決闘

俺は今、自分のクラスであるSクラスの教室で授業を受けている。このクラスの先生はグラニ・ケリル先生で、彼はとても身長が高く、優しい先生だ。今日の授業は、この国の歴史についてだだ。今は俺の興味がある内容だった。


「勇者七星は200年前、魔王を倒すために集められた勇者7人のパーティーのことを指す。魔王を倒した勇者はそれぞれ、この国のどこかに散らばってしまったそうだ」


この勇者七星の1人が俺の師匠の先祖というわけか····師匠があんなに元気なのだから他の勇者も元気なのだろう。


「そして今日から約1年前に魔王の復活が予言されていたが、未だに魔王は現れていない」


いや、間違ってはいないな。俺が魔王の力を手に入れたのは1年前なのだから。


「だが魔王が復活した時は必ず勇者が集い、倒してくれると信じている。これで今日の授業を終わる。では、闘技場で魔法の訓練をするから早めに来るように」


先生が教室のドア閉めると、サザナミが話しかけてきた。


「さっきの授業ちゃんと分かった?」

「ああ、もちろん。サザナミは分からなかったのか?」


サザナミとはあの戦い以降、友達になった。俺にはサザナミしか友達がいない。作ろうと思ってもみんな、俺とは距離を置いてしまっている。原因はもちろん入学式の戦いだ。


「私、ああいうの苦手なんだよね····」

「あ〜ね····」

「どうしたら分かるの····」

「そうだな····勇者って強いのかな!とか、おもえばいいんじゃない?」


実際、俺も勇者とは戦ってみたいし、戦う運命にあるかもしれないしな····


「とりあえず、闘技場に向かおうか」

「はい!」


俺達が闘技場に向かおうとした時、誰かが俺のことを呼んだ。


「おい!」

「ん?」


何故か、ノヴァに声をかけられた。これはめんどくさい事になりそうだ。


「俺になにか用か?」

「お前誰だ?みたいな顔で見ないで!私よ!ノヴァ・スカーレットよ!」

「今日はいったい何の用だ?」

「朝の約束を忘れたわけじゃないでしょうね!」

「朝?そんな約束したっけ?····あ!」


俺はその時、全てを思い出した。俺はあの時····

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そう、それは俺は学園に行くために、寮から出た時だった。


「神城仁!待ちなさい!」


俺は寮から出た瞬間にとんでもない大きさの声で呼ばれ、驚いてしまった。


「えーっと····確か君はバーニング····何だっけ?」

「ノヴァ・スカーレットだ!次期炎帝の!」

「あ〜····」


入学式の時に次期炎帝とか言われてたあのローブの女か····ローブを着てないと誰か分からないな····というか口調が全然違うんだが?


「で?俺に何の用なんだ?」

「入学式の時は不意を突かれて負けたが、次は負けない!」


別に不意を突いたわけじゃないんだけどな····


「今日の闘技場授業の時にもう1回勝負だ!」

「分かった!約束だ!」

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「思い出したか!神城仁!」

「本名で呼ばなくても良いよ。俺のことは仁と呼んでくれよ····」

「そ、そうか?じゃ····じゃあ仁!先に闘技場で待ってるからな!」

「ちょ!授業がおわって····」


俺が全ての言葉を言い終える前にノヴァはすぐに闘技場に向かってしまった。


「····からな」

「行ってしまいましたね····」

「まぁ····良いか!」


ノヴァの後を追うように俺達も闘技場に向かった。



今日の闘技場での授業は、魔力を増やす特訓の様なものだ。正直言って俺はもう魔力を限界まで増やしきっているから、この特訓は必要ない。


「サザナミ!どうだ?なにか手応えはあるか?」

「今はあまり····」


だろうな····この練習は非常に効率が悪い。俺の行った特訓と違い、この練習は魔力を使い切らないからだ。


「仁!さぁ!やるよ!」

「分かった!今行く!じゃあサザナミ、頑張って!」

「うん!」


俺はノヴァに呼ばれて闘技場のみんなと離れた場所に向かう。そこには何故かグラニ先生がいた。どうやら、ノヴァが審判を頼んだらしい。


「それじゃあ、先生。お願いします!」

「それでは!ノヴァ・スカーレットと神城仁の決闘を始めます!」


俺たちは互いに礼をして、武器を構える。


「よーい!始め!」


合図と同時に動き出す。


「いくぞ!」

「いきます!」


今回、俺は加速アクセルを使わずに戦うことにした。なぜならこの前のようにすぐ終わってしまい、戦いにならないからだ。


まず最初にノヴァの素早い槍撃が俺の剣に何度も当たるが、その全てを俺は流していく。


「炎の精霊よ··我に力を··そしてその力宿した槍で··敵を貫け!『炎の槍ファイア・ランス』」


ノヴァがそう唱えると、入学試験の時と同じように炎の槍が出現し、俺に向かって飛んでくる。だが、遅すぎる。


「『武器召喚』」


俺はノヴァの炎の槍に対抗して、浮遊する10本の剣を召喚する。そして、そのうちの1本をそれにぶつける。すると、炎の槍はボン!という音と共に消えてしまう。


「なんだと!」


俺は、自分の魔法を消されて戸惑うノヴァに残りの剣を全て飛ばす。


「くっ!」


ノヴァはその剣を全て防ごうとするが、9本のうちの2本がノヴァの体を傷つけた。


「そこまで!」


先生が終了の合図を出すと、俺は剣を納め、ノヴァに駆け寄る。


「大丈夫か?」

「····けた····私が····また····」


ノヴァは何かをブツブツ言っていた。そんなノヴァに俺はこんな言葉をかけた。


「これで正真正銘、俺の勝ちだな」

「まだ!本気じゃない!」


ノヴァが俺を睨みつけると、ノヴァに魔力が集まる。


「『聖剣召喚』」


ノヴァがそう言うと、体から1本の赤い剣が出てきた。ノヴァはそれを手に取り、構えた。


「····っ!この剣は伝承の····」

「そう!この剣は勇者の一族に伝わる『聖剣』だ!これを使えば!お前など!」

「お前が勇者の末裔····か····ふふふ··ははは!」


俺は、あまりの面白さにお腹を抱えてしまった。


「何がおかしい!」

「何って····全てだよ」


俺以外の勇者はこんなにも弱いのか····


「お前に····今の私を倒せるのか!」


ノヴァの聖剣に更に魔力が集まる。正直、今のあいつの聖剣は俺の聖剣と同じくらいの魔力を秘めている。


「こちらも本気で相手をしよう!『聖剣召喚』」


俺も自らの聖剣を召喚し、魔力を集める。


「まさか····あなたも!」

「さぁ!お前と俺!どちらが強いか今、証明する!」


正直、俺とノヴァでは俺の方が圧倒的に強い。だが、もしノヴァが勇者の力を完全解放したら、俺も勇者の力で対抗するしかない。魔王の力は勇者に対してはほぼ無力だ。


「ふっ!」

「はぁぁ!」


勇者同士の戦いが今、始まった。

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