勇者vs勇者
「まさか、あなたも勇者だったなんて··ねっ!」
「まぁな!」
俺とノヴァは互いの聖剣を交えながら話していた。俺はまだ余裕があるが、ノヴァは少し息が荒くなってきている。
「はぁ····はぁ····まさか、聖剣を出した私が押されるなんて····」
「お前はただ剣を振っているだけだ!お前は自らの聖剣の力を3%しか出せれていない!」
俺は、まだまだ余裕でノヴァの剣を流せれている。すると、ノヴァの出しているオーラが変わった。
「なに!?体が勝手に動いて····」
「ついに始まったか····」
ノヴァの右手が光出し、勇者の刻印が姿を現した。すると、ノヴァの目の色が黒く染まっていく。
「たす····け····」
「これが勇者の力の····暴走····」
ノヴァの意識は勇者の力に乗っ取られてしまった。その瞬間、ノヴァの背中に羽状の魔力が形成された。そして空中に浮かぶ。
「テキを····ハカイす····る」
ノヴァが何かを言うと、その姿が一瞬で消えた。
「どこだ!」
「ココ····だ」
俺の後ろにノヴァが現れる。
「クソ!『
俺が高速化の魔法を多重で自らに掛けると、その姿を完全に捉えることが出来た。
「これは····あの天使以上の速さだ!」
俺は羽を生やし高速で飛んでいるノヴァを見て、この前戦った天使のことを思い出した。
「『
俺はノヴァに空間魔法を当てようとするが、速すぎて当たらない。
「炎の精霊よ····我に力を····そして降れ!炎の雨!『
ノヴァは炎の雨を降らせる。これは炎属性の上級魔法の1つで、相手の動きを止めるには最適な魔法だった。
俺は、炎の雨をただガードすることしか出来なかった。
「くそ!やはり本気を出すしか····『
俺は高速化の魔法をさらに掛ける。これにはメリットとデメリットがある。メリットは相手をほぼ止まっているように見えること。デメリットは体への負担が大きいことだ。
「ふっ!」
俺は炎の雨を確実に防ぎながら、ノヴァの懐まで移動する。そして、ノヴァのお腹に本気で剣を打ち込む。
「少し眠れ····」
「テキ····を··テ····キ··」
ノヴァの目の色が元に戻ると同時に背中の翼と聖剣も消える。そして、闘技場の地面に真っ逆さまに落ちていった。
落ちていくノヴァを俺は抱える。そして、ゆっくり地面に置く。
「『
俺は高速化の魔法を解く。その時、俺の体に激痛が走る。しかし、すぐに痛みは引いていく。
俺の中では30秒経っているが、実際は2秒しか経っていない。
俺は初めて
「体に異常はないな····」
魔王化の影響もあってか、体が頑丈になっているようだ。
「大丈夫か、ノヴァ?」
俺は闘技場の地面に倒れているノヴァにこっそり
「うぅ····あれ?私はいったい?」
「お前は、勇者の力に飲まれたんだよ」
「え?」
勇者の力は自らの器がピンチに陥ると自動的に意識が切り替わるようになっているのだ。その力に飲まれると自らが敵だと認識した者を殺すまで止まらない。「勇者の力」は「魔王の力」に引き付けられる。もちろん、その逆も有り得る。どうやらノヴァの場合は俺の魔に引かれたようだ。
「そうか····私はまた····」
「また?」
「····昔にも暴走したことがあるんだ····私」
「そうだったのか····」
その他にもノヴァからたくさんの話を聞いた。ノヴァの母が死んだとき、勇者の力が暴走したこと。その後勇者になって、死した母の聖剣を受け継いだこと。
「そうだったのか····」
「だから私はここに来た。ここならば自分の力を制御できるようになるかもしれない····と」
「お前が勇者の力を暴走させたのは俺のせいなんだ····ノヴァ」
「え?」
「だから、お前が弱かったとか心が脆いだとかそういうわけじゃないんだ。安心して」
「分かった····というか、なんでみんなは倒れてるの?」
俺はノヴァとの話に集中しすぎて気づかなかったが、闘技場の中で立っている者は俺とノヴァの2人しか居ない。
「まぁ····お互いが勇者であることが秘密にできたし、結果オーライだろ」
「そう····だな」
お互い、顔を引き攣らせながら俺たちはその場を去った。
それからみんなは丸1日、目を覚まさなかった。
その後、俺たちは学園長に呼び出しをくらった。
「貴様らは私に迷惑を掛けたな····」
「「すいません····」」
俺達が学園長に叱られている理由はひとつしかない。それはもちろん俺たちのクラスメイトについてだ。
「まさか、貴様らが自分のクラスメイトを1日も眠らせたとはな!おかげで寮から電話が掛かってきたんだそ!」
「「すいません····」」
「まぁ····今回は貴様らの成績に免じて許してやる。次はなるべく人のいない所で戦え!良いな?」
「分かりました····」
「もう出ていいぞ」
俺たちは無言で学園長室から出る。
俺たちはその日、クラスメイト全員に謝った。間違えて睡眠魔法を辺りに撒いてしまった。と嘘をついて。
もちろん、みんなは許してくれた。
「決闘は····あなたの勝ちで良いよ」
「当たり前だろ。それが事実だ」
「そこは私に勝ちを譲れ!」
「断る!」
俺とノヴァの仲は、ものすごく広がってしまった。
「ふふふあはは!」
「あはは!」
俺たちは思い切り笑う。俺たちの仲はどうやら、広がってはおらず縮んでいたようだ。これで俺はクラスメイトに2人目の友達を作ることができた。その時、サザナミが声を掛けてきた。
「2人とも····そんなに仲良かったですか?」
「友達にはなれた····かな」
俺はこう答えたが、ノヴァはこう答えた。
「友達は友達でも戦友だ!」
「どういう意味ですか?」
「教えん!」
「気になります!」
こうして俺にはサザナミという友達と、ノヴァという
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