って!一体俺は何を考えてるんだ····


「もうすぐ始まりますよ!席に着きましょう!」


そう言ってカリンは俺の腕を掴み引っ張る。


「ちょっ!?そんなに引っ張らなくていいから!」


大広間には大きな舞台のようなものがあり、その前の席に座る。

大広間の明かりが落ち、舞台に1人の男性が現れた。その男はマイクを手に持つ。そして····


「新団員のみんな!!元気か!!俺は!!ネクスト騎士団団長の!!トール・ジャクスだ!!よろしく!!」


物凄い轟音を飛ばしてきた。その強さは実に黒龍の咆哮と同等かそれ以上だ。もちろん俺は大丈夫だが、カリンやその他の新団員はみんな耳を塞いでいる。


「昨日は!!いなくて済まなかった!!許せ!!」


そう言うとトール団長は頭を下げる。だが、俺以外の新団員はみんな目を瞑っていて見ていなかった。


「今日は!!君たちの為に!!歓迎パーティを!!しようと思う!!」


すると明かりがつく。そこにはたくさんの食べ物や、飲み物があった。


「存分に!!!楽しんでくれ!!!」


最後のひと声は今までの声より圧倒的に大きかった。だが俺は大丈夫だった。それよりもカリンや他の新団員の人が心配だ。

トール団長が舞台から去る。すると先輩の団員が一斉に立ち上がり食べ物の方へ歩いていく。


「みんな!大丈夫か?」


俺は同級員のみんなに声をかける。大体の人はちゃんと意識があったが、1人だけ失神している人がいた。


「カリンさん!カリンさん!」

「ダメだ····完全に失神してる。とりあえず目覚めるまで待つか····」


こうして俺たち新団員の歓迎パーティが始まった。

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